末期がんと告げられると、今後をどこで過ごすかを考える場面が生じます。
この記事は、本人の希望の整理、必要な医療的ケアへの対応、在宅と施設の違い、相談先や制度の基本的な事項を解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医・指導医、日本緩和医療学会認定登録医、禁煙サポーター
末期がんで介護施設への入所を検討するタイミング

末期がんの症状が進行し、常時介護や医療的ケアが必要になり、自宅での対応が難しいと感じたときが、介護施設への入所を検討するタイミングです。
介護施設への入所を検討するケース
介護施設への入所を検討するケースは、末期がんの進行により食事や排泄、移動、清潔保持などの日常生活動作に常時介助が必要となり、家族だけでは支え切れなくなった場合があります。
さらに、夜間の見守りや対応が頻回に必要で、自宅では安全面に不安が大きいときも、施設入所が選択肢です。
介護者である家族の心身の負担が限界に近づいている場合や、独居高齢世帯で急変時の対応体制が整えにくい場合も、施設入所が選択肢です。
在宅療養と施設療養の違い
在宅療養は自宅を生活の場とし、家族や訪問サービスが中心になってケアを行う形態で、生活の自由度が高い一方、家族の介護負担や急変時対応の課題があります。
施設療養は介護老人福祉施設や有料老人ホームなどに入所して生活する形態です。24時間体制の見守りや医療・介護スタッフによるケアが得られる一方、自宅に比べて生活の自由度が制限され、環境の変化への適応が必要です。
在宅療養は介護保険の居宅サービスを組み合わせて利用し、可能な限り自宅での生活を維持することが重視されます。これに対し施設療養は要介護度や在宅生活の困難さなどを総合的に評価したうえで、生活全般を施設内で支えることが前提となります。
末期がんの方が入所を検討できる施設の種類

末期がんの方が入所を検討できる施設には、介護老人福祉施設や介護老人保健施設、有料老人ホーム、緩和ケア病棟、ホスピスなどがあります。症状や介護量、希望する生活のあり方に応じて選択肢が変わります。
緩和ケア病棟やホスピス
緩和ケア病棟やホスピスは、末期がんなど治癒を目的とした治療が難しくなった患者さんが、身体的、精神的なつらさを和らげながら残された時間を自分らしく過ごすための入院施設です。日本では名称の違いがあっても、多くの場合、人生の最終段階に特化した緩和ケアの場として同じような役割を担っています。
がんの症状や不安、不眠が強くなり、外来や在宅、一般病棟では十分な緩和が難しい場合に検討されます。延命治療よりも苦痛の緩和と生活の質、尊厳の保持を重視し、面会や居室環境、食事の工夫などを通じて、その方が大切にしたい時間や過ごし方を支えることが特徴です。
医療的ケアに対応する介護医療院
介護医療院は、長期的な医療と介護のニーズを併せ持つ要介護者に対し、療養上の管理、看護、医学的管理の下での介護や機能訓練などを一体的に提供することを目的とした施設です。
主として長期にわたり療養が必要な高齢の方で、日常的な医学管理や看護を受けながら生活する必要がある場合が対象となります。終末期には看取りやターミナルケアにも対応できます。
介護老人福祉施設より医療ニーズが高く、介護老人保健施設より生活の場としての性格が強いことが特徴です。点滴や酸素投与、褥瘡の処置、疼痛緩和などの医療的ケアを受けながら、食事や排泄、入浴、移動などの介護支援を長期的に受けたい末期がんの患者さんにとって、選択肢となる施設です。
特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの介護施設
特別養護老人ホームは、介護老人福祉施設です。要介護高齢者に対して入浴や排泄、食事などの日常生活の介護、機能訓練、健康管理および療養上の世話を提供します。
平成27年以降は原則として要介護3以上の高齢の方を新規入所対象とし、在宅生活が困難な中重度要介護者を支える施設です。
有料老人ホームは、老人福祉法第29条に基づき、高齢の方を入居させたうえで、入浴や排泄、食事の介護、食事提供、家事、健康管理のいずれかのサービスを提供する施設です。
介護付や住宅型、健康型などの類型があります。介護付有料老人ホームは介護保険上の特定施設入居者生活介護の指定を受けることで、長期的な介護サービスを施設内で一体的に提供します。
参照:
『介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)』(厚生労働省)
『有料老人ホームの概要』(厚生労働省)

