動悸が続く、食欲はあるのに体重が減る、汗をかきやすくなったなどの症状がある場合、バセドウ病が関係している可能性があります。
本記事では、バセドウ病の原因や症状、診断方法、治療法、再発のリスク、妊娠・出産への影響などを解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医・指導医、日本緩和医療学会認定登録医、禁煙サポーター
バセドウ病とはどのような病気か

バセドウ病とはどのような病気ですか?
バセドウ病は、甲状腺を刺激する自己抗体(TRAb)が作られることで、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される自己免疫疾患です。甲状腺ホルモンが必要以上に作られることで全身の代謝が過剰に高まり、さまざまな症状を引き起こします。甲状腺機能亢進症の代表的な原因疾患です。甲状腺は首の前側、のどぼとけの下にある蝶のような形をした臓器で、体温調節や心臓の働き、エネルギー代謝などをコントロールする甲状腺ホルモンを分泌しています。バセドウ病はこのホルモンが過剰になるため、身体が常に運動しているような状態になります。
甲状腺ホルモンが増えると身体に何が起こりますか?
甲状腺ホルモンが過剰になると全身の代謝が異常に活発になり、さまざまな症状が現れます。代表的な症状として、動悸、頻脈、手の震え、発汗の増加、暑がり、体重減少、疲れやすさ、不眠、イライラ感などが挙げられます。また、甲状腺が腫れたり、眼球突出などの眼症状がみられたりする場合もあります。食欲があるにもかかわらず体重が減少することが特徴で、症状が進行すると心臓への負担が大きくなります。放置した場合は不整脈や心不全の原因となることがあり、まれに甲状腺クリーゼと呼ばれる重篤な状態に至ることもあります。
バセドウ病になりやすいのはどのような人ですか?
バセドウ病は20〜50代で発症することが多く、特に20〜30代の女性に多くみられます。女性の発症率は男性より高く、男女比はおおよそ男性:女性=1:3〜5とされています。発症の原因は完全には解明されていませんが、自己免疫異常に加えて遺伝的要因や環境要因が関与すると考えられています。家族にバセドウ病や甲状腺疾患のある方は発症しやすい傾向があり、精神的・身体的ストレス、過労、喫煙、妊娠・出産などが発症のきっかけになることがあります。
なお、高齢の方は典型的な症状が目立たないことがあり、小児は落ち着きのなさや学力低下、身長の伸びが早いなどの形で現れることもあります。
参照:
『甲状腺疾患診断ガイドライン2024』(日本甲状腺学会)
『甲状腺機能亢進症・別名:バセドウ病』(慶應義塾大学病院)
『小児期発症バセドウ病診療のガイドライン2016』(日本小児内分泌学会)
『バセドウ病』(日本内分泌学会)
バセドウ病の検査と治療の進め方

バセドウ病はどのように診断しますか?
バセドウ病は、症状の確認に加えて血液検査や画像検査を組み合わせて診断します。まず、動悸、頻脈、体重減少、手の震え、発汗増加などの甲状腺機能亢進症の症状があるかを確認します。そのうえで、血液検査で甲状腺ホルモン(FT3・FT4)の上昇、TSHの低下、TSH受容体抗体(TRAb)の有無を調べます。診断基準では、甲状腺中毒症状に加え、FT3・FT4高値、TSH低値、TRAb陽性などの所見を認めた場合にバセドウ病が強く疑われます。診断が難しい場合には、甲状腺超音波検査(エコー)や甲状腺シンチグラフィを行い、甲状腺の血流やヨウ素の取り込み状況を確認する場合もあります。
バセドウ病にはどのような治療方法がありますか?
バセドウ病の治療には、薬物療法、放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ治療)、手術療法の3つがあります。患者さんの年齢や症状の程度、甲状腺の大きさ、妊娠希望の有無などを考慮して治療方針を決定します。薬物療法は一般的な治療法で、抗甲状腺薬を使用して甲状腺ホルモンの産生を抑えます。外来で開始しやすい一方で、副作用や再発のリスクがあるため定期的な血液検査が必要です。
放射性ヨウ素内用療法は、放射性ヨウ素を服用して甲状腺の働きを弱める治療法です。妊娠中や授乳中の方には実施できません。
手術療法は、甲状腺が大きく腫れている場合や薬物治療で十分な効果が得られない場合、腫瘍の合併が疑われる場合などに検討されます。甲状腺の一部または大部分を切除することでホルモンの過剰分泌を改善します。
治療をしないとどうなりますか?
バセドウ病を治療せずに放置すると、甲状腺ホルモンが過剰な状態が続き、全身の臓器に大きな負担がかかります。動悸や息切れ、体重減少、不眠、疲労感などの症状が悪化し、日常生活に支障をきたすことがあります。また、心房細動などの不整脈や心不全を引き起こすリスクが高まり、高齢の方は脳梗塞の原因となることもあります。さらに重症化すると、発熱や意識障害、多臓器不全を伴う甲状腺クリーゼと呼ばれる命に関わる状態に至る可能性があります。
そのため、動悸や体重減少、手の震えなどの症状が続く場合は早めに内分泌内科や甲状腺内科を受診し、適切な検査と治療を受けることが重要です。
参照:
『バセドウ病』(国立国際医療センター)
『バセドウ病』(日本内分泌学会)
『甲状腺疾患診断ガイドライン2024』(日本甲状腺学会)

