知らぬ間に子を追い込む“子育てのダブルバインド”って何?

知らぬ間に子を追い込む“子育てのダブルバインド”って何?

“ダブルバインド”という言葉を知っていますか? 多くの人が耳慣れない言葉なのではないでしょうか? しかし実は、知らぬ間に多くの親御さんが“ダブルバインド=二重拘束”というコミュニケーションパターンでわが子を追い込んでいるそうです。“ダブルバインド”とは? 『一人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ』(日本実業出版社)の著者である立石美津子さんにお話しを伺いました。

●親の命令の矛盾で子どもを心理的にコントロールし、混乱させる“ダブルバインド”

皆さんは、わが子が親の言うことを聞かなかったとき、こんなしつけ方をしたことはないだろうか?

子どもと公園に遊びに行って…
ママ「もう帰るよ!」
子ども「嫌だ、もっと遊びたい!」
ママ「じゃあ、ママは先に帰るから勝手にしなさい! バイバイ!」

「親としては、“ホントは置いて帰る気なんてさらさらないのに、先に帰ると言えばついてくるだろう。実際、子どもは一人では帰れないから困るだろう”だから従わざるをえないということをお見通しで言うのです。しかし、もし子どもが“勝手にしなさい!”という言葉をそのまま字面通りに受け取って、“じゃあ、勝手にする”と、そのまま遊び続けたら親御さんはどうしますか? さっき“勝手にしなさい”と言っておきながら、“いい加減にしなさい!もう帰るの!”と怒って手を無理矢理引っ張って帰るのではないでしょうか?」(立石さん 以下同)

このように、親の矛盾した命令で子どもを心理的にコントロールし、混乱させることが、“ダブルバインド”だという。

●子育ての随所で“ダブルバインド”が発生している!

「ダブルバインドとは、まったく異なる命令を受け取った子が親の矛盾を指摘することもできず、最終的に親の言うことに従わなくてはらない状況に陥ること。これにより心にストレスを溜め込むシステムが作られていくというコミュニケーションパターンで、アメリカのグレゴリー・ベイトソンという文化人類学者が“統合失調症”(幻覚や妄想、興奮などの激しい症状のほかに、意欲の低下や感情の起伏の喪失、引きこもりなど多彩な精神症状を呈する病気)に似たような症状を示すようになると指摘する説です」

実は、こういったしつけ方は、公園の例に限らず、子育ての随所で発生しているという。

知らぬ間に子を追い込む“子育てのダブルバインド”って何?

例えば、こんなケースもよくある光景。

おもちゃを散らかしている子どもに…
ママ「おもちゃ片付けなさい!」
子ども「あとで片づける!」
ママ「いいから、早く片付けなさい! 片づけないとおもちゃ全部捨てちゃうからね!」

そう言って子どもに恐怖を与えることで子どもをコントロールしようとする。しかし、それでも子どもが片づけなかった場合、多くの親御さんは“捨てちゃうからね!”と言っておきながら、実際はおもちゃを捨てず、“なんで片づけないのよ!”とさらに怒鳴る。つまり、子どもが何を選択しても怒られ、従わざるをえない状況に追い込まれる。子どもとしては、“いったいどっちなの?”となり、この矛盾が子どもを混乱させていくのだ。

「ダブルバインドでしつけたからといって、もちろん誰もが統合失調症を発症するということではありません。しかし、少なくとも“二重拘束”された子どもは、脅しの恐怖を味わい、さらに一貫性のない親の指示に混乱し、親への不信感を募らせていくことになるのです。そして、それがエスカレートすればメンタル不全に陥るケースも稀にあるということなので、気をつけましょう!」

お話を伺った人

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立石 美津子

子育て本作家・講演家。著書は『一人でできる子が育つ テキトーかあさんのすすめ』『心と頭がすくすく育つ読み聞かせ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『1人でできる子になるテキトー母さん流子育てのコツ』『立石流 子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方 』など。