歯を削る音や治療中の痛み、過去のつらい経験などから、歯科医院に苦手意識を持つ方は少なくありません。しかし、不安を伝えたり、自分に合った歯科医院を選んだりすることで、負担を和らげられる場合があります。
歯医者が苦手になる理由や通いやすい歯科医院の選び方、不安を軽減する方法について解説します。

監修歯科医師:
松浦 京之介(歯科医師)
歯科医師。2019年福岡歯科大学卒業。2020年広島大学病院研修修了。その後、静岡県や神奈川県、佐賀県の歯科医院で勤務。2023年医療法人高輪会にて勤務。2024年合同会社House Call Agencyを起業。日本歯科保存学会、日本口腔外科学会、日本口腔インプラント学会の各会員。
歯医者が苦手な理由

歯医者が苦手になる原因を教えてください
歯科医院が苦手になる原因は人それぞれによって異なりますが、治療に伴う音や痛みへの不安、過去の経験などが影響していることがあります。
代表的な原因の一つが、歯を削る音や機械の作動音に対する恐怖心です。診療室のにおいや雰囲気、治療器具が並ぶ様子に緊張したり、診療台の上で身動きが取りにくいことに不安を感じたりする方もいます。
また、治療中の痛みや麻酔注射への不安も原因として挙げられます。実際には麻酔によって痛みを抑えられる場合でも、麻酔が十分に効かなかったらどうしよう、注射そのものが痛いのではないかと考え、受診をためらってしまうことがあります。
過去に歯科治療で強い痛みを感じた経験や、歯科医師などから叱られた経験が影響することもあります。受診が遅れたことや歯磨きの状態を強く指摘されると、再び責められるのではないかという不安から、歯科医院を避けるようになる場合があります。
歯科恐怖症とはどのような状態ですか?
歯科恐怖症とは、歯科治療や歯科医院に対して強い恐怖心や不安感があり、歯科医院を受診できなかったり通えない状態のことを言います。
歯科恐怖症の状態で、歯科医院を受診しても、強い心理的なストレスから嘔吐反射が出てしまったり、動悸や震えなどの症状が出てしまい、通常通りの治療が受けられないこともあります。
歯医者が苦手でも治療は受けた方がよいですか?
むし歯や歯周病などの口腔トラブルは、放置すると症状が進行する可能性があるため、歯科医院が苦手な方も必要な診察や治療を受けることが大切です。ただし、強い恐怖や不安がある場合は、無理に治療を始めるのではなく、まずは相談や検査だけを受ける方法もあります。
歯医者への苦手意識を和らげる方法

苦手意識があっても通いやすい歯医者の選び方を教えてください
歯科医院に苦手意識がある方は、治療への不安を相談しやすく、恐怖心や痛みに配慮した対応を行っている歯科医院を選ぶとよいでしょう。
まず確認したいのが、治療前のカウンセリングが充実しているかどうかです。個室のカウンセリングルームがある歯科医院なら、周囲を気にせず、不安に感じていることや過去の治療経験について相談しやすくなります。ただし、個室の有無だけではなく、治療内容をわかりやすく説明し、患者さんの希望を確認しながら進めてくれるかどうかも大切です。
痛みに対してどのような配慮を行っているかも確認しましょう。歯茎の感覚を鈍らせる表面麻酔や、麻酔液を一定の速度で注入できる電動麻酔器、細い注射針などを使用し、麻酔時の刺激を抑える工夫をしている歯科医院もあります。歯科治療への恐怖心が強い場合は、笑気吸入鎮静法や静脈内鎮静法などに対応しているかを相談する方法もあります。
また、院内の雰囲気や診療環境も通いやすさを左右します。落ち着いて過ごせる待合室や、個室または半個室の診療室があるか、スタッフが穏やかに対応してくれるかなどを確認してみましょう。予約時に歯科治療が苦手であることを伝え、その際の対応から相談しやすい歯科医院かどうかを判断することも一つの方法です。
歯医者が苦手であると歯科医師に伝えた方がよいですか?
はい。歯科治療が苦手であることは、予約時や診察前に歯科医師やスタッフへ伝えておくとよいでしょう。事前に伝えることで、治療の進め方を丁寧に説明する、こまめに休憩を取る、麻酔や処置に十分配慮して進めるなど、不安に配慮した対応を受けやすくなります。
単に苦手と伝えるだけでなく、治療中の痛みや機械の音が怖い、嘔吐反射が起こりやすい、過去の治療で怖い経験をしたなど、具体的に伝えることも大切です。治療を中断してほしいときの合図を、事前に決めておく方法もあります。
また、歯科医院によっては、笑気吸入鎮静法や静脈内鎮静法を用いて、不安や緊張を和らげながら治療を行える場合があります。ただし、すべての歯科医院で受けられるわけではなく、適応できるかどうかは健康状態や治療内容によって異なります。
麻酔や鎮静法で不安を和らげることはできますか?
はい。麻酔や鎮静法を用いることで、歯科治療に伴う痛みや不安を和らげられる場合があります。
歯科治療では主に局所麻酔を使用して治療する部分の感覚を鈍らせる処置が行われますが、表面麻酔や細い注射針、電動麻酔器などを用いて、麻酔注射による刺激を抑える工夫をしている歯科医院もあります。
緊張や恐怖心が強い場合は、笑気吸入鎮静法を利用できることがあります。鼻から笑気を吸入し、意識を保ったままリラックスした状態で治療を受ける方法です。また、点滴から鎮静薬を投与する静脈内鎮静法が選択される場合もあります。静脈内鎮静法では、うとうとした状態になり、治療中の不安や緊張を感じにくくなることが期待できます。
ただし、鎮静法に対応しているかどうかは歯科医院によって異なり、持病や服用している薬、当日の体調などによっては利用できない場合もあります。希望する場合は、予約時に歯科治療への不安が強いことを伝え、適切な方法について歯科医師と相談しましょう。
歯医者が苦手な場合、治療回数を減らすことは可能ですか?
治療内容や歯の状態によっては、1回の診療時間を長めに取り、複数の処置をまとめることで通院回数を減らせる場合があります。ただし、安全性や治療の精度を保つために必要な工程まで省くことはできません。
根管治療のように複数回の処置が必要になりやすい治療や、歯茎や感染部分の回復を待つ必要がある治療では、一定の通院回数がかかります。また、一度に治療できる範囲は、患者さんの体調や負担、使用できる麻酔薬の量、治療内容や保険診療上のルールなどによっても異なります。
通院回数をできるだけ少なくしたい場合は、初診時にその希望を伝え、検査後に治療の優先順位や通院計画について相談しましょう。歯科医院によっては、1回の診療時間を長めに確保したり、同じ日に複数の歯を治療したりできる場合があります。
ただし、歯科治療への恐怖心が強い方にとっては、長時間の治療が負担になることもあります。通院回数だけでなく、1回あたりの治療時間も含めて、無理なく続けられる方法を歯科医師と話し合うことが大切です。

