嫁の料理を密かに見下していた筆者の知人が、お盆の食卓で完全に言葉を失った話。
「ゆっくりしていていいのよ」
お盆の帰省に来た嫁に、私はこう告げました。「台所は私がやるから、ゆっくりしていていいのよ」。
本音を言えば、嫁が去年作った煮物は誰も手をつけず、一昨年の味噌汁は薄すぎて夫が顔をしかめていました。そのため、娘と二人で「今年は私たちでやろう」と決めていたのです。嫁は「ありがとうございます」と素直に引き下がり、私は内心ほくそ笑みました。
翌朝、嫁が台所に立っていた
ところが翌朝、嫁が台所に立っていました。「昨日ゆっくりできたので、今日は私に作らせてください」。にこりと笑って、断る隙も与えません。娘と顔を見合わせましたが、もう嫁を止めることはできませんでした。エプロンをつけて手際よく動く嫁の背中を見ながら、私は複雑な気持ちで立ち尽くします。去年の煮物のことが頭をよぎりましたが、もう口を挟める雰囲気ではなかったのです。

