物知りなおじさんとの出会い
岩山のてっぺんには、「大正天皇行幸之跡」という石碑があり、休憩所もありました。テーブルと長椅子(ベンチ)が置かれています。
生石神社 宝殿山山上公園(写真:PIXTA)
そこにおじさんがいました。ジャージの上下を着ており、ウォーキングで来ました~、という雰囲気です。70代前半くらいだと思われます。
季節は夏だったので、私が汗を拭いていると、おじさんがにこやかにベンチを指し、「ここに座ったら?」と言います。休憩所は日陰ですから、「こんにちは~」と入って汗を拭き、水分補給をしました。
おじさんは近所に住んでいるそうで、雨の日以外はここに散歩に来ている、と言います。この時、まだ9時になっていませんでしたから、健康的な生活をされているのだな、と思いました。
おじさんは社交的な人なのか、私にいろいろと話しかけてきます。
ここは岩山で、神社にあるあの巨大な石は岩山の岩盤を削って作ったもの、と教えてくれました。周囲を掘って、作り出した石である、と。
「横に岩山を掘ったあとの、岩の壁があっただろう?」
「ありました、ありました」
「本当はなだらかな岩山の斜面なんだろうけれど、そこを掘って掘って掘って削って削って、あの石にしたんだねぇ。掘って露出させた石だよ」
へぇー! それってすごいな! と思いました。私は、もともとここにあった超特大の石を加工したのだと思っていたのです。
「ここはねぇ、日本三奇なんだよ。どうして岩山を削って大きな石にしたのかがわからないんだ」
「日本三奇?」
初めて聞く言葉ですから、「?」という雰囲気を出していたら、天の逆鉾と四口の神竈の説明をしてくれました。
おじさんの話は続きます。
「ここにはね、しょっちゅう学者とか偉い先生が来て調査をしてるよ」
「そうなんですね~」
「こないだは○○大学(偏差値が特別に高い大学です)の先生が来てたよ。機械を持ってきてねぇ、調査していた」
「なにげにすごいんですね、ここは!」
だんだん私も興奮してきました。おじさんは海のほうを指さして、
「向こうに淡路島が見えるだろう?」
「え? 淡路島?」
たしかにうっすらと見えます。明石海峡大橋も見えていました。
「その向こうに六甲山も見えるんだけどね。あ、今日は見えないな~」
「ここから神戸の六甲山が見えるんですか!」
「見えるよ~」
この日は少しもやっていたので目にできませんでしたが、スカッと晴れていたらクッキリと見えるそうです。
「姫路城も見えるよ」
「ここから姫路城が?」
「ピンポイントで見えるよ。見る?」
「ええ! ぜひ!」
するとおじさんは、てっぺんの向こう側(やや平らになっている、ちょっとした岩の広場のようなところです)へ行きます。
「こっち、こっち」
手招きするので、私もそこに行きました。
宝殿山山上公園からの眺望(写真:PIXTA)
おじさんによると、姫路城は1ヶ所からしか見えないそうです。そのポイントに立たなければ見えません。
おじさんが示すところに立ってみました。目の前に山が並んでいます。その山と山が重なっているところ……ちょうど谷のようなV字の部分に、ドンピシャで姫路城が見えるのです。そう見えるように山が作られているかのようです。
最初はやや見えにくかったので、
「スマホで拡大して見ますね」
とスマホのカメラで拡大していると、おじさんが、
「目で見えるようになってきたね。もやが晴れてきた! ほら、白いのがわかる?」
と言います。姫路城が徐々にクッキリと見えるようになってくると、おじさんが言います。
「だんだん白くなってきたね、あんた持ってるねぇ!」
「そうですか、嬉しいです」
「ラッキーだよ! これは歓迎されているってことだからね! よかったねぇー、お土産持って帰れるね」
おじさんはニコニコして、また休憩所に戻ります。後ろからついて行きながら、
「ここって、いろいろとすごいんですね~」
と言うと、また驚くようなことを教えてくれました。
「こないだは映画の撮影が来てたよ」
おじさんは雨の日以外は毎日来ているので、なんでもよく知っています。
「大泉洋のナンタラカンタラって映画があるだろう?」
「?」
ナンタラカンタラの部分が聞き取れませんでしたが、話は続きます。
「室町時代の話の映画だけれど、ここで撮影したんだよ」
「へぇー! そーなんですかー!」
「山口智子も来たことあるよ」
「ええーっ!」
昔はこのあたりは砕石場だらけだったとか、今もふもとに1軒あるとか、あらゆる方面に詳しく、貴重な情報を教えてくれました。石の研究会もあるとかで、そこでは巨大な石を、コロン、コロンと動かして、屋根にする計画だったんじゃないかという説があるそうです。
* * *
物知りなおじさんのおかげで、「日本三奇」という興味深い「噂」だけでなく、「石碑の向こう側の広場がパワースポットだ」ということもわかった桜井さん。本書ではこのあと、このパワースポットのごりやくや「日本三奇」の謎について、さらに詳しく検証してくださっています。ここではご紹介しきれなかった続きは、ぜひ『謎の先には〝開運〟がある! 歴史ミステリとパワースポットを調べてわかったこと』でお読みください!

