健康診断での「沈黙の臓器」・肝臓の数値の見方をご存じですか? 注目したい3項目を医師が解説

健康診断での「沈黙の臓器」・肝臓の数値の見方をご存じですか? 注目したい3項目を医師が解説

健康診断で肝機能の数値を指摘されても、AST、ALT、γ(ガンマ)-GTPなど、どこをどう見ればよいのか分かりにくいものです。実は注目したいのはAST・ALTだけでなく、血小板、アルブミン、ビリルビンの3項目です。特に血小板は、少ないと肝臓の線維化が進んでいるサインになることがあり、15万/μLを下回る場合は注意が必要になります。また、数値の高さそのものより、昨年や一昨年と比べてどう変化しているかも大切です。肝臓の数値の読み方と、指摘されたときに見直したい生活習慣について、天神橋みやたけクリニック院長の宮竹先生に聞きました。

※2026年7月取材。

宮竹 英希

監修医師:
宮竹 英希(天神橋みやたけクリニック)

1997年に大阪大学医学部を卒業。大阪大学医学部附属病院第一内科、大阪警察病院内科、大阪大学医学部附属病院消化器内科、大阪大学大学院、大阪警察病院内科(消化器)などを経て、2015年4月に天神橋みやたけクリニックを開院した。現在は院長を務める。医学博士、日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本肝臓学会肝臓専門医。

そもそも「肝臓の数値」とは何を指すのか?

そもそも「肝臓の数値」とは何を指すのか?

編集部

「肝臓の数値」はどの項目でしょうか?

宮竹先生

一般に「肝臓の数値」というと、AST、ALT、γ-GTP、ALP、ビリルビン、アルブミンなどを指すことが多いですね。ASTとALTは肝細胞のダメージの程度を調べる項目で、γ-GTPやALPは胆汁の流れの異常や飲酒の影響を考える手掛かりになります。さらに、ビリルビンは黄疸(おうだん/皮膚や白目が黄色くなる状態)があるか、アルブミンは肝臓の働きがどれくらい保たれているかを見る指標です。これらのうちどれか一つだけで判断するのではなく、組み合わせて総合的に読むことが大切です。

編集部

ASTやALTは、どのように見ればよいのでしょうか?

宮竹先生

ASTとALTは、肝臓の細胞が傷つくと上がりやすい数値です。健康診断ではまず、この2つが「肝機能異常」として注目されます。特に、ALTは肝臓由来の変化を反映しやすく、脂肪肝や慢性肝炎で上昇することがあります。ただし、数値の高さだけで異常と判断するのは難しく、わずかに基準を上回っているだけでも、そうした変化が長く続けば病気を疑うヒントになることもあります。このように、数値の高さだけでなく、昨年や一昨年と比べてどうなっているかといった変化の仕方も重要です。

編集部

γ-GTPが高いと、お酒の飲みすぎというイメージがあります。

宮竹先生

γ-GTPは飲酒の影響で上がりやすい項目としてよく知られていますが、「お酒の飲みすぎ」と決めつけることはできません。肥満や脂肪肝、胆道系の病気、服用中の薬の副作用などで数値が上がることもありますし、お酒を飲む人が必ずしも高いとは限りません。そのため、「γ-GTPが高い=アルコールだけが原因」と考えるのではなく、ほかの肝機能項目や生活習慣、画像検査の結果などとあわせて総合的に判断することが大切です。

編集部

将来の肝臓病リスクを見る上で、ほかに注目したい項目はありますか?

宮竹先生

注目したいのは、血小板、アルブミン、ビリルビンです。血小板が少ない場合は、慢性的な炎症やダメージによって肝臓にたくさんの瘢痕(はんこん)組織が作られている、すなわち肝臓の線維化(せんいか)が進行しているサインであることもあります。具体的には、血小板が20万/μL以上ならほぼ問題なく、15万〜20万/μLは注意が必要で、15万/μLを下回る場合は線維化が進んでいる可能性があります。
アルブミンが低いと、肝臓でタンパク質を作る力が落ちている可能性があります。それからビリルビンが高いと、黄疸や胆汁の流れの異常を考えます。つまり、ASTやALTが「今の炎症」を見る項目だとすれば、血小板、アルブミン、ビリルビンは「肝臓の働きや状態」を考える材料になるのです。なお、健康診断では「総ビリルビン」を測定することが多いのですが、肝臓の状態を正確に評価する場合に必要になるのは、ビリルビンの分画である「直接ビリルビン」の値です。
ほかに付け加えるとすれば、コリンエステラーゼ(ChE)です。常に健康診断の検査項目に入っているわけではありませんが、肝臓病のリスクを見る上で参考になります。コリンエステラーゼは栄養状態の指標であり、やや専門的にいうと血中半減期(血液中の量が半分になるまでの期間)が約10〜16日です。アルブミンの血中半減期は約20日ですので、栄養不足や肝機能の低下が起こると、コリンエステラーゼはアルブミンよりも先に数値が下がるという特徴があります。逆にコリンエステラーゼが高いと過栄養を反映していることがあり、脂肪肝が存在する場合があります。

肝臓の数値が悪いときに疑われる病名は?

肝臓の数値が悪いときに疑われる病名は?

編集部

肝臓の数値が悪いとき、まず疑われる病気は何でしょうか?

宮竹先生

多いのは脂肪肝です。最近は飲酒が原因の脂肪肝だけでなく、肥満や糖尿病、脂質異常症など生活習慣病を背景とした脂肪肝も増えています。そのほか、アルコール性肝障害、B型・C型肝炎などのウイルス性肝炎、薬剤性肝障害、胆石など胆のうや胆管の病気なども候補になります。

編集部

ASTやALTが高いときは、どのような病気が考えられますか?

宮竹先生

ASTやALTが高いときは、肝臓の細胞に負担がかかっている、あるいは傷んでいる状態が考えられます。原因として多いのは、脂肪肝、肝炎、アルコールの影響、薬の副作用などです。甲状腺の機能異常や自己免疫疾患で上昇する場合もあります。特に、ALTが高めのときは、腹部超音波(エコー)検査で脂肪肝が見つかることもよくあります。一方で、数値が急に大きく上がっている場合は、急性肝炎やウイルス感染なども疑います。ただし、血液検査の数値だけで病名を決めることはできません。必要に応じて、腹部エコー検査や肝炎ウイルス検査などを組み合わせて、原因を詳しく調べます。

編集部

γ-GTPやALPが高いときは、何を疑うのでしょうか?

宮竹先生

γ-GTPやALPが目立って高い場合は、胆汁の流れが滞る胆汁うっ滞型の異常を考えます。ほかには、胆石や胆管の病気、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎(胆管に炎症が起きて胆汁の流れが悪くなる病気)などが背景にあることもあります。また、γ-GTPは飲酒や脂肪肝でも上がるため、生活習慣の影響も確認が必要です。

編集部

肝臓の数値が悪くても、自覚症状がないことは多いのでしょうか?

宮竹先生

はい、とても多いですね。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、かなり進行するまで症状が出ないことも少なくありません。だからこそ、血液検査での小さな異常を軽く見ないことが大切です。だるさや食欲低下、黄疸などが出たときには、すでに病気が進んでいる場合もあります。一方で、健康診断の段階で見つかれば、生活習慣の改善や早期治療で進行を防げるケースも多くあります。

配信元: Medical DOC

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