中国発の麻辣湯(マーラータン)チェーン「楊国福麻辣湯」の仙台駅前店が8月18日、本人の許諾を得ないまま、第三者の氏名を記載した「祝い花」を店舗前に設置していたとして謝罪した。
SNS上には、店先に並んだ祝い花を撮影したとみられる写真が投稿されている。その中には、フィギュアスケートの羽生結弦さんや、元首相の鳩山由紀夫さんの名前が記されたものもあった。
仙台駅前店はオープンしたばかりの店だったという。開店祝いの祝い花(スタンド花)に有名人の名前を無断で使うことは、法的にどのような問題があるのだろうか。
●店は「極めて不適切な行為」と謝罪
店は8月18日、公式Xで「御本人の許諾を得ることなく第三者の氏名を記載した祝い花を店舗前に設置するという極めて不適切な行為を行っていたことが判明いたしました」と説明。
そのうえで「関係者の皆様、ならびにご不快な思いやご迷惑をおかけいたしました皆様に、深くお詫び申し上げます」と謝罪した。
同店は8月18日から21日まで休業し、業務プロセスの見直しや店舗管理体制の強化・徹底をおこない、信頼回復に向けて取り組むとしている。
新しい店がオープンすると、店先に並ぶ豪華なスタンド花。そこに有名人の名前があれば、「この人から花が届くほどの店なのか」と目を引くこともあるだろう。
では、実際には贈られていない祝い花に有名人の名前を掲げ、あたかも本人から届いたかのように見せる行為には、どのような法的問題があるのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。
●有名人の「顧客吸引力」を勝手に利用したら?
開店祝いなどの「祝い花」に有名人の名前を無断で掲示・利用する行為には、パブリシティ権や氏名権・人格権の侵害、不正競争防止法の観点から法的問題が生じる可能性があります。
まず考えられるのが、パブリシティ権の侵害です。
著名人の氏名や肖像には、消費者の関心を引きつけ、商品の販売などを促進する「顧客吸引力」があります。
最高裁判所は、歌手の写真を無断掲載した週刊誌をめぐる裁判で、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合、当該顧客吸引力を排他的に利用する権利(パブリシティ権)を侵害するものとして、不法行為法上違法となると判断しました。
つまり、パブリシティ権とは、氏名や肖像が持つ経済的価値、いわば「人を引きつける力」を無断利用から守る権利です。
祝い花に有名人の名前を無断で掲載し、「あの有名人から花が贈られている」と見せる行為が、店舗への集客や顧客の関心を引く目的でおこなわれたのであれば、その顧客吸引力を無断で利用したものとして、パブリシティ権の侵害にあたり、民法上の不法行為(709条)が成立する可能性が高いと思われます。

