南インド料理専門店「エリックサウス」の総料理長にして料理人・文筆家の稲田俊輔さん。本が15冊を超えてもなお「書きたいだけ」と言い、クックパッドで1時間遊んで仕事が進まなくなる。そんな稲田さんの頭の中を、クックパッドのポッドキャスト番組「ぼくらはみんな食べている」で語ってくれました。
稲田さんが発明!「クックパッドぎりぎりチャレンジ」
前編で紹介したように、批判派から一転、プレミアム会員登録をしてクックパッドを研究し始めた稲田さん。その延長線上で生まれたのが、「クックパッドぎりぎりチャレンジ」という遊びです。
「先ほどお話した検索窓の『使いたい食材』にヒントを得たものです。食材を3つ考えるんですよ。この組み合わせはさすがにないだろうと思うような、でももしかしたらあるかな、みたいなギリギリの組み合わせを考えるんですね」
ルールはシンプル。ありえなさそうでギリギリあるかもしれない食材3つをクックパッドで検索し、1件でもヒットすればビンゴ、0件はバーストというゲームです。お弁当など複数食材が入るものは除外、1つの完成された料理でなければならないという厳格なルールもあります。
稲田さんが過去の履歴から出してくれた組み合わせが「ひじき・赤ワイン・高野豆腐」。収録中に実際に検索してみると、1件だけヒットしました。しかもそのレシピ名にはクエスチョンマークがついていたといいます。
「本人もギリギリだから、ほんとにこれは際どい。ビンゴですね」
このゲームを思いついたとき、稲田さんは1時間ほど没頭して仕事が全然進まなかったとのこと。新しいクックパッドの楽しみ方が、世に放たれた瞬間でした。
食を語る言葉が足りない。だから造語を作る
稲田さんはこれまで「周縁の民」「まずみ」など独自の造語をいくつも生み出してきました。なぜ造語が必要なのか。その理由を聞くと、食を語る言語体系そのものへの問題意識が出てきました。
「食べ物に関して語られるボキャブラリーは、90年代以降のグルメ文脈の中で生まれた。でも、残念なことにそこで止まっちゃったんですよ。味を語る言葉がほぼイコールグルメ文脈になって」
その象徴がテレビの食レポだといいます。「旨味が溢れ出す」という表現が今も使われ続けていますが、旨味たっぷりの食べ物はすでに世の中に溢れ返っています。そこからこぼれ落ちるものを語るために、新しい言葉を作らざるを得ないというのです。
「美味しさは旨味とまずみが足されたものである。そうなると、まずみという言葉が必要になったぞ、みたいになって」
「周縁(しゅうえん)の民」はその最たるものです。90年代グルメ文脈はピラミッド型で、頂点に食通がいて庶民を導くという世界観でした。稲田さんはそのピラミッドをパタッと水平に倒すイメージを持っています。真ん中にみんなが美味しいという最適解があり、その周辺にはマイノリティが熱狂する食べ物がある。その周縁に住む人々を「周縁の民」と呼んだのです。 稲田さんはエリックサウス自体も「周縁の都」を目指していると言います。超メジャーにはなれないけれど、わかる人たちが集まってくれる場所として。だからこそ稲田さん自身も周縁の民の一人というのです。
「我々、周縁の民は少数派として、やっぱりちょっと仲良くしていこうじゃないですか」

