「今年こそシミ治療を」と考える人は多いもの。しかし、同じように見えるシミにもいくつかの種類があり、それぞれ治療法が異なります。代表的な老人性色素斑にはレーザー治療が有効な一方、肝斑は強い刺激でかえって悪化することもあります。さらに、シミだと思っていたものが皮膚がんの前段階である「日光角化症」のケースもあり、自己判断は禁物です。本記事では、シミの種類の見分け方と治療法、毎日の予防策について、日本皮膚科学会皮膚科専門医でこすぎ皮ふ科の川名愛先生に解説してもらいました。
※2026年6月取材。

監修医師:
川名 愛(こすぎ皮ふ科)
日本大学医学部卒業。日本大学大学院医学研究科修了。日本大学皮膚科学教室に入局。大学病院や地域の基幹病院に長らく勤務し、2024年より現職。医学博士。日本皮膚科学会 皮膚科専門医。
紫外線シーズンになるとなぜシミが増えるのか
編集部
紫外線シーズンになると、なぜシミが増えやすくなるのでしょうか?
川名先生
蓄積されたメラニンが、ターンオーバー(肌の生まれ変わり)の処理能力を超えて肌に残るためです。
紫外線、特に日焼けの原因となるUV-Bを浴びると、紫外線ダメージから細胞を守るために肌はメラニンを大量に産生します。通常、メラニンは少しずつ排出されます。しかし、紫外線量が多かったり、加齢や乾燥などで代謝が乱れたりすると、排出が追い付かなくなり、多量のメラニンが肌に残ってシミとして目立ちやすくなります。
また、シミはその年の日焼けだけでできるわけではありません。過去に浴びた紫外線によって蓄積されたメラニンが時間をかけて表面に表れるため、春から夏にかけて急にシミが増えたように感じる人も少なくありません。
編集部
この時期に増えるシミは、すべて紫外線によるシミでしょうか?
川名先生
すべてが紫外線によるシミではありません。見た目は同じように見えても、実はさまざまな種類が混在しています。
代表的なシミは、いわゆる一般的なシミである「老人性色素斑(日光黒子)」です。長年の紫外線ダメージが主な原因であり、比較的境界がはっきりしている点が特徴です。また、女性ホルモンの影響や摩擦、紫外線などによって悪化しやすい「肝斑(かんぱん)」が混在しているケースも少なくありません。
編集部
肝斑も紫外線で濃くなるのですか?
川名先生
はい、肝斑も紫外線で悪化しやすい傾向があります。女性ホルモンの乱れや摩擦だけでなく、紫外線も大きな悪化原因です。そのため、この時期にシミが濃くなったと感じても、一般的なシミではなく、潜んでいた肝斑が紫外線で悪化していたという場合も多々あります。見た目が似ていても、老人性色素斑と肝斑は治療法がまったく異なります。自己判断でケアを始める前に、まずはどちらのタイプか正しく見極める必要があります。
編集部
老人性色素斑や肝斑のほかにも、シミと見分けがつきにくい種類はありますか?
川名先生
遺伝的な要素が強い「そばかす(雀卵斑)」や、ニキビや湿疹のあとに残る「炎症後色素沈着」などがあります。さらに、シミだと思っていた症状が、実は「日光角化症」という皮膚がんの前段階であるケースもあります。特に表面がカサカサしていたり、ザラザラしていたりする場合には注意が必要です。
編集部
シミが増えやすい人には、どんな特徴がありますか?
川名先生
まず挙げられる特徴は、紫外線を浴びる機会が多い人です。長年にわたり紫外線ダメージが蓄積された人はもちろん、若い人でも部活動やレジャーなどで多く浴びていると、将来のシミリスクが高くなります。日常の習慣や体質としては、以下のような特徴がある人もシミができやすく、悪化しやすい傾向があります。
・肌への摩擦(こする刺激)が多い人
洗顔でゴシゴシこする、化粧品を強くすり込む、強めのマッサージをするといった習慣は、シミを悪化させる大きな原因になります。
・女性ホルモンのバランスが変わりやすい人
妊娠中やピルの服用時、更年期などは、特有のシミである肝斑が急にできたり濃くなったりしやすくなります。
・肌トラブルを起こしやすい人
ニキビやかぶれを頻繁に起こす人は、その跡がそのままシミ(炎症後色素沈着)として残りやすくなります。
治療法について詳しく解説
編集部
シミの治療は、どのように進めるのでしょうか?
川名先生
具体的な治療法には、内服薬や外用薬、自由診療のレーザーや光治療(IPL)、エレクトロポレーション(電気パルスで皮膚に一時的な微細な孔を開け、有効成分を肌の奥へ届ける導入法))・イオン導入(微弱な電流を流し、美容成分を肌の奥に浸透させる方法)やピーリング、水光注射などの施術があります。1つの方法に頼るのではなく、患者さんの状況に合わせてこれらを柔軟に選択します。なお、シミの治療は美容目的の自由診療となることが多いため、それに合わせて処方される内服薬や外用薬も自費での案内となるのが一般的です。
編集部
外用薬や内服薬には、どのような薬がありますか?
川名先生
内服薬にはトラネキサム酸など、外用薬にはハイドロキノンなどがあります。これらの薬で肌の内外からメラニンを抑えていきます。体の内外からアプローチする、シミ治療の土台となります。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
川名先生
内服薬では、肝斑の治療によく用いられるトラネキサム酸が代表的です。トラネキサム酸にはメラニンを作る細胞の働きを抑える作用があり、肝斑だけでなく炎症後色素沈着などに使用されるケースもあります。さらに、ビタミンCやビタミンEなどを併用し、肌のターンオーバーをサポートして色素沈着の改善を目指します。
編集部
外用薬はどのような薬剤を使用するのですか?
川名先生
外用薬では、ハイドロキノンやトレチノイン(日本では未承認の医薬品)の塗り薬がよく知られています。美白剤と呼ばれるハイドロキノンでメラニンの生成を抑え、肌の生まれ変わりを促すトレチノインで蓄積されたメラニンの排出を促します。
ただし、これらの薬はすべてのシミに同じように効果があるわけではありません。シミの種類によって適した薬剤や使用方法は異なります。赤みや刺激感などの副作用が出るリスクもあるため、自己判断で使用せず、正しい診断を受けたうえで治療を進める必要があります。
編集部
レーザーや光治療は、どのような治療ですか?
川名先生
シミをピンポイントで破壊したり、顔全体のトーンアップを図ったりするための治療です。レーザーや光治療はシミ治療の有力な選択肢です。しかし、すべてのシミに適しているわけではありません。たとえば、一般的なシミである老人性色素斑にはレーザー治療やIPLが有効なケースが多い一方で、肝斑の場合は強い刺激によってかえって悪化してしまうリスクがあります。そのため肝斑では、内服・外用治療を基本としながら、必要に応じてピコトーニングや高周波(RF)を利用した治療など、比較的刺激の少ない方法を選択します。
編集部
「夏はレーザー治療ができない」と聞いたことがあります。実際はどうなのでしょうか?
川名先生
紫外線対策の徹底を前提として、夏にレーザー治療を行うケースもあります。しかし、夏場は無理に強い治療を急がず、まずは肌のコンディションを整えるケアを推奨する場合も少なくありません。
紫外線が強い時期は、エレクトロポレーションやイオン導入で肌に美白・美肌成分を届けたり、水光注射やマイルドなピーリングで肌の基礎力を底上げしたりするケアが有効です。これらのケアにより、秋以降の本格的な治療に備えます。
編集部
治療のタイミングも大事なのですね。
川名先生
はい。大切なポイントは、どの治療が一番強いかではなく、今の肌にどの治療が適しているかという点です。肌の状態に合った治療を選ぶことが、負担の少ないケアにつながると考えています。
編集部
治療を受ければ、シミは完全になくなるのでしょうか?
川名先生
シミの種類や状態にもよるものの、治療によって目立たなくなることが期待できます。しかし、一度治療すれば二度とシミができないというわけではありません。
たとえば、老人性色素斑はレーザーなどで改善できるケースが多いです。しかし、その後も紫外線を浴び続ければ新たなシミができる可能性があります。また、肝斑は体質や女性ホルモンの影響も関係しているため、一度改善しても再び濃くなる場合もあります。
編集部
シミ治療は「今あるシミを薄くするケア」と同時に、「これ以上増やさないケア」も大切なのですね。
川名先生
そのとおりです。治療後も日焼け止めによる紫外線対策や適切なスキンケアの継続により、よりよい状態を維持しやすくなります。

