膵臓がんは「予後が厳しいがん」といわれることがあります。実際、早期膵臓がんとされるⅠ期で見つかった場合でも、5年生存率は約42%と報告されており、ほかのがんと比較しても厳しい数字となっています。本記事では、膵臓がんの生存率や、なぜ早期発見が重要なのかについて、AIC八重洲クリニック理事長・院長の澤野誠志先生に話を聞きました。
※2026年6月取材。

監修医師:
澤野 誠志(AIC八重洲クリニック)
日本医科大学を卒業後、放射線治療・がん診療に従事。日本医科大学付属病院において放射線医局長を務め、癌研究会付属病院(現・がん研究会有明病院)放射線診断科副部長を歴任。現在は 「AIC八重洲クリニック」院長・理事長。AIC画像検査センター理事長を兼任し、先進画像診断技術の臨床応用と普及に寄与している。MRI、CT、PET-CT、マンモグラフィなどのモダリティを用いたがんの早期発見、とりわけ膵臓・肝臓領域の画像診断に注力している。日本医学放射線学会放射線診断専門医の資格を有する。
膵臓がんって、どんな病気?
編集部
まず、膵臓がんとはどのような病気なのでしょうか?
澤野先生
膵臓にできる悪性腫瘍で、多くは膵管から発生します。膵臓は胃の後ろ側にある細長い臓器で、体の深い場所にあります。発見された時点で進行しているケースも多く、治療が難しいがんの一つとされています。
編集部
膵臓がんでは、どのような症状がみられるのでしょうか?
澤野先生
進行すると腹痛、腰や背中の痛み、おなかの張り、食欲不振、体重減少、黄疸(おうだん)などがみられます。しかし初期には症状がほとんどなく、症状が出るころにはすでに病気が進んでいるケースも少なくありません。なお、膵臓がん以外の病気でも同様の症状はみられます。
編集部
初期には症状が出にくいのでしょうか?
澤野先生
そうですね。膵臓がんは、発生しても初期には症状が出にくいがんです。そのため、体の異変をきっかけとした早期発見は難しいと考えられます。症状がない段階で、どのようにリスクや画像所見を拾い上げるかが重要です。また、検査で見つかりにくい点も、早期発見が容易ではない理由です。
編集部
なぜ膵臓がんは「見つかりにくいがん」といわれるのでしょうか?
澤野先生
初期段階では症状がほとんど出ないうえに、胃や腸の奥にある臓器であるため、一般的な腹部エコーでは十分に観察しにくいからです。さらに、早期の段階では病変自体が小さく、画像検査でもはっきり捉えられないケースもあるため、複数の検査を組み合わせながら慎重に評価しないと分かりにくいといえます。
Ⅰ期でも5年生存率は50%に満たない?
編集部
膵臓がんの「ステージ」とは、どのようなものなのでしょうか?
澤野先生
ステージとは、がんの大きさや周囲への広がり、リンパ節転移、遠隔転移の有無などをもとに、進行度を示す分類です。一般的には0期からⅣ期に分けられ、数字が大きいほど進行した状態を意味します。
編集部
0期やⅠ期は、どのような状態を指すのでしょうか?
澤野先生
0期は上皮内がんで、がんがまだ膵管内にとどまっている段階です。Ⅰ期は、リンパ節転移や遠隔転移がなく、がんが比較的限られた範囲にある状態です。ほかのがんと同じように、膵臓がんも早期の発見が、生命予後においても重要です。
編集部
Ⅰ期膵臓がんでも、5年生存率は50%に満たないと聞きました。
澤野先生
そうですね。実はⅠ期の膵臓がんでも、5年生存率は50%より低く、国立がん研究センターの発表では42%とされています。「早期」と聞くと安心できる印象があるかもしれませんが、膵臓がんではⅠ期であっても厳しい数字です。そのため、できるだけ0期に近い段階での発見がポイントになります。
編集部
ほかのがんと比べても、膵臓がんは厳しい経過をたどりやすいのでしょうか?
澤野先生
膵臓がんは、5年生存率が低いがんの一つです。発見が遅れやすいうえに、膵臓は薄い臓器であり、がんが発生すると膵臓の外へ広がりやすい特徴があります。周囲の重要な血管に及ぶと、手術が難しくなるケースもあります。

