「鼻づまりはもう慣れた」が危ない——手術で呼吸が楽になるまでのプロセスを医師が解説

「鼻づまりはもう慣れた」が危ない——手術で呼吸が楽になるまでのプロセスを医師が解説

慢性的な鼻づまりは、気付かないうちに睡眠や集中力、日中の活動にも影響を及ぼすことがあります。「薬を飲めば何とかなる」「慣れてしまった」——その感覚こそが、治療が遅れる原因かもしれません。今回は、鼻のサージクリニック新宿院長の川野先生に、手術を選ぶプロセスから術後の経過までを詳しく聞きました。

※2026年5月取材。

川野 健二

監修医師:
川野 健二(鼻のサージクリニック新宿)

1997年、順天堂大学医学部卒業。順天堂大学医学部耳鼻咽喉科学講座に入局後、みつわ台総合病院・順天堂大学医学部附属順天堂医院・越谷市立病院・順天堂大学医学部附属静岡病院の各耳鼻咽喉科医長を歴任。2010年より鼻のクリニック東京に勤務し、2017年に同院院長に就任。2022年よりほしなが耳鼻咽喉科副院長を務めた後、2026年7月、医療法人社団翔和仁誠会 鼻のサージクリニック新宿院長に就任。

「慣れた」が一番危ない。慢性的な鼻づまりの落とし穴

「慣れた」が一番危ない。慢性的な鼻づまりの落とし穴

編集部

慢性的な鼻づまりは、どんな問題を引き起こすのでしょうか?

川野先生

最も深刻なのは、患者さん自身が「これが普通だ」と思ってしまうことです。長年鼻がつまっていると、その状態に体が順応してしまい、症状の深刻さに気付きにくくなります。
しかし実際には、鼻づまりによって呼吸の質が低下し、口呼吸による睡眠の浅さ、日中の集中力の低下、慢性的な疲労感などにつながることがあります。
特に夜間は、副交感神経(体を休ませる神経)の働きや横になる姿勢の影響で鼻の粘膜に血液が集まりやすくなり、日中よりも鼻づまりが強くなる人は少なくありません。ただ、寝ている間のため自覚しにくく、気付かないうちに呼吸の質が低下していることがあります。私たちは、このような状態を「かくれ鼻づまり」と呼んでいます。
また、慢性的な鼻づまりの原因には、ポリープ(鼻茸/はなたけ)ができやすく再発を繰り返しやすい「好酸球性副鼻腔炎(ECRS)」が隠れていることもあります。通常の副鼻腔炎とは治療方針が異なるため、CTや内視鏡で正確に診断することが大切です。
鼻が通った後に「こんなに呼吸が楽だったとは思わなかった」と驚く患者さんは、本当に多いですね。

鼻づまりの原因と、対応する手術

鼻づまりの原因と、対応する手術

編集部

慢性的な鼻づまりの原因を教えてください。

川野先生

大きく分けると、「炎症によるもの」と「構造的なもの」の2種類があります。
炎症による代表的な病気は、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎です。粘膜が腫れることで空気の通り道が狭くなり、鼻づまりが起こります。一方、構造的な原因として多いのは、鼻中隔弯曲症(左右を仕切る軟骨や骨の曲がり)や下鼻甲介肥大(鼻の中にあるひだ状構造の肥大)です。
実際には、両方が重なっている患者さんもよく見られます。薬で改善する鼻づまりもあれば、骨格や構造の問題が原因で、薬だけでは十分に改善しない鼻づまりもあります。骨が曲がっているものを薬で真っすぐにすることはできません。
大切なのは、「鼻づまり」という症状だけを見るのではなく、その原因をきちんと見極めることです。私は内視鏡やCTで鼻の状態を確認した上で、一人ひとりに合った治療法を提案しています。

編集部

それぞれに対応する手術を教えてください。

川野先生

鼻中隔の曲がりには鼻中隔矯正術を行い、曲がった鼻の仕切りを真っすぐにして空気の通り道を広げます。
下鼻甲介の肥大には下鼻甲介骨切除術(鼻の中にあるひだ状の骨の一部を切除し、腫れた粘膜を縮小させて空気の通り道を広げる手術)を行います。
慢性副鼻腔炎を伴う場合は、内視鏡下副鼻腔手術を行います。炎症を繰り返すことで腫れたまま元に戻らなくなったポリープを取り除き、副鼻腔の換気や排出の通り道を改善する手術です。
実際には、原因が一つだけという患者さんは少なくなく、炎症と構造的な問題が重なっている場合は、一度の手術で複数の術式を組み合わせて行います。
手術選びの軸になるのは、術式そのものよりも「鼻づまりの原因に合っているかどうか」です。原因に合わない治療では十分な改善は期待できません。
現在は内視鏡を使用してすべて鼻の中から手術を行うため、顔に傷が残ることはありません。呼吸の通り道を改善することで、鼻づまりだけでなく、睡眠や日常生活の質の向上も期待できます。

編集部

手術には入院が必要ですか? また麻酔はどうなりますか?

川野先生

私のクリニックでは、すべて日帰り手術で行っています。ただし、日帰り手術がすべての患者さんに適しているわけではありません。手術の内容だけでなく、患者さんの病状や年齢、全身状態、自宅までの距離、家族のサポート体制なども含め、安全性を第一に考えて治療法を選択する必要があります。
そのため、入院での手術が望ましいと判断した場合には、入院設備のある医療機関を紹介することもあります。
麻酔についても同様です。全身麻酔というと「怖い」という印象を持つ人もいますが、患者さんが痛みや恐怖を感じることなく手術を受けられるようにする方法です。近年は麻酔技術も大きく進歩し、患者さんの状態に合わせて安全性に十分配慮しながら行われています。
日帰りか入院かにかかわらず、その患者さんにとって最も安全で負担の少ない方法を選ぶことを第一に考えています。

配信元: Medical DOC

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