●「一夫多妻制」の法的トラブル
──仮に複数のパートナーと家庭を築こうとした場合、どんな法的トラブルが生じますか。
1人の男性が複数のパートナーとその子どもたちと家庭を築こうとする場合、主に以下の3つの分野で法的トラブルが発生するリスクがあります。
(1)関係解消時のリスク
事実婚パートナーとの関係が成立すると、上記のとおり一定の法的保護を受けることになります。そのため、これを解消する際には、離婚の場合と同様に、慰謝料の支払や財産分与が請求される可能性があります。
(2) 相続における「遺留分」の制約と不平等
事前の契約等で「パートナー全員に平等の支援をする」と約束していても、相続発生時には法律の制約を受けます。
まず、事実婚のパートナーには民法上の法定相続権がなく、これは法律婚との大きな違いです。財産を渡すには「遺言書」の作成や「死因贈与契約」を結んでおく必要があります。
さらに、遺留分侵害額請求のリスクがあります。経営者に法律上の子ども(元妻との間の子、および認知した子)がいる場合、子どもには「遺留分(法律上最低限保障された相続分)」があります。
特定のパートナーやその子に財産を遺贈しようとしても、他の子どもたちが自身の遺留分を侵害されているという主張をすれば、せっかくの平等な配分設計が崩れ、死後に親族間紛争(争続)が引き起こされる可能性が高くなります。
(3) 認知の必要性
事実婚のパートナーとの間に生まれた子どもは、法律上「非嫡出子」となります。
父親としての法律上の親子関係を発生させるには、自ら「認知」をおこなう必要があります。
認知をすると、その子どもは法律上の嫡出子と全く同等の法定相続分を持つことになります。同時に、父親にはその子に対する養育費の支払義務が生じます。
●離婚前に不貞行為が成立してしまうリスクも
──相談者は「有責配偶者にならず離婚したい」と話しています。離婚が成立する前に別のパートナーとの関係を深めると、不貞行為として離婚や慰謝料に不利になる可能性はありますか。
相談者は「有責配偶者にならずに協議離婚したい」と望んでいますが、実務上のハードルは非常に高いと言えます。
離婚が法的に成立する、あるいは夫婦関係が完全に破綻(別居の開始など)する前に、別のパートナーとの交際を深めた場合、相談者は法的には有責配偶者となります。
有責配偶者には、裁判上の離婚が認められにくく、また慰謝料支払いなどの不利益が生じます。
相手が離婚を拒否した場合、有責配偶者からの離婚請求は裁判所によって原則として認められません(長期間の別居や未成熟子がいないことなど、厳しい条件を満たさない限り、離婚成立にかなりの歳月を要することがあります)。
またこの場合、配偶者に対する精神的苦痛に対する賠償として、相応の慰謝料を支払う必要が生じます。
【取材協力弁護士】
嶋本 敦(しまもと・あつし)弁護士
2008年弁護士登録(大阪弁護士会所属)。事業会社での法務・総務経験を活かし、スピード感をもって、実務に具体的に役立つ解決策をご提案します。
事務所名:弁護士法人ブライト
事務所URL:https://law-bright.com/

