「子どもが突然の高熱を出して、口の中が痛そう」このような症状がみられたときに考えられる疾患のひとつが、ヘルパンギーナです。ヘルパンギーナとは、主に乳幼児の間で夏季に流行するウイルス感染症です。感染すると突然の高熱を発症し、喉の痛みやお口の中に小さな水疱性の発疹ができることが特徴で、家庭内感染や保育園での集団感染も少なくありません。発症しても多くの場合軽症ですが、なかには重篤な合併症を引き起こす症例もあります。
本記事では、ヘルパンギーナの原因ウイルスの特徴や感染経路、家庭でできる感染対策をわかりやすく解説します。

監修医師:
居倉 宏樹(医師)
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。
ヘルパンギーナの原因ウイルスについて

ヘルパンギーナの原因になるウイルスの種類を教えてください
ヘルパンギーナの原因になるウイルスの大多数が、エンテロウイルス属のコクサッキーウイルスA群(CA群)です。ほかにもコクサッキーウイルスB群(CB群)やエコーウイルス、エンテロウイルス71型(EV71型)が原因となることもあります。
ヘルパンギーナのウイルスは毎年変わりますか?
はい。流行の主体となる型は年ごとに変わります。近年では、コクサッキーウイルスA群の4型、6型、10型、2型などが毎年入れ替わりながら流行しています。
「一度かかったら、もうかからない」と思ってしまう方も少なくないかもしれませんが、ヘルパンギーナは型が異なれば再び感染する可能性があります。これは、ウイルスの型ごとに免疫ができるためで、毎年異なる型が流行すると、繰り返しかかることもありえます。そのため、過去に感染歴がある場合でも、引き続き感染対策が必要です。
ヘルパンギーナはウイルスによって症状が変わりますか?
ウイルスの型によって症状が大きく変わることはありません。ヘルパンギーナに感染した場合、一般的には以下のような経過をたどります。
感染後、2~4日の潜伏期間の後に突然の高熱(38〜40度)が出るのが典型的な症状の特徴です。発熱とほぼ同時か、やや遅れて喉の痛みが強く現れ、喉全体が赤く腫れます。
また、口腔内に直径1~2mmほどの小さな水疱性の発疹が複数現れるのも特徴のひとつです。水疱は大きいものでは直径5mmほどになることもあり、周囲は赤い輪で囲まれます。また、この水疱は1~2日で破れて潰瘍となり、強い痛みを伴います。痛みのため食事や水分がとれなくなることも少なくありません。
発熱は2~4日ほどで軽快し、潰瘍や発疹もその後数日のうちに自然と消失して、多くの場合は軽症のうちに治癒します。
どのウイルスの型の場合でも、基本的には上記のような経過をたどりますが、まれに合併症を引き起こす型もあるため注意が必要です。
例えばEV71型の流行年には、無菌性髄膜炎や心筋炎などの合併症が報告されています。
以下のような症状がみられた場合、重篤な合併症を引き起こしている可能性があります。早めに医療機関を受診してください。
水分がとれず、尿量が減少している
激しい頭痛や嘔吐が続く
呼吸が苦しい
顔色が悪い
視線が合わず、ぐったりとしている
ヘルパンギーナの感染経路

ヘルパンギーナの感染経路を教えてください
ヘルパンギーナは、主に接触感染と飛沫感染によって感染が広がります。特に急性期(発症から3日程度)は喉の粘膜からウイルスが排出されるため、咳やくしゃみ、会話時の飛沫により周囲へ感染が拡大します。
また、ヘルパンギーナは回復期(発症後2~4週間)にも便からウイルスが排出され続けます。汚れたオムツやトイレのドアノブなどに触れた手で口を触ると糞口感染(ふんこうかんせん)する可能性があります。
子どものヘルパンギーナの主な感染経路は何ですか?
保育園・幼稚園などでのおもちゃの共有、タオルの貸し借り、さらには咳やくしゃみを介した飛沫が主な感染経路となります。ヘルパンギーナの感染者の90%以上は5歳以下の乳幼児であり、特に1歳代に多くみられます。この背景には、免疫が未発達であることや、身の回りのものを口に入れる行動が多い年齢であることが挙げられます。また、園内では密な環境で活動するため、1人が感染すると短期間で集団感染が発生することも少なくありません。
大人のヘルパンギーナの感染経路を教えてください
大人の感染経路は主に家庭内で、ヘルパンギーナに感染した子どもからうつります。特に、発症して間もない子どもの世話をする保護者は、咳や唾液、オムツ処理を通じてウイルスに接触する機会が増えます。子どもの抱っこ中に咳やくしゃみを浴びたり、タオルや食器を共用したりすることで感染することも少なくありません。
多くの大人は、子どもの頃の感染によって免疫をすでに獲得しており、再感染しても軽症または無症状で経過することが一般的です。しかし、疲労やストレスで免疫力が低下している方、高齢者、基礎疾患を持つ方などは、発熱や喉の痛みなどの症状が現れる場合があります。

