●無断で映された人は、何を請求できる?
公道上の撮影では、配信者やスタッフだけでなく、そのお店や店員、居合わせただけの客や通行人なども映ってしまう可能性があります。
今回の動画でも、店舗や店員を撮影し、配信していますが、これが無断で行われている場合、公道上での撮影だから自由です、というわけにはいきません。
たとえば、無断で撮影・配信されたお店や店員などから、不法行為(民法709条)にもとづく損害賠償請求を受ける可能性があります。
無断の撮影や配信が、不法行為として違法となるかどうかは、いくつもの事情から決まります。
お店が請求する場合は営業上の利益の侵害なども問題になりそうです。個人が請求する場合は肖像権やプライバシー侵害が問題になると思われます。
肖像権侵害の場合、撮られた人がどういう人で、そのとき何をしていたか、撮影の場所、目的、態様、必要性、といった要素から、撮られた人が社会生活上我慢すべき限度を超えている場合に、不法行為となります(最高裁平成17年(2005年)11月10日判決)。
撮影場所が公道上であることは、我慢すべき限度内という方向に働きます。しかし、特定の人に顔を寄せて撮るとか、やめてほしいと言われても撮り続ける、お店をけなしたり嘲笑するような文脈で公開する、といった事情が重なれば、違法であるという評価に近づきます。
動画をみる限り、配信者側としては、このお店が大通りに面しており、多くの人がクレープを買った際に撮影も楽しんでいるはずであり、動画を撮影しても問題ないと考えていたように思われます。
また、動画のテロップからすると、配信者側は今回の撮影がお店に迷惑がかかるようなものではないと認識していたようです。
しかし、迷惑かどうかは、撮影する側の認識で決まる問題ではないことには注意が必要です。
実際に、路上で撮った動画をネットに公開した行為に賠償を命じた裁判例もあります(東京地裁令和4年(2022年)10月28日判決など)。
●規制が必要なのでは?という声もある
今回のケースでは「きちっと法整備して迷惑行為を厳しく取り締まらないといけない」というコメントにみられるように、配信者に厳しい意見が多いようです。
法整備、という点についていえば、現在の法律でも、無断で撮影され、配信された人には、これまでみてきたような損害賠償請求などの権利がありますし、動画の削除を求めることも、投稿した人を特定する手続きもあります。
しかし、個人で動画をインターネット上に配信するのが容易となっている現在では、今の法律では困った撮影行為への対応として必ずしも十分ではないのかもしれません。
2021年には、プロバイダ責任制限法が改正され(施行は2022年)、匿名の発信者の特定について発信者情報開示命令という手続きが創設されたり、ログイン型のサービスでも一定の情報の開示が可能であることが明確化されたりしています。
少しずつ制度は拡充されていますが、このような制度もあくまでも「配信された後」の責任を追及するための改正であって、迷惑な撮影や配信を事前に、もしくはその場で止めるための仕組みにはなっていません。
個人が容易に配信できる時代に、迷惑な撮影や配信を止める仕組みをどこまで作るべきかは、表現の自由との兼ね合いもあり非常に難しい問題です。
小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

