③後世へのインパクト!
このように、展覧会の前半ではレンブラントの探求と実践の積み重ねを概観することができる。
続く第2章・第3章では、レンブラントの死後、彼の残した作品がどのように後世の画家たちに影響を与えたのかをレンブラントの作品との比較も交えながら見ることができる。特に注目したいのが、19世紀以降に焦点を当てた第3章である。
19世紀当時、エッチングは時代の流れと共に半ば忘れられた技法となりつつあった。しかし、19世紀フランスでは、芸術家の個性を表現する技法として注目を集め、息を吹き返すこととなったのである。
その手本として、芸術家たちから崇められた存在こそ、レンブラントである。先に紹介した《三本の木》は、当時フランスで特に高く評価された作品の一つだ。この展覧会においても、実際に影響を受けたドービニーやアルフォンス・ルグロらの作品と共に並べられており、そのつながりを目で確かめることができる。
また、ゲーテの作品で広く知られるファウスト博士を描いたと考えられている《書斎の学者(ファウスト)》は、《『エッチングのパリ』誌ポスター》に使用されただけではない。
レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 《書斎の学者(ファウスト)》1652年頃 エッチング、ビュラン、ドライポイント 国立西洋美術館
フレデリック・レガメ 《『エッチングのパリ』誌ポスター》1875年 リトグラフ/青色紙 レンブラント・ハウス美術館
ヴィクトル・ユゴーの小説『ノートルダムの鐘』の助祭フロロの部屋のイメージ源にもなったとされる。
そして、レンブラントに影響を受けた芸術家の中には、20世紀の2大巨匠ピカソとマティスも含まれている。
アンリ・マティス 《版画を彫るアンリ・マティス》1900-03年 ドライポイント 国立西洋美術館
マティスの《版画を彫るアンリ・マティス》は、レンブラントの《窓辺でエッチングを制作する自画像》に触発された作品だ。画家の周囲には斜線を重ねることで影が表現されているのに対し、作業する手のあたりの線は薄く、光を放っているように見える。創造という行為の神秘がここに表現されている。
版画とはしばしば挿絵や複製などに用いられ、油彩などに比べると、一段低い芸術として扱われることも少なくなかった。
しかし、版画は知れば知るほど奥深い。どのように版へ線を刻むか。そしてドライポイントで生じる「まくれ」の具合、紙質など細かな条件の組み合わせによって刷り上がりは変わる。1枚として全く同じものは生まれない。
まさに生き物だ。
理解するには、向き合い続けるしかない。だからこそレンブラントをはじめ、多くの画家たちが版画技法に魅せられ、夢中になって取り組んだのだろう。
ここに紹介したのは展覧会のほんの一部に過ぎない。ぜひ展覧会に足を運んで、版画の宇宙というものを体感してほしい。
展覧会情報
会期:2026年7月7日(火)-9月23日(水・祝)
開館時間:9:30〜17:30(金・土曜日は〜20:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、7月21日(火)(ただし、7月20日(月・祝)、8月10日(月)、9月21日(月・祝)は開館)
会場:企画展示室
観覧料:一般2,200円、大学生1,300円、高校生1,000円
公式サイト:版画家レンブラント 挑戦、継承、インパクト
※中学生以下、障害者手帳*をお持ちの方とその付添者1名は無料(入館の際に学生証等の年齢の確認できるもの、障害者手帳等をご提示ください)
*対象となる手帳:身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳
※大学生及び高校生の方は、入館の際に学生証をご提示ください。
※国立美術館キャンパスメンバーズ加盟校の学生・教職員は、本展を学生1,100円、教職員2,000円でご覧いただけます。(学生証または教職員証をご提示のうえ、会期中、ご来場当日に国立西洋美術館の券売窓口にてお求めください)
※観覧当日に限り本展の観覧券で常設展もご覧いただけます。
※会期中、一部作品の展示替えを行います。
