なぜ「男性の病気」とされてきたのか
血友病の原因となる遺伝子は、性染色体(X染色体)上にあります。遺伝形式としては「X連鎖潜性遺伝(かつての伴性劣性遺伝)」で、X染色体を1本しか持たない男性は、母親が保因者だと2分の1の確率で「患者」となります。一方、女性はX染色体を2本持ち、父親が患者だと100%の確率で「保因者」となります。
日本では血友病Aが約6000人、血友病Bが1300人ほど報告されています。女性が発症しないわけではありません。報告では、血友病Aの女性が136人、血友病Bの女性が49人います(令和6年度血液凝固異常症全国調査報告書)。保因者でも出血症状で困っている人がいます。近年は「保因者だから症状がない」という誤解を避けるため、凝固因子活性の程度に応じて50%未満※を「軽症血友病女性」、1~5%を「中等症血友病女性」、1%未満を「重症血友病女性」と呼ぶ動きが広がっています。また、活性が50%以上でも、症状があれば「症状のある保因者(症候性血友病保因者)」と呼ぶようになっていると天野先生は説明します。家系に血友病の人がいなければ気づくきっかけが少なく、診断されないまま過ごしている女性は多いとみられます。
※令和6年度血液凝固異常症全国調査報告書における女性の分類基準による。
フォンヴィレブランド病と、診断がもたらす変化
天野先生は、もう一つの代表的な出血性疾患である「フォンヴィレブランド病」についても、40代女性例を挙げて説明しました。
Bさんは小学1年生のとき、転んで出た鼻血が止まらず病院を受診したものの、診断はつきませんでした。いくつかの病院を経て、ようやくフォンヴィレブランド病と分かりました。母親も以前から出血しやすかったのですが「体質」と思い込み、診断につながっていませんでした。Bさんは初潮を迎えてから過多月経に悩み、貧血で倒れることもあったといいます。
フォンヴィレブランド病は、止血に関わるフォンヴィレブランド因子が生まれつき不足する病気です。この因子は第8因子と近い働きをするため、不足すると出血しやすくなります。血友病と異なり常染色体遺伝のため男女に同じ割合で起こります。病型によって遺伝形式が異なり主に顕性遺伝(かつての優性遺伝)するため親から子につながりやすい病気です。日本では1700人ほどしか診断されていませんが、海外(カナダ)の報告と照らし合わせると、本来はその10〜100倍の患者さんがいる可能性が指摘されています。しかしその多くが診断されていないとみられます。
天野先生は、こうした出血性疾患があると分かれば適切な対処につながり、生活が楽になる可能性があると述べ、まずは「女性にも出血性疾患がある」ことを知ってほしいと呼びかけました。

