がんは40歳以上の女性に多い病気として知られていますが、若い世代でも発症することがあります。しかし、「自分はまだ若いから大丈夫」「家族に乳がんの人はいないから関係ない」と考えている人は少なくありません。看護師として働き始めたばかりの27歳で乳がんと診断されたかおまるこさんも、その一人でした。お風呂で偶然見つけた2cmのしこりをきっかけに、抗がん剤治療や手術、放射線治療などの治療を経験。現在は自身の体験をSNSで発信し、多くの患者さんに寄り添う活動を続けています。今回は、発見から治療、そして発信を続ける理由について詳しく伺いました。
かおまるこ(看護師、乳がんサバイバー・SNSインフルエンサー)
2023年12月、27歳(看護師1年目)のときに乳がんを自己発見。術前抗HER2療法(パージェタ・ハーセプチン・パクリタキセル)、術前化学療法(EC療法)、手術(部分切除)、放射線治療25回、術後ホルモン療法(タモキシフェン、現在継続中)の様々な治療を組み合わせて(集学的治療)、現在は経過観察中。Instagramでは闘病生活・副作用対策・乳がん検診の啓発・民間療法への注意喚起など、医療的根拠に基づいた情報を発信している。直近ではがん特化型運動施設「ルネサンス運動支援センター」のイベントにゲスト参加するなど、活動の幅を広げている。https://www.instagram.com/kaomaruko_diet03/
お風呂で感じた「これは何だろう」——27歳、乳がんとの出会い
編集部
乳がんかもしれないと初めて気づいたのはどのような状況でしたか?
かおまるこさん
2023年12月、お風呂で体を洗っているときに、胸に約2cmのゴムボールのようなしこりを感じました。今まで自分の体になかったものだったので、すぐにおかしいと気づきました。乳がんを疑いましたが、調べると「岩のように硬い」「触っても動かない」「皮膚が引きつれる」「分泌物が出る」といった症状が乳がんのサインとして紹介されていて、私のしこりはそのどれにも当てはまりませんでした。「多分違うんだろうけど、心配だから行ってみよう」という気持ちでクリニックを受診しました。
編集部
乳がん検診は以前から受けていましたか?
かおまるこさん
受けたことがありませんでした。日本では40歳以上の方に乳がん検診が推奨されていて、それ以下の年齢だと自費で受けるものになっています。家族にも乳がんを患った人はいなかったので、まさか自分がなるとは全く思っていませんでした。
編集部
告知を受けたときのお気持ちを教えてください。
かおまるこさん
針生検(はりせいけん、針を刺して組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査)の結果が出る予約日の1週間前に、クリニックから「できるだけ早く結果を聞きに来てください」と電話が来ました。看護師として働いていたので、予約があるのに早く来るよう言われることは悪い知らせのサインだと頭では分かっていました。しかし、自分は違うという気持ちもあり半信半疑で聞きに行きました。「がんです」と告げられた瞬間、頭では理解しているのに、遠い国のニュースを見ているような他人事感がありました。同時に冷たい手で内臓をぐっと掴まれるような感覚もあり、そこからどうやって帰ったか記憶がないほどです。
抗がん剤、手術、放射線——副作用と向き合いながら闘った1年半
編集部
実際にどのような治療を受けられましたか?
かおまるこさん
まず卵巣機能を守ることにより妊孕性(にんようせい、妊娠するための力)を保持するためにリュープリン(ホルモン療法の注射)を開始しました。その後に、術前抗HER2療法(パージェタ・ハーセプチン・パクリタキセル)から開始し、引き続き術前化学療法としてEC療法(エピルビシンとシクロホスファミド)を半年ほどかけて行いました。術前薬物療法がとてもよく効き、2cmあったしこりがエコーでもほとんど見えないほど小さくなり、当初全摘出の予定でしたが部分切除で済むことになりました。手術後は術後抗HER2療法(フェスゴ)、温存した乳房への放射線治療25回と続き、現在は飲み薬によるホルモン療法を行いながら経過観察中です。
編集部
治療中、特に辛かったことは何でしたか?
かおまるこさん
髪の毛が抜けて周りの友人がおしゃれを楽しんでいる時期に自分はそれができないこと、もともと好きだったコスメや美容を病気によって理不尽に奪われてしまったような感覚がずっとあったことが最も辛かったです。副作用による体調不良で寝込む日もありましたが、支持療法(しじりょうほう、吐き気止めなど治療の副作用を和らげる治療)がとても発達していたので、吐き気は想像していたよりも辛くはありませんでした。
編集部
標準的な治療ではなく、民間療法を受けようかと迷うようなタイミングはありましたか?
かおまるこさん
看護師として働いていたこともあり、標準治療(科学的根拠に基づいて有効性と安全性が確認され、専門学会などが推奨している治療法)しか選択肢にはありませんでした。一方で、大きな病院では一人一人に丁寧に寄り添うことが難しい面もあり、「冷たくされた」「待たされた」という経験が不信感につながり、民間療法(標準治療とは異なり、個人や団体が実践している治療法や健康法)に興味を持つ気持ちも理解できなくはありません。民間療法では「治るよ」と言い切ってくれる場合もあると思います。しかし、正しい医療情報にアクセスしやすい環境が整えば、標準治療の効果や科学的根拠は一般の方々にも広く届くと思います。私はそのための情報発信を続けていきたいと考えています。

