「サンマルクカフェ&茶」で30代女性を開拓 コーヒーを飲まない人も一緒に来店できるブランドへ
2025年に始動した「サンマルクカフェ&茶」は、ブランド改革の象徴ともいえる存在だ。
既存の「サンマルクカフェ」で提供してきたチョコクロやドリンクなど主力商品はそのままに、「黒糖タピオカ凍頂烏龍ミルクティー」や「ジャスミンフルーツティー」といったアジアのお茶や紅茶などのティーメニューを加えている。
小山社長は、「単にお茶を売りたい」のではなく、「来店理由を広げたい」と話す。
■「サンマルクカフェ&茶」は第二の商品資産を育てるブランド
――「サンマルクカフェ&茶」を始めた狙いを教えてください。
小山社長
従来のサンマルクカフェは40~50代女性のお客様が中心でした。もちろん大切なお客様ですが、一方で、新しい世代のお客様を十分取り込めているかという点には課題がありました。
そこで挑戦しているのが「サンマルクカフェ&茶」です。
テスト店舗では30代女性のお客様が増えています。一番大きいのは、コーヒーを飲まない方でも利用しやすくなったことです。
「私はコーヒーが苦手だから行かない」ではなく、「一緒に行こう」と思っていただけるブランドにしたい。一人のお客様を増やすというより、一緒に来店していただける間口を広げることが狙いです。
サンマルクカフェにはチョコクロという非常に強い商品資産がありますが、「&茶」はそれに続く第二の商品資産を育てる挑戦でもあります。
販売している商品はアジアンティーや紅茶などティーカテゴリーですが、ブランド名は「&Tea」ではなく「サンマルクカフェ&茶」としました。
「茶」という漢字はアジア圏でも伝わりやすく、日本発ブランドとして海外展開も意識しています。
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小山社長によると、今後の路面店は基本的に「サンマルクカフェ&茶」の屋号で展開する方針だという。
イオン相模原SC店でのお茶メニューの需要検証や、目黒東口店、新宿御苑前店で進めてきた路面店フォーマットの実証で得られた知見を取り入れながら、「&茶」をベースとした新たな店舗コンセプトへ進化させていく考えだ。
一方で、従来の「サンマルクカフェ」がなくなるわけではない。370店舗体制では、約4割を「サンマルクカフェ&茶」とし、残る店舗は従来ブランドを維持する方針だ。ただし、従来型店舗についても現在の形をそのまま残すのではなく、売れ筋商品に絞った「高効率タイプ」としていく構想も描いている。
■次に狙うのは子育て世代
――今後さらに取り込みたい客層はありますか。
小山社長
「サンマルクカフェ&茶」で増えている30代のお客様は、お子さんがいる世代でもあります。
子どもをターゲットにしたいというよりも、子ども連れでも利用しやすい店舗づくりを進め、親世代に選ばれる店にしていきたいと考えています。
今秋からキッズメニューも見直し、来年に向けて実験を進めていきます。お茶だけではなく、利用シーンそのものを広げていきたいですね。
■「あさマルクカフェ」「ひるマルクカフェ」で利用シーンを広げる
ブランド改革は店舗フォーマットだけではない。今年4月からは時間帯別施策として「あさマルクカフェ」(390円~)「ひるマルクカフェ」(550円~)を開始した。さらに、毎月30日にチョコクロ9個が30%オフになる「サンマルクカフェの日」もスタートしている。
――新しい販促施策の手応えはいかがですか。
小山社長
「あさマルクカフェ」は対象店舗がまだ限られていますが、セット率は予定通り上がっています。昼についても初動としては悪くありません。
これまではドリンクだけ利用されていたお客様にも、ホットサンドやチョコクロ、エッグタルトなどを一緒に楽しんでいただきたい。
コンビニで昼食を買っても500円では難しい時代です。なので500円台からランチメニューがあることをもっと伝えていきたいですね。
「サンマルクカフェの日」も当初は「チョコクロ9個は多いのでは」という声がありました。ただ、お客様のご利用の仕方は私たちの想像以上でした。
静岡の店舗では、高校生3人がチョコクロ1箱をシェアしている様子も見られました。私たちはテイクアウト需要を想定していましたが、お客様自身が新しい利用方法を作ってくださる。
ブランドは企業だけで作るものではなく、お客様と一緒に育っていくものなんだと改めて感じました。
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「変えること」が目的ではない
就任から約1年。小山社長は、この1年を「現状を見つめ直し、足元を固める一年だった」と振り返る。
サンマルクカフェは約10年にわたり、大きなブランド転換を行わず、不採算店舗の整理を進めながら事業を維持してきた。その結果、新規出店や新たな挑戦を経験する社員が限られ、組織全体としては「守り」に軸足を置く空気が強まっていたという。
だからこそ、小山社長が最初に取り組んだのは、新しい施策を次々に打ち出すことではなく、現場の声に耳を傾け、社員が再び挑戦できる土台を整えることだった。
――改革を進める上で大切にしている考え方は。
小山社長
私は何か特別な改革をしたという認識はありません。
この一年で取り組んできたのは、外食企業として本来大切にすべきことをもう一度見つめ直し、「そこまでやらなくてもいい」「自分たちの仕事ではない」と、いつの間にか線を引いてしまっていた部分にも改めて向き合うことでした。
例えば、サンマルクカフェの看板商品であるチョコクロです。定番商品だからこそ、生地やチョコレート、焼き加減、提供までのホールディングタイムなど、基本品質を磨き続けることが欠かせません。
「定番だから変えてはいけない」という空気も一部にはありました。しかし、大切なのは今のお客様のニーズに合わせて価値を高め続けることです。変えること自体が目的ではありません。
従業員が「従来の方が良い」と自信を持って言えるものは守り、改善すべきものはためらわずに見直す。その積み重ねが、ブランドを長く支持していただくための土台になると考えています。
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■挑戦したい人が、組織を前へ動かす
そうした組織づくりの象徴として始めたのが、マーケティングや商品開発などの新たな部門への社内公募制度だ。
従来のように会社が異動を決めるのではなく、「挑戦したい人」に自ら手を挙げてもらう方式を採用した。
小山社長
守りの経営から攻めへ転じるには、これまでとは違う発想やスキルも必要になります。ただ、それは外から人を連れてくるだけではなく、社内にも必ず原石があると思っていました。
そこで、マーケティングや商品開発を強化する際には、「やってみたい人は手を挙げてください」と募集しました。
実際に昨年の社内公募では多くの応募がありました。営業や店長として現場で経験を積んできた社員も、自ら希望して挑戦しています。
現場が大変だから本部へ行きたい、ということではなく、「この仕事をやりたい」という意思を持った人が集まってくれたことが、とても大きかったですね。
私は、一人のリーダーが組織を引っ張るよりも、意欲のある人たちが先頭集団となり、その輪が少しずつ広がっていく組織の方が強いと思っています。
だから私は、一人で引っ張るというよりも、みんなで前へ進む組織をつくりたいと考えています。
■「答えは現場にある」
インタビューを通じて印象的だったのは、「答えは現場にある」という現場主義の考え方だ。
――小山社長は現場を重視されていることが伝わってきました。
小山社長
私はオンラインで話を聞くよりも、実際に店舗へ足を運ぶことを大切にしています。
もちろん分析データも見ますし、営業レポートにも目を通します。ただ、それだけでは分からないことがあります。
店舗へ行くのは、レポートを確認するためではなく、自分の仮説を確かめるためです。レポートだけでは把握しきれない現場の実態も少なくありません。
神奈川県内では同じ店舗へ何度も足を運んでいます。同じ店を見続けると、小さな変化が見えてきます。例えば、ポスターの位置が変わっているだけでも、「現場で何か変化があったのではないか」と新たな仮説が生まれます。
――実際に現場に足を運ぶことで、なにか判断を変えたことはありますか。
大阪で「サンマルクカフェ&茶」の実験店を新規出店した際、営業側から「オペレーションが大変なのでメニューを減らした方がいいのではないか」という声があり、私自身もそう考えたことがありました。
ところが実際に店舗を訪れると、現場のスタッフからは「もう慣れました」「今メニューを変えられる方が困ります」という声が返ってきました。
その言葉を受けて、メニューはそのまま続けることにしました。実験店ですから、最初は全部やってみないと何が売れるか分かりません。結果として売れ筋とそうでない商品も見えてきましたし、改めて「答えは現場にある」と感じました。
「サンマルクカフェ&茶」限定メニュの一例
■KFCで学んだ「ピープルビジネス」
――日本ケンタッキー・フライド・チキンでの経験は、現在の経営にどのように生かされていますか。
小山社長
私の考え方の大半は、KFC時代に培われたものです。一番大きいのは「人」の考え方です。
KFCでは「ピープルビジネス」という言葉を大切にしていました。「人」なくして事業は成り立ちません。これは今も変わりません。
ただ、サンマルクカフェにも今まで積み上げてきた歴史や文化があります。だからトップダウンで全てを一気に変えるのではなく、実験店で成功事例を作り、それを横展開していく。
時間はかかりますが、その方が最終的には強い組織になると思っています。

