「なぜ万引きではない?」卵盗んだ元五輪代表が“強盗致傷”で逮捕 最長では「無期」の重い容疑となったワケ

「なぜ万引きではない?」卵盗んだ元五輪代表が“強盗致傷”で逮捕 最長では「無期」の重い容疑となったワケ

コンビニで卵のパックなどを万引きし、追いかけてきた店員にけがをさせた元五輪代表の男性が強盗致傷の疑いで逮捕されたと、8月4日に報じられました。

時事通信の報道などによると、逮捕されたのは、東京五輪(2021年)の重量挙げ男子96キロ級の元代表だった男性。8月1日午後、東京都内のコンビニで卵のパックとしょうゆを盗んで店の外に出た際、万引きに気がついた男性性店員を振り払って転倒させ、その左手の指2本を骨折させた疑いが持たれているそうです。

「万引したことは間違いないが、暴力は振るっていない」と一部否認しているとのこと。SNSでは「万引きではなく強盗?」「一般人がやる傷害より罪が重いものになるのか?」といった疑問の声もありました。なぜ今回、強盗致傷という重い罪の疑いでの逮捕となったのでしょうか。

●万引きが「強盗」になる場合とは?

万引きは一般には窃盗罪(刑法235条、10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)となります。相手を負傷させる傷害罪(刑法204条、15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)も行った場合、併合罪となり(同法45条)、拘禁刑であれば1カ月以上22年6カ月以下の有期刑となります。

ところで、窃盗をした人が、逮捕を免れるために暴行や脅迫をしたときは、「強盗として論ずる」ことになっています(同法238条)。事後強盗と呼ばれます。

その強盗が人にけがをさせると強盗致傷罪(同法240条)となり、無期または6年以上の拘禁刑という非常に重い罪になります。

窃盗罪+傷害罪なのか、強盗致傷罪なのか。この差はどこからくるのでしょうか?

●「振り払っただけ」で強盗になるのか

強盗罪が成立するには、その暴行が「相手の反抗を抑圧するに足りる程度」でなければなりません。

つかまれた手や服を振り払う行為は、逮捕を免れようとする消極的な抵抗にとどまり、反抗を抑圧するのに足りるとまではいえないことが多く、強盗罪が成立しないケースも多くみられます。

たとえば、保安員に服をつかまれて手を払った事案では、窃盗罪と暴行罪にとどめた裁判例があります(徳島地裁令和元年(2019年)9月19日判決など)。拳で殴る、腕にかみつく暴行などでも、強盗とは認めなかった裁判例が数多くあります。

逆に「振り払った」ことで事後強盗罪の成立が認められたのは、駅の階段の上でかばんをつかまれ、急に反転して駆け下りて相手を転倒させた事案などです。転落の危険が高い場所で、追跡を不可能にする力を加えたケースです。

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