シュタイナー教育とは

シュタイナー教育は、オーストリア生まれの哲学者、ルドルフ・シュタイナーが提唱した教育法です。まずは歴史や、日本で普及した経緯などを含めて、シュタイナー教育の概要を解説します。
ドイツで誕生した個性を重視する教育法
初めてシュタイナー教育を取り入れたのは、第1次世界大戦が終わった直後の1919年にドイツで誕生した「自由ヴァルドルフ学校」です。
シュタイナーが創設アドバイザーとして携わった自由ヴァルドルフ学校が注目された理由は、豊かな「人間形成」を目標としている点にありました。
子どもの個性を尊重し、備わっている能力を引き出すことがシュタイナー教育の理念です。頭・体・心の自然な成長を促すため、日常生活でも子どものTV・スマホの使用、添加物の入った食材などを控えるように推奨される場合があります。
日本では1980年代から普及
日本でシュタイナー教育が広まった1980年代は、教師主導のもとで行われる詰め込み教育が主流でした。純粋な興味・関心よりも入試・就職などの結果を重視する学校にストレスを感じ、不登校になる子どもも増えていたといわれています。
そのような時代背景から日本の公教育を問題視する人たちを中心に、シュタイナー教育が普及していったのです。
その後ゆとり教育を経て、近年は赤ちゃん・幼児期から学習する「早期教育」も人気です。一方で、AIの発展により知識だけでは通用しない時代がくることから、子どもの個性を重視するシュタイナー教育が注目されています。
家庭生活や転校が難しく感じることがある
シュタイナー教育は、家庭生活において一部制限があるのも事実です。例えばシュタイナー教育では、プラスチックなどのおもちゃは避けて、木・布などの自然素材を使ったおもちゃや、手づくりおもちゃを使うのが一般的です。
シュタイナー教育ではTVやスマホの使用を控えることも特徴で、子どもだけではなく家族の生活スタイルを変える必要がある家庭も多いでしょう。
また、日本でシュタイナー教育を取り入れている保育園・幼稚園・学校の数は、それほど多くありません。転勤などで引っ越す場合、新しい居住地の近くにシュタイナー教育を取り入れている学校がない可能性も考えられます。
シュタイナー教育には独自のカリキュラムが設定されているため、転園・転校をすると慣れるのに時間がかかる点を理解しておきましょう。
シュタイナー教育が日本の公教育と異なる点

シュタイナー教育は、日本の公教育にはない指導法を取り入れています。シュタイナー教育が日本の公教育と異なる点は、大きく3つです。
年齢の枠を超えた縦割り教育
同年齢の子どもたちで編成される公教育とは対照的に、シュタイナー教育では縦割り教育で指導が行われます。縦割り教育とは年齢で区分けしないで、クラスを編成するスタイルです。
異年齢の子どもと関わる機会が多いため、きょうだいのようなつながりをつくりやすいのも特徴です。
例えば年齢が上の子どもは、年下の子どもに道具の使い方などを教えることで思いやり・責任感・自信などの成長が期待できます。一方で年齢が下の子どもにとっては、困ったときに頼れる存在は安心感につながるでしょう。
7年ごとに発達段階を区切って指導
シュタイナー教育では、人間の頭・心・体は7年周期で成長すると考えています。そのため0〜21歳を7年ごとに分け、3つの段階で成長に合わせて指導します。
0〜7歳の第1期は、体を動かして意志を育てる段階です。第1期では遊びを中心に、規則正しい生活を送ることで子どもの意志を養います。
7〜14歳の第2期には、音楽・絵といった芸術を取り入れながら心・感情を養い、同時に自分の表現力や想像力を養うための学習がスタートします。
14〜21歳の第3期は、思考を形成する時期です。第3期では知識を得るだけではなく、論理的・イメージと関連づけた思考をめざします。
基本的に同じ担任・仲間と学ぶ
日本の公教育では、1〜2年のペースで担任・クラス替えをするのが一般的です。しかしシュタイナー教育で小学校・中学校の年代にあたる1〜9年生には、基本的に担任・クラス替えがありません。
同じ担任・仲間と学び続けることで、子どもが安心して個性を伸ばせるように配慮されています。人間関係を築くのに時間がかかるタイプの子どもにとっては、同じ担任・仲間で学び続けられるのは心強いでしょう。