あしたのカルテ#1 「地元で産めない…」全道から患者が集まる“最後のとりで”  赤字を抱える公立病院のリアル

あしたのカルテ#1 「地元で産めない…」全道から患者が集まる“最後のとりで” 赤字を抱える公立病院のリアル

老朽化と物価高が直撃 大都市・札幌でも赤字を抱える公立病院のリアル

現場の医師たちが使命感と「原動力」で踏みとどまる一方で、病院経営はかつてない窮地に立たされています。

市立札幌病院は、2019年に約9000万円の黒字を確保していましたが、新型コロナウイルスによる状況下を経て状況は一変しました。感染症対応に医師や看護師などを充てる必要があり一般診療を縮小せざるを得ず、2019年に1日平均551人だった入院患者数は2020年に383人にまで減少。病床稼働率も8割から5割にまで落ち込みました。

当時は国の補助金支援があり黒字を維持できていましたが、頼みの綱であった補助金も2024年度には終了。そこに全国的な物価高騰や薬剤費、人件費の伸びが追い打ちをかけ、2023年度には約14億3000万円の赤字に転落し、翌年には約20億5000万円の赤字経営に陥りました。

札幌市病院局経営管理室・奥村彰大室長
「物価高騰の影響はかなり大きい。黒字だった2019年度の病床稼働率は81.9%で、2025年度も80%という状況なので数字だけを見るとほとんど変わらないが、2019年度にはギリギリ黒字であったものが、今は一定程度の赤字ということで、その差を考えた時に物価高騰であったり人件費の伸びが大きく影響しているというのは事実と言わざるを得ない」

さらに重くのしかかっているのが「施設の老朽化」です。

1995年に移転・完成した現在の市立札幌病院。31年が経過した建物は、水回りや配管の劣化が目立ち始めていて、病院の法定耐用年数の39年が近づいています。また、高齢患者の増加に伴い医療機器が増えたことで、病室や通路が手狭になっているほか、感染症流行時に必要な隔離個室の不足や、免震機能の未整備といった課題も浮き彫りになっています。

老朽化や建て替えの議論が急務ですが、奥村室長は「まずは経営の健全化が第一歩」だと強調します。

札幌市病院局経営管理室・奥村彰大室長
「老朽化議論を進める前提として安定した経営をしていくことが求められる。今年3月に策定した中長期計画に基づき、経営改善の取り組みをしっかり進めて2029年には黒字化を達成できるように赤字額を計画的に減らしていく」

窮地に立つ公立病院のリアル それでも果たすべき使命

地域によって抱える事情は異なりますが、「北海道内の公立病院の8割が赤字」という厳しい現実。

しかし、民間病院では採算を合わせることが難しく撤退せざるを得ない、救急や周産期、感染症や災害対応といったいわゆる「不採算医療」を引き受けることこそが、公立病院の使命です。限られた医療リソースをどう分配していくのか、人口減少時代に合わせた新しい形を模索するための議論が早急に必要とされています。

札幌市病院局経営管理室・奥村彰大室長
「公立病院のあり方、あるいは地域における医療提供のあり方というものは時代によって変わってきている。やはり地域として『どう必要な医療体制を整えていくのか』要は『どう今ある病院を生かしていくのか』あるいは『どう連携をとっていくのか』ということを含めて地域全体でしっかりと議論すべき重みがこれまで以上に強くなってきている。地域として、社会として、あるいは国全体として本当に取り組むべき大きな課題」

「最後のとりで」である市立札幌病院が直面している課題は、札幌市民のみならず、北海道に生きる私たち一人ひとりの未来に直結しています。私たちのあしたを守るために、私たち自身も関心を持ち、考えていく必要があります。

配信元: SODANE