クッシング症候群は、コルチゾールというホルモンの作用が過剰になることで起こる病気です。顔が丸くなる、体幹に脂肪がつきやすい、血圧や血糖が上がる、筋力が落ちるなど、全身にさまざまな変化が出ることがあります。
検査では、まずコルチゾールが本当に過剰になっているかを確認します。その後、ACTHの値や画像検査などを組み合わせて、原因が下垂体にあるのか、副腎にあるのか、ほかの腫瘍にあるのかを調べます。この記事では、クッシング症候群の検査の流れを解説します。

監修医師:
上田 莉子(医師)
関西医科大学卒業。滋賀医科大学医学部付属病院研修医修了。滋賀医科大学医学部付属病院糖尿病内分泌内科専修医、 京都岡本記念病院糖尿病内分泌内科医員、関西医科大学付属病院糖尿病科病院助教などを経て現職。日本糖尿病学会専門医、 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医、日本専門医機構認定内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医、内科臨床研修指導医
クッシング症候群の診断に用いる検査

クッシング症候群ではどのような検査をしますか?
クッシング症候群が疑われる場合、血液検査、尿検査、唾液検査、デキサメタゾン抑制試験、画像検査などを組み合わせて調べます。最初に重要なのは、コルチゾールが過剰に分泌されているかを確認することです。コルチゾールは時間帯によって変動するため、1回の採血だけでは判断が難しいことがあります。そのため、時間帯別のコルチゾール、24時間尿中遊離コルチゾール、デキサメタゾン抑制試験などを用いて、コルチゾールの過剰を評価します。
また、ACTHというホルモンも測定します。ACTHは脳の下垂体から分泌され、副腎にコルチゾールを作るよう指令を出します。ACTHの値を確認することで、原因が下垂体や異所性ACTH産生腫瘍にあるのか、副腎そのものにあるのかを推測できます。
薬剤性のクッシング症候群を除外するため、ステロイド薬の使用歴も確認します。飲み薬だけでなく、注射薬、吸入薬、塗り薬、点眼薬なども含めて伝えることが大切です。
デキサメタゾン抑制試験とは何か教えてください
デキサメタゾン抑制試験は、コルチゾールの分泌が正常に抑えられるかを調べる検査です。デキサメタゾンは、コルチゾールに似た作用をもつ合成ステロイド薬です。通常、デキサメタゾンを投与すると、身体はコルチゾールが十分あると判断し、ACTHやコルチゾールの分泌を抑えます。しかし、クッシング症候群は、この抑制が十分に起こらず、翌朝のコルチゾールが高く残ることがあります。
検査方法には、少量のデキサメタゾンを夜に服用し、翌朝に採血する方法などがあります。
ただし、検査結果は薬の影響を受けることがあります。デキサメタゾンの代謝に影響する薬を服用していると、結果が正しく出にくい場合があります。検査前には、使用中の薬を必ず医師に伝えるようにしましょう。
コルチゾールの日内変動や尿の検査では何を調べますか?
コルチゾールには日内変動があります。通常は朝に高く、夜に低くなります。クッシング症候群では、このリズムが崩れ、夜になってもコルチゾールが下がりにくくなることがあります。そのため、夜間の血中コルチゾールや、深夜唾液中コルチゾールを調べることがあります。夜間のコルチゾールが高い場合、コルチゾール過剰の手がかりになります。ただし、唾液検査は施設や測定法によって扱いが異なるため、医師の判断で実施されます。
尿の検査では、24時間尿中遊離コルチゾールを調べます。これは、1日の尿を集めて、尿中に排泄されるコルチゾール量を評価する検査です。血液中の一時的な変動だけでなく、1日を通したコルチゾール過剰を確認するのに役立ちます。
クッシング症候群には、コルチゾールの分泌が周期的に変動するタイプもあります。その場合、1回の検査で異常が出ないこともあるため、必要に応じて複数回検査します。
原因を調べる検査と全体の流れ

検査はどのような順番で進みますか?
検査は、まずステロイド薬など外から入るグルココルチコイドの影響を確認し、その後に体内でコルチゾールが過剰に作られているかを調べます。コルチゾール過剰が疑われる場合、デキサメタゾン抑制試験、24時間尿中遊離コルチゾール、深夜のコルチゾール測定などを行います。これらの検査でクッシング症候群が疑われる場合、ACTHを測定し、ACTH依存性かACTH非依存性かを判断します。
ACTH依存性が疑われる場合は、MRIや胸腹部CTなどで原因を探します。下垂体腺腫によるクッシング病か、下垂体以外の腫瘍がACTHを作る異所性ACTH症候群かを見分けるため、専門的な負荷試験やカテーテル検査が行われることもあります。
ACTH非依存性が疑われる場合は、CTやMRIで副腎腫瘍、副腎過形成などを調べます。
ACTHの値から何がわかりますか?
ACTHの値から、コルチゾール過剰の原因がどこにあるかを推測できます。ACTHが高い、または抑えられていない場合は、ACTH依存性クッシング症候群を考えます。代表的な原因は、下垂体腺腫からACTHが過剰に分泌されるクッシング病です。まれに、肺や膵臓などの腫瘍がACTHを分泌する異所性ACTH症候群もあります。
一方、ACTHが低いにもかかわらずコルチゾールが高い場合は、副腎そのものがコルチゾールを過剰に作っている可能性があります。副腎腺腫、副腎がん、副腎過形成などが原因として考えられます。
ACTHは採血の条件や時間帯によって影響を受けることがあるため、1つの数値だけで決めるのではなく、コルチゾールや追加検査の結果と併せて判断します。
画像検査では何を調べますか?
画像検査では、原因となる腫瘍や副腎の変化を調べます。ACTH依存性が疑われる場合は、MRIを行い、ACTHを分泌する下垂体腺腫がないかを確認します。ただし、クッシング病の下垂体腺腫は小さいことがあり、通常のMRIではみつけにくい場合があります。そのため、画像で腫瘍が見えない場合でも、クッシング病が否定されるとは限りません。
副腎が原因と考えられる場合は、CTやMRIで副腎腺腫、副腎がん、副腎過形成などを調べます。
異所性ACTH症候群が疑われる場合は、胸部や腹部のCT、MRIなどで原因腫瘍を探します。ただし、偶然みつかった腫瘍が、本当に原因とは限らないため、ホルモン検査の結果と照らし合わせて解釈することが重要です。

