足のつりやむくみが何度も続く、日に日に強くなる、両足に出るといった変化に、だるさや食欲低下、黄疸、急激な体重増加、おなかの張りが加わるときは、肝臓の不調が隠れていることがあります。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、かなり悪くなるまで自覚症状が出にくいため、一見よくある不調が最初のサインになることもあります。まずは内科や消化器内科、肝臓内科で相談し、必要に応じて血液検査や腹部超音波(エコー)検査で原因を調べます。足に症状が出る理由と受診の目安について、天神橋みやたけクリニック院長の宮竹先生に聞きました。
※2026年7月取材。

監修医師:
宮竹 英希(天神橋みやたけクリニック)
1997年に大阪大学医学部を卒業。大阪大学医学部附属病院第一内科、大阪警察病院内科、大阪大学医学部附属病院消化器内科、大阪大学大学院、大阪警察病院内科(消化器)などを経て、2015年4月に天神橋みやたけクリニックを開院した。現在は院長を務める。医学博士、日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本肝臓学会肝臓専門医。
肝臓病が疑われる症状とは?
編集部
肝臓病を疑ったほうがいい症状には、どんなものがありますか?
宮竹先生
疲れやすい、だるい、食欲がない、体重が減る、かゆみが続く、尿の色が濃い、便の色が白っぽい、皮膚や白目が黄色く見えるといった症状は注意したいサインです。さらに進行すると、おなかが張る、アザができやすい、鼻血が出やすい、意識がぼんやりする、物忘れが増えるといった変化が出ることもあります。そのほか、足がつる、足がむくむといった症状が出る場合もあります。
編集部
足の症状が起こることもあるのですね。
宮竹先生
はい。なかでも肝臓の障害が進んで肝硬変(かんこうへん/肝臓が硬くなって働きが落ちた状態)のような状態になると、足がつりやすくなったり、足首やすねがむくんだりすることがあります。ただし、足のつりやむくみは、脱水、腎臓病、心不全、甲状腺の病気、薬の影響などでも起こるため、それだけで肝臓病と決めることはできません。ほかの症状がないかも含めて考えることが大切です。
編集部
肝臓病は、かなり進むまで症状が出ないこともあるのでしょうか?
宮竹先生
あります。肝臓は「沈黙の臓器」といわれるほど、かなり悪くなるまで自覚症状が出にくいことがあります。そのため、足がつる、むくむ、疲れやすいといった一見よくある不調が、実は最初のサインになっていることもあります。特に、お酒をよく飲む人、健康診断や人間ドックなどで脂肪肝を指摘されたことがある人、肝機能異常を放置している人は、軽い症状でも一度確認しておくことをおすすめします。
なぜ、肝臓が悪いと足に症状が出るのか?
編集部
なぜ、肝臓が悪いと足がむくむのでしょうか?
宮竹先生
肝臓が悪くなると、血液中の水分を保つ力が弱くなるため、足がむくみやすくなります。その理由の一つが、肝臓で作られるアルブミンというタンパク質の減少です。アルブミンが減ると、血管の中に水分をとどめておく力が弱くなり、水分が血管の外へしみ出しやすくなります。これが、足やすねのむくみにつながります。また、肝臓の働きが悪くなると、体の中の水分をうまく調整しにくくなり、余分な水が足やおなかにたまりやすくなります。特に、肝硬変まで進むと、肝臓が硬くなっているため肝臓への血流が悪くなって圧が高くなり、水分が血管の外にしみ出しやすくなります。その結果、重力の影響を受けて足に水分がたまり、足首やすねが重だるくなったり、靴下の跡がくっきり残るほど腫れたりすることがあります。
編集部
足がつるのも、肝臓の異常と関係があるのでしょうか?
宮竹先生
はい、あります。進行した肝疾患では、筋肉量や筋力の低下、体液バランスの乱れなどが重なり、足がつりやすくなることがあるのです。なかには、夜中や明け方に強いこむら返りのような症状が出る人もいます。ただし、足のつりは肝臓病に特有の症状ではありません。むくみやだるさ、食欲低下など、ほかの変化とあわせて見ることが大切です。
編集部
肝臓病が進むと、足以外にも水がたまることがありますか?
宮竹先生
あります。代表的なのは腹水(ふくすい/おなかに水がたまる状態)です。おなかが張って苦しい、ベルトがきつくなった、急に体重が増えたといった変化は、腹水がたまっているサインかもしれません。足のむくみと腹水は一緒に出ることも多く、進行した肝疾患では見逃せない症状です。足のむくみだけだと思っていたら、実はおなかの中にも水がたまっていた、ということもあるため注意が必要です。まれではありますが、胸に水がたまる胸水(きょうすい)が生じることもあります。
編集部
足の症状が出ているときは、かなり進んでいると考えたほうがよいのでしょうか?
宮竹先生
一概にはいえませんが、足のむくみや筋肉のつりが出ている場合、少なくとも「放置してよい段階ではない」と考えたほうがよいでしょう。とりわけ、肝硬変では初期は症状が乏しくてもむくみや腹水、黄疸(おうだん/皮膚や白目が黄色くなる状態)、意識障害などが出てくると病気が進んでいる可能性があります。症状の強さだけで重症度は決まりませんが、足に症状が出た時点で一度きちんと調べることが大切です。

