新築だから全部変える? 2012年のリノベで得た「満足」を引き継ぐキッチンプラン【50代後半からの建築家との家づくり④】

新築だから全部変える? 2012年のリノベで得た「満足」を引き継ぐキッチンプラン【50代後半からの建築家との家づくり④】

日本ライフオーガナイザー協会代表理事の高原真由美です。

先々週の記事では、A2案とB2案を「図面の中で住む」ように比べ、わが家にフィットするB2案を選んだこと、そして建築家Yさんに設計をお願いしたいと思った決定的な言葉についてお伝えしました。

先週は土地決済の番外編を挟みましたが、今回は本編へ戻ります。

3回目、4回目のプレゼンでB2案がどうアップデートされたのか。さらに、契約後の詳細プランで、いちばん重視していたキッチンをどう考えたのか。図面を見比べて気づいたのは、新築だからといって、すべてを新しく、大きくすればよいわけではないということでした。
2012年のキッチンと、ストレスフリーから維持までのライフオーガナイズのステップ図。50代後半からの建築家との家づくり④

■初回打ち合わせから2ヶ月で契約へ

結果的に、初回打ち合わせから2ヶ月で契約となったわけですが、それ以前の数ヶ月間のことを考えると、トントン拍子に進んだように感じています。そもそも2回目と契約段階の4回目の図面を見比べてみても、意外なほど大きく変わっていないのです。

もちろん、収納や開口部、細かな寸法などの微調整はあります。でも、家の中心となるLDKや各スペースのつながりなど、骨格は2回目のプレゼン時点でほぼ固まっていたわけです。

「変更が少ない=検討が足りない」ではありません。むしろ、最初に私たちが伝えた暮らし方や好みが、かなり早い段階でプランに反映されていたのだと思います。

この時点で私は、Yさんなら、すべてを細かく説明しなくても「こういうことを求めているのだな」と、わが家の好みをある程度くみ取って設計してくれる、と感じていました。

これは、何か一つの発言や行動で説明できるものではありません。打ち合わせを重ねるなかで少しずつ積み上がった、感覚的な確信です。

土地の決済を終え、4回目の提案を確認した日に正式に契約しました。

今回の家づくりは分離発注なので、建築家Yさんの会社とは設計契約、施工業者Kさんの会社とは工事請負契約。契約書も契約先も二つです。

けれども、家づくりが二つに分かれている感覚はありませんでした。なぜなら、Kさんが一言も言葉を発することがなくても(最初の間取りプランニングの段階では、ほぼ出番がないのです)、初回から一貫してKさん同席のもと打ち合わせは行われていたからです。

また契約までの間にも、Kさんは利用予定だったフラット35について、建物の仕様や技術基準に関わる確認事項をローン担当者へヒアリングし、その内容をYさんへ共有してくれていました。

概算見積もりの予算オーバーに関しても減額相談について、外壁仕上げなど、わが家の要望をできるだけ損なわない案も検討してくれるなど、設計と施工の契約先は別々でも、情報はきちんとつながっている、その安心感も、2社との契約を決められた理由の一つでした。

ただし、契約したからといって、間取りや設備のすべてが確定したわけではありません。ここから、暮らしに合わせた細かな検討が始まります。

■現居の満足を引き継ぎ、キッチンはさらに「わが家仕様」に

私たちは2012年に、現在の住まいをフルリノベーションしています。

リノベーションは、既存の建物や構造など、さまざまな制約の中でプランを考えるもの。ゼロから計画できる新築とは、前提がまったく違います。

新しい家をゼロから考えられるからこそ、まずは現居で感じているストレスを洗い出すことが大切だと思います。

つい、「新居さえできれば素敵な暮らしができる!」と考えがちですが、これ、要注意です。

わが家では、ライフオーガナイズの「ストレスフリー → すっきり → 素敵」という順番を、まず現居で実践。いきなり「素敵な空間」を目指すのではなく、まずは今ある住まいの暮らしのストレスを減らしたうえで、段階的に最適化を進めていくというプロセスです。

そのうえで新居のプランニングでは、家そのものの条件が変わればさらによくなることは何か。反対に、今の住まいですでに満足していて、新居にも引き継ぎたいことは何か。それを分けて考えていきました。

ライフオーガナイズの「ストレスフリー、すっきり、素敵、維持」のステップを示すイラスト

ライフオーガナイズの「ストレスフリー → すっきり → 素敵」のステップ

2012年当時の条件の中で考えたプランには、私は今もかなり満足しているんですね。今では築90年を超える長屋のリノベとしては、本当に快適に暮らせているわけですから。

キッチンについては通路幅が限られているため、家族がすれ違いにくい場面はあります。でも、元の位置で何かやりにくかったわけではありませんし、当時はこれがベストでした。

2012年のフルリノベーションで完成した現居のキッチン

2012年のリノベーション時に完成した現居のキッチン(IKEA製)

だから新居では、今の家で満足しているところは、できるだけ全部引き継ぎたいと考えていました。

ゼロベースで考えられるからといって、満足しているものまでゼロに戻す必要はありません。そのうえで、今より少し広いスペースが確保できそうなキッチンには、「もっとこんなふうになればいいな」という理想も加えて、Yさんへ伝えました。

契約後の5回目の詳細プランで、Ⅱ型キッチンについては、システムキッチンが最大サイズのプランと、キッチンではなくパントリー部分を広げたプランの二つの案が示されました。

2つのプランの説明とともに、Yさんからこんな問いかけがありました。

「そこまで大きなキッチンが必要ですか?」

確かに。

広くできるなら、つい大きくしたくなります。でも、大きさそのものが目的ではありません。アイランドを必要以上に大きくせず、そのぶんまわりの通路にゆとりを持たせる。そのほうが、これからのわが家には合っていると納得しました。

一方、コンロの位置などは、私から変更をお願いしました。

今のキッチンが使いにくいからではなく、私がいつもしている調理の流れに合わせて決めたかったからです。2012年のリノベーションでも、自分や家族の日常の動きをもとにプランを考えました。その経験は、今回の新築でも役立っています。

プロの提案をそのまま受け入れるのでも、自分の希望をすべて押し通すのでもない。Yさんからの問いに立ち止まり、こちらは実際の暮らしから得た経験を伝える。その往復で、キッチンが少しずつ「わが家仕様」になっていきました。

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