●赤ちゃんの頭の中はむちゃくちゃ忙しい
「3歳までは“何をするかじゃなく何をしないか”が大事です。この時期は、外界を感じることに脳をフル回転で使っています。母親の肌の柔らかさや温かさを感じて、おっぱいを口に含んだ幸福感を反芻します。父親の大きな胸郭に響く低音の声や、家の匂いに安心しているのです。赤ちゃんの脳は、外界情報を知識に変換していて、とても忙しいのです。なので、赤ちゃんが壁に揺れる光をご機嫌で見つめていたら、そのままそっと見つめさせてあげてください。散歩中に街路樹に見とれていたら、立ち止まってあげてほしいのです。彼らをかまい過ぎず、感じているものを母もゆったり感じて生活するのが、この時期の最高の教育です」(黒川氏 以下同)
この時期、母親は、赤ちゃんの喃語(「ばぁ」や「ぶぅ」などの発声)に、同じ音程で答えるのが基本。高い声で「ばぁ」と言ったら、同じように高い音程で「ばぁなのね」と返してあげる。低い声なら、低い声で返す。たいていは自然にそうしているものだというが、赤ちゃんとのコミュニケーションの取り方がわからない方の参考までに。

●男の子が見えない敵と戦っている理由
赤ちゃん期は、自分の脳に合った遊びを自然に選ぶという。特に男の子の赤ちゃんには、注意が必要だそうだが、それは…?
「男の子は生まれつき近くより、遠くに興味が行く脳の持ち主です。男の子がおもちゃを散らかし放題にして、こっちの車、あっちの電車と目移りすることもありますが、これは空間認知力を高めているところなんですね。つい『新しいおもちゃを出すなら、今遊んでいるおもちゃをしまいましょう』と母親はやりたがりますが、ちょっと待ってください。これをやると、男の子の脳の可能性をつぶしてしまうことになりかねません」
よく小さい男の子が見えない敵と戦っているのも、この空間認知能力のせいだという。この時期だけは、部屋が乱雑になっても、脳を育成中と思って放っておくのが正しいやり方だそうだ。
では、女の子の特徴は何だろう?
「女の子は、観察能力に優れています。例えば、子どもが、抱き上げたお母さんのカーディガンのボタンに手を触れたら、丸く平たい物体が、穴を通るという物理現象に脳が触発された証。そういう、日常のささやかな出会いこそが、脳に感性の地図を描きます。かといって、ボタンを無理矢理触らせても効果はありません。共感を欲する脳を持った女の子には、“○○ちゃんは、これ好きなのよね〜”と言うくらいがいいでしょうね」