「今を楽しむ」――がんが教えてくれた人生との向き合い方
編集部
診断からこれまでの間で、印象に残っているエピソードはありますか?
遠藤さん
病気とはあまり関係ありませんが、がんと診断されてから現在に至るまで、治療や手術の合間に9カ国を旅行しました。いつ歩けなくなるか分からないので、元気なうちに行きたいところに行こうと思っています。
中でも、去年行ったモロッコのシャフシャウエンという街は美しく印象的でした。自分で歩いて高い丘の上まで登りきって、そこから青の街を見下ろしたときに「生きているうちにここに来られてよかった」と泣けてきました。
編集部
病気の前後で変化したことを教えてください。
遠藤さん
これまではキャリアアップを目指し、プライベートの時間も勉強に費やし、遅くまで残業することが多くありました。振り返ると、かなり無理をしていたのだと思います。
しかし、がんになっていつまで生きられるか分からない状況になってから、「これからは本当に好きなことや楽しいことを最優先にしよう」と決めました。それからは、たくさん旅行に出かけたり、絵を習ったり、ソーイングをしたり……。最近は、添加物を使わないおいしい野菜料理が食べたくて、スパイス料理も習い始めました。趣味を通じて新しい出会いにも恵まれ、病気になる前よりも私生活は充実しています。
仕事面でも会社や上司が配慮してくれて、以前のような無理な残業はなくなりました。いつも支えてくれる家族や友人、職場の温かい理解とサポートには本当に感謝しています。がんに、自分の人生を見直すきっかけをもらったのだと思います。
編集部
現在の体調や生活について聞かせてください。
遠藤さん
現在は局所治療(がんがある部分に限定して行う治療)として、関西の病院で 肝動注療法(肝臓に血液を送る肝動脈にカテーテルを留置し、そこから抗がん剤を直接投与する治療法)を受けています。肝臓の腫瘍が急速に悪化してきていて、背中が少し痛いときがありますが、普段どおり生活しています。
編集部
医療機関や医療従事者に望むことはありますか?
遠藤さん
医師一人が抱えている患者さんの数が多すぎるのではないでしょうか? そのせいもあって、何となく話したいことを遠慮してしまったり、「私の検査結果、ちゃんと見ていないよね?」と感じたりするときがあります。なかなか難しいかもしれませんが、一人ひとりの患者さんの状況をしっかり把握できているといいなと思います。
また、自院で扱っている治療だけでなく、対応していない治療でも、その患者さんに適していそうなものがあれば、医師の知見からアドバイスをもらえるとありがたいですね。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
遠藤さん
私は毎年人間ドックを受けていましたが、それでもがんが見つかったときにはステージIVでした。人間ドックで大腸がんを調べる検査は、一般的に便潜血検査(便に血が混じっていないかを調べる検査)になると思います。しかし、私は一切出血していなかったので、便潜血検査では見つけることができませんでした。早期発見の可能性を高めるためには、血液検査の腫瘍マーカーや大腸内視鏡検査も受けることをおすすめします(※)。大腸がんはステージIVになると予後(病気の今後の見通し)が悪くなるといわれています。だからこそ、早期発見が非常に重要だと感じています。
※検査の内容や適否は個人の状況によって異なります。詳しくは医療機関に相談してください
編集後記
毎年人間ドックを受けていても、自覚症状のないままステージIVまで進行していた大腸がん。遠藤さんは「手術のしようがない」と告げられながらも、セカンドオピニオンで治療の道を切り開きました。再発を繰り返す今も、「今を楽しむ」ことを大切に歩み続けています。本人のメッセージにあるように、便潜血検査だけでは見つけられないがんもあります。体に不調がなくても、早期発見につなげるために、大腸がん検診として内視鏡検査など検査の選択肢を知っておくことも大切です。
本稿には特定の医薬品、医療機器についての記述がありますが、情報提供のみを目的としたものであり、医療上の助言や販売促進などを目的とするものではありません。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。
記事監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
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