でも、最近は「マスクをするのは、周りに拡散させないマナーであって、予防効果はない」と聞くこともある。
これって、本当? インフルエンザ予防として本当に意味のあることって、何? 国立感染症研究所・感染症疫学センター第二室長の砂川富正さんは次のように話す。
●インフルエンザ対策にマスクは効果的?
「インフルエンザのウイルスの直径は非常に小さいために、マスクのすき間をすり抜けて入ってくるということは、理論上ありえます」(砂川さん 以下同)
ということは、意味がない…?
「いえ、そんなことはありません。適切なマスクの装着によって、ウイルスを吸い込む確率を下げることができます。特に『せきエチケット』といって、感染者がマスクを装着することで、くしゃみや咳などで出る大きな飛沫が外に飛び出すのを低下させる効果があります。また、マスクをしていることで鼻やのどの粘膜の湿度を保ち、病原体や異物を洗い流す上での効果が期待されることも含めて、有効だと考えられます」
ウイルスが活発に働く条件として、湿度が下がるほど、空気中に漂う時間が長くなるため、湿度を保つことは重要だという。
「湿度を保つという意味で、加湿器の使用も有効ですが、望ましいのは部屋の湿度を50~60%以上にすること。これは実際には案外難しいかもしれません」

●手洗い・うがいで防げない場合も
また、「手洗い」「うがい」は大切だが、「帰宅後にする」だけでは防げない場合も多々あるそう。
「手は知らないうちにいろいろなものを触っています。ドアノブや、つり革、手すりなど、不特定多数の人が触れているものには飛沫がついている可能性もあります。また、顔や髪などを触ったりするクセがある人は、手にウイルスがついてしまうことがありますし、無意識で手を口元に持ってきていることもたくさんあります」
理想は、こまめな手洗い、それも指の股や手首などまでしっかり洗うことだが、時間がかかるだけに、現実的には難しい面も。手軽で有効なのは、アルコール消毒だそう。
「ウイルスがのどの表面につくと、数十分で粘膜から体内に入っていってしまいます。のどについて数十分以内に常にうがいをするというのも、現実的ではありません。ですから、こまめに口の中をきれいにすることや、部屋の湿度を保ったり、マスクをしたりというほうが有効かと思います」