「地雷を踏まない子ども」が選んだ道。米澤文雄が語る、遠回りの流儀

「地雷を踏まない子ども」が選んだ道。米澤文雄が語る、遠回りの流儀

規律や規則に縛られない。No Codeとchef+の理由

店名「No Code」には、規律や規則に縛られない生き方という意味が込められています。「基本的には非常に飽きっぽいんですよ」と語る米澤さんらしい名付けです。西麻布の店の営業日数は月10日ほど。残りは別の仕事に充てるという独自のスタイルです。

枠に収まらないのは、働き方だけではありません。料理のジャンルも「ニューヨークフレンチ」「メキシカンフレンチ」と、一言では説明しきれません。

「なんとなく体のいい言葉をはめただけなんですけど、僕の中でのちょっとした劣等感ではある。武器でもあるんですけど、劣等感でもあるんですよね」

そもそも「シェフ」という言葉の捉え方も独特です。米澤さんが考える「いいシェフ」は、美味しい料理を作れる人にとどまりません。

「適正な価格で販売ができて、しっかり利益が取れて、従業員もお給料払える。そういう環境認識能力が高いシェフがいいシェフだろうなと思ってます」

レストランを一つの会社と捉えれば、商品開発から経理、マーケティング、人事まですべてをこなす必要があります。ジャンルにも、シェフという肩書きの常識にも収まらない。それが「chef+」を名乗る米澤さんの生き方です。

「27歳で天才」だったからこそ言える、遅咲きの幸福論

若い料理人に伝えたいことを聞くと、まず「今はいい時代」と即答しました。SNSで自分の料理を発信し、バズれば個人でも評価される時代だからです。かつては雑誌に取り上げられることでしか名前が広まりませんでしたが、今は自宅のキッチンからでも世界に発信できると米澤さんは言います。一方で、基礎を積む時間の大切さも同時に強調します。

「六本木ヒルズを建てるにも、地下何十メートルも掘るわけじゃないですか。下掘れる時期にやっぱ下、掘っといた方がいいんですよね」

背景には、自身がかつて「27歳で天才」と持ち上げられた経験があります。

「20代後半から30代で雑誌やテレビに出て売れるっていうのは、もうほんとにサービスタイムみたいなもんなんで。50、60ぐらいで1番いい時期を迎えられるのが、人生設計としては1番幸せなんですよ」

早くに評価されても、稼げる額はたかが知れている。むしろそこで調子に乗って崩れるより、ゆっくりと右肩上がりに積み上げていく方が、後々の暮らしは豊かになるといいます。

キャリアも株価と同じで、上がりすぎれば必ず調整が来る。落ちたときに支えてくれる人がどれだけいるか。その差を分けるものを、米澤さんはこう言い切ります。

「下積みをしっかりやって、いろんな人に恩返しをしながら登ってきてるからなんですよ」

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【ゲスト】

第82回・第83回(6月19日・26日配信) 米澤文雄さん

1980年東京都生まれ。高校卒業後、恵比寿のイル・ボッカローネで修業。その後、日本国内の名店で総料理長を務める。Jean-Georgesの日本初進出を機にレストランのシェフ・ド・キュイジーヌ(料理長)に就任。2018年青山ビルディングにThe Burnをオープン。2022年株式会社No Codeを立ち上げ、同年7月西麻布に完全紹介制レストラン 「No Code」をオープン。2019年12月には日本人のシェフとしては初のヴィーガンレシピ本を出版。 食を軸としたコンサルティング業務や社会貢献活動などもボランティア活動をしながら支援している。 主な著書に 『Vegan Recipes/ヴィーガン・ レシピ』(柴田書店) 『え?これ全部ホットプレートで作っちゃったんですか?』(二見書房)がある。

Instagram: @yone_asakusa
note: https://note.com/yone_asakusa
YouTube: https://www.youtube.com/@yoneno-codech

【パーソナリティ】 

クックパッド株式会社 小竹 貴子

料理愛好家・ 料理の楽しみ共創室 部長/創業期から参画し、初代編集長としてメディアづくりに携わる。現在は、料理家や生産者といった食のつくり手の声を届ける活動を行っている。「日経ウーマンオブザイヤー2010」受賞。プロの技術や食材の背景にある物語を、暮らしに馴染む言葉で伝えることをライフワークに、生活者の目線で食の楽しさを探求している。

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