まぶたが重い、目が開きにくいといった症状が見られる「眼瞼下垂(がんけんかすい)」。一般的には切開を伴う手術で治療するイメージがありますが、近年は「切らない治療」を希望する人も増えています。しかし、切る手術と切らない治療の違いや、それぞれの適応については十分に理解されていないのが現状です。今回は、切らない眼瞼下垂治療の内容や、切開を伴う手術との違いについて、医療法人社団FAM理事長の苅部先生に解説してもらいました。
※2026年5月取材。

監修医師:
苅部 淳(医療法人社団FAM)
順天堂大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院形成外科に入局。埼玉医科大学総合医療センター形成外科・美容外科助教、福島県立医科大学附属病院形成外科、寿泉堂総合病院形成外科などで研鑽を積む。その後、山梨大学医学部附属病院形成外科にて助教・医局長を務め、現在は医療法人社団FAM理事長として診療に当たる。日本形成外科学会 形成外科専門医、日本抗加齢医学会 専門医。
眼瞼下垂とは?
編集部
眼瞼下垂とは、どのような状態を指すのでしょうか?
苅部先生
上まぶたを持ち上げる眼瞼挙筋(がんけんきょきん)の働きが低下することで、まぶたが十分に開かなくなる状態を指します。視野が狭くなるといった機能面の問題に加え、無意識に額の筋肉を使って目を開けようとすることにより、頭痛や肩こり、眼精疲労につながることもあります。日常生活に支障をきたすケースもあり、見た目だけでなく機能的な側面からも治療が検討される疾患です。
編集部
どのような原因で起こることが多いのでしょうか?
苅部先生
加齢による変化が代表的です。コンタクトレンズの長期使用やまぶたをこする習慣、先天的な要因なども関係します。また、皮膚のたるみが主な原因でまぶたが重く見える「偽性眼瞼下垂」の場合もあり、原因によって治療法が異なります。
編集部
どのような治療が行われるのでしょうか?
苅部先生
眼瞼下垂の治療としては、まぶたの構造に直接アプローチする切開を伴う手術が基本です。挙筋腱膜(きょきんけんまく/まぶたを動かす筋肉と、まぶたの本体をつないでいる膜)を調整することで、まぶたの動きを安定させ、機能的な改善を目指します。
編集部
切る手術に抵抗がある場合は、どうしたらよいのでしょうか?
苅部先生
ダウンタイム(治療後、日常生活に戻れるまでの期間)や手術への不安から、切開を伴う手術に抵抗を感じる人もいます。そのような場合に選択肢となるのが、いわゆる「切らない眼瞼下垂治療」です。
切らない眼瞼下垂治療とは?
編集部
切らない眼瞼下垂治療とは、どのような手術なのでしょうか?
苅部先生
皮膚を切開せず、まぶたの中に糸を通して、まぶたの開きを補助する手術です。いわゆる埋没法(まぶたを切らずに、医療用の糸を留めることで二重のラインを作る手法)を応用した方法で、まぶたを支える構造に働きかけ、目が開きやすい状態を目指します。
編集部
具体的には、どのように行われるのでしょうか?
苅部先生
局所麻酔を行った上で、まぶたに医療用の針と糸を通し、まぶたを開かせる組織に対して縫合・固定します。皮膚表面を切開しないため、術後の腫れや痛みが少ないのが特徴です。手術時間は片目15分程度が目安になります(※)。※術式や個人差によって異なります
編集部
切開を伴う手術とは、どのような違いがありますか?
苅部先生
切開を伴う手術では、まぶたの内部構造を直接確認しながら挙筋腱膜を調整します。一方、切らない治療では糸によって構造を補助します。見た目として目が開きやすくなる点は共通していますが、アプローチの方法や適応に違いがあります。

