医療療養病棟は、急性期の治療を終えた後も継続した医療管理が必要な方を受け入れる病棟です。たんの吸引や酸素療法、経管栄養などの処置を受けながら、長期にわたって療養できます。一方で、介護医療院や介護老人保健施設とは、利用する保険や対象者、施設の役割が異なります。入院を検討する際は、必要な医療処置だけでなく、費用や退院後の生活も踏まえて選ぶことが欠かせません。
本記事は、医療療養病棟の対象となる方や受けられるケア、費用の仕組み、介護医療院などとの違いを取り上げます。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医・指導医、日本緩和医療学会認定登録医、禁煙サポーター
医療療養病棟とは

医療療養病棟は、長期間にわたり医療管理が必要な患者さんが入院する病棟です。急性期病院での治療を終えた後も医療処置が続く方を対象としており、医療保険を使って入院します。
まずは、医療療養病棟の役割や受けられるケア、一般病床との違いを確認します。
医療療養病棟の概要
医療療養病棟は、急性期治療を終えた後も継続した医療が必要な患者さんのための病棟です。
病状が安定していても、たんの吸引や酸素療法、経管栄養などを継続する必要がある方は少なくありません。そのような方が、医師や看護師による医学的管理を受けながら療養生活を送る場所です。
医療療養病棟は病院に設置されている療養病床の一つであり、利用する保険は介護保険ではなく医療保険です。そのため、介護施設とは制度や役割が異なります。
また、医療療養病棟は、患者さんの状態に応じて長期の入院が可能です。ただし、病状や医療の必要性が変化した場合は、退院や転院が検討されます。
医療療養病棟で受けられるケア
医療療養病棟では、患者さんの状態に応じてさまざまな医療や療養支援が行われます。
主なケアは次のとおりです。
たんの吸引
酸素療法
点滴や注射
経管栄養や中心静脈栄養の管理
褥瘡の処置
排せつ管理
血糖値の管理
リハビリテーション
食事や清潔保持などの日常生活支援
こうした医療処置だけでなく、全身状態の観察や体調変化への対応も行われます。慢性疾患や神経難病などで医療管理が続く方も対象です。一方で、対応できる医療内容は病院によって異なります。人工呼吸器の管理や透析などが必要な場合は、事前に受け入れ体制を確認しましょう。
一般病棟との違い
一般病棟と医療療養病棟は、入院する目的が異なります。
急性期機能を担う一般病棟は、病気やけがに対する検査や手術など、急性期の治療を行う病床です。病状が改善すると、自宅への退院や別の病院・施設への転院を目指します。一方、医療療養病棟は、急性期の治療後も継続した医療管理が必要な方が対象です。病状が落ち着いていても、医療処置を続けながら長期間療養できる体制が整っています。
一般病棟は病気を治療することが主な目的ですが、医療療養病棟は治療と療養を両立することが目的です。そのため、同じ病院のなかでも、病状の変化に応じて一般病棟から医療療養病棟へ転棟することがあります。
医療療養病棟の入院対象になる方とは

医療療養病棟は、誰でも入院できる病棟ではありません。入院の可否は、病名だけでなく、必要な医療処置や全身状態などを踏まえて判断されます。
ここでは、対象となる方の特徴や医療区分、要介護認定との関係を解説します。
慢性期で医療的ケアが必要な方
医療療養病棟は、慢性期に入り、継続した医療管理が必要な方が対象です。
例えば、次のような医療的ケアを受けている方が入院の対象となる場合があります。
たんの吸引を定期的に必要とする方
酸素療法を受けている方
経管栄養や中心静脈栄養を行っている方
気管切開の管理が必要な方
褥瘡の継続的な処置が必要な方
神経難病などで医学的な管理が続く方
終末期医療や緩和ケアを受けている方
このような方は、日常生活の介助だけではなく、医療職による継続した観察や処置が欠かせません。
一方で、介護が必要という理由だけでは医療療養病棟の対象とは限りません。病状が安定しており、医療処置が少ない場合は、介護医療院や介護老人保健施設などが適している場合もあります。
医療区分による入院の考え方
医療療養病棟では、患者さんに必要な医療の程度を医療区分で評価します。医療区分は1から3まであり、疾患や状態、受けている医療処置などをもとに判定されます。医療区分2や3には、人工呼吸器の使用、中心静脈栄養、酸素療法、喀痰吸引などの項目が含まれています。
この医療区分は診療報酬の算定にも用いられています。ただし、医療区分だけで入院が決まるわけではありません。病院の受け入れ体制や病床の状況、患者さんの病状も含めて総合的に判断されます。
参照:『令和8年度診療報酬改定の概要包括期・慢性期入院医療』(厚生労働省)
要介護認定との関係
医療療養病棟への入院に要介護認定は必須ではありません。
医療療養病棟は医療保険を利用する病棟であるため、介護保険サービスのように要介護認定を受けることは利用条件ではありません。
要介護認定を受けて受けていても、医療的ケアがほとんど必要なければ介護施設が適する場合があります。反対に、要介護認定を受けていなくても、継続した医療管理が必要であれば医療療養病棟へ入院することがあります。
退院後に介護サービスの利用を予定している場合は、要介護認定の申請を進めることがあります。病院の医療ソーシャルワーカーや地域包括支援センターへ相談すると、退院後の支援体制も含めて調整できます。

