プール熱(咽頭結膜熱 -いんとうけつまくねつ- )は、アデノウイルスの感染によって起こる、子どもに多い夏季の感染症です。38~39度前後の発熱や喉の痛み、目の充血(結膜炎)といった症状が現れます。感染力がとても強く、学校保健安全法ではプール熱は登校停止が必要な感染症に指定されています。本記事では、プール熱の潜伏期間や生じる症状、治療機関の目安についてQ&A形式で解説します。

監修医師:
栗原 大智(医師)
2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。
プール熱の潜伏期間の目安と感染力

プール熱の潜伏期間とはどのような期間ですか?
潜伏期間とは、ウイルスなどの病原体に感染してから実際に症状が出るまでの期間のことです。プール熱の場合、ウイルスをもらってもすぐ症状が出るわけではなく、体内で病原体が増殖し体調に変化が現れるまで数日間の潜伏期があります。その間、本人にはまだ発熱や喉の痛みなどの自覚症状はありません。
プール熱の潜伏期間の目安を教えてください
プール熱の潜伏期間はおおよそ5~7日程度とされています。個人差はありますが、感染後だいたい1週間以内に発症するケースが多いです。型によってはまれに潜伏期間が前後する場合もありますが、一般的には約5~7日を目安に考えてください。例えば、月曜日にウイルスに感染した場合、早ければ週末頃までに発症するといったイメージです。
プール熱の潜伏期間に自覚症状が現れますか?
通常、潜伏期間中に明確な自覚症状はほとんど現れません。潜伏期間は症状が出る前の段階ですので、感染していても本人は元気に普段と変わらない様子で過ごせることが多いです。ただし、潜伏期間のごく最後(発症直前)には、ウイルスの増殖に伴ってわずかな倦怠感など体調の変化が現れる場合もあります。しかし一般的には、はっきりとした発熱や喉の痛みなどの症状は潜伏期が終わり発症してから出てくるものです。
潜伏期間中のプール熱が他者に感染することはありますか?
はい、潜伏期間中でも感染する可能性があります。プール熱の原因であるアデノウイルスは発症する数日前から他人へ移すリスクが高まることが知られています。症状が出る前でも、ウイルスは鼻や喉の粘膜で増殖して周囲に放出され始めるため、発症の1~2日前から周囲の方に感染させてしまうことがあります。特に小児の場合、自分では症状に気付かず集団生活でウイルスを広げてしまうこともあるので注意が必要です。
また発症後数日間が最も感染力が強い期間であり、症状が出ている間はできるだけ登校・登園を控えて安静に過ごし、周囲への感染拡大を防ぐことが大切です。
プール熱の潜伏期間後に生じる症状

プール熱の潜伏期間後の初期症状を教えてください
高熱の発症が典型的な初期症状です。潜伏期間が終わると、まず突然38~40度前後の発熱で発症することが多く、その際に喉の痛み(咽頭炎の症状)も現れ始めます。加えて、目の充血や目やになど結膜炎の症状が出る場合も初期から見られます。これらがプール熱の三大症状(発熱・喉の痛み・結膜炎)であり、特に小児ではぐったりするほどの高熱と喉の痛みで機嫌が悪くなることが多いです。初期には頭痛や食欲不振、全身のだるさ(倦怠感)といった全身症状も伴うことがあります。
プール熱が進行するとどのような症状が現れますか?
プール熱では高熱や炎症症状が数日間持続します。発熱は一度出るとすぐには下がらず、39~40度の高熱と37~38度台の微熱を行き来する熱が4~5日ほど続くケースもあります。喉の扁桃腺は腫れて赤くなり、強い喉の痛みが続きます。
また、結膜炎の症状は片目から始まり反対の目へ広がることが一般的で、両目が真っ赤に充血して大量の目やにが出る場合もあります。経過中、首のリンパ節が腫れることや、ウイルスの影響で腹痛・下痢など消化器症状が出ることもあります。高熱は通常3~5日程度で収まりますが、患者さんによっては発熱が1週間前後続くこともあります。症状のピークを越えると徐々に解熱し、喉の痛みや目の充血も治まっていきます。
プール熱には合併症や後遺症はありますか?
ほとんどの場合、合併症を起こさず後遺症も残りません。プール熱は基本的に自然に回復し、適切に対処すれば後遺症が残ることは通常ありません。目の炎症による視力への影響なども、通常は完治すれば後に障害を残すことはないとされています。
ただし、まれに重症化して合併症を起こす場合もあります。代表的なのは肺炎で、プール熱の原因ウイルスが下気道にまで及ぶと肺炎を併発することがあります。特に体力の弱っている乳幼児や基礎疾患のあるお子さんでは重い肺炎になるリスクがありますので注意が必要です。
また高熱に伴う熱性けいれんを起こす可能性も、ほかの発熱疾患と同様に考えられます。とはいえ、それらは頻度が高くはなく、大部分のお子さんは発熱や結膜炎といった急性期の症状が治まれば後はスムーズに元の健康状態に戻ります。

