父とは昔から折り合いが悪く、顔を合わせても素直な気持ちを伝えられないままでした。入院した父との最後の対面でも、口にできなかった感謝と謝罪。父が亡くなった後、遺品の中から見つけたある物をきっかけに、私は父の思いを知ることになりました。
顔を合わせれば口論になった父との関係
私の父は、いわゆる昭和の頑固親父でした。私とは昔から折り合いが悪く、顔を合わせれば口論ばかりしていました。
私が就職して実家を出てからは、父と接する機会も少なくなりました。お盆や正月に帰省しても、まともに会話をすることはほとんどありませんでした。
長く離れて暮らしていても、父との間にできた溝が埋まることはなく、お互いに素直な気持ちを伝えられないまま年月だけが過ぎていきました。
入院した父に伝えられなかった言葉
数年前、父が急に体調を崩して入院したと連絡がありました。見舞いに行くと、そこには以前よりも痩せ細った父の姿がありました。しかし、弱った父を目の前にしても、これまでの確執が邪魔をしてしまい、私がかけたのは「体調はどうだ」という短い言葉だけでした。
本当は、「今まで苦労をかけてごめん」と伝えたいと思っていました。その言葉は喉まで出かかっていたのに、どうしても口にすることができませんでした。
その後、父の状態は予想していた以上の速さで悪化しました。意識がもうろうとする直前、父は私の手を弱々しく握り、何かを言おうとしました。それでも私は言葉に詰まり、ただ父の手を握り返すことしかできませんでした。それが、父との最後の対面になりました。

