レッドブルは2026年シーズンに向けて、マックス・フェルスタッペンのチームメイトとして現在姉妹チームであるレーシングブルズ所属のアイザック・ハジャーを昇格させる見込みが高まっている。
2025年シーズンの第3戦からレッドブルに昇格した角田裕毅にとっては、正念場と言える状況だ。角田の直面する状況や、残された選択肢は何があるのか?
レッドブルにとって、フェルスタッペンのチームメイトは常に頭痛の種となってきた。今シーズンはリアム・ローソンを起用したものの、序盤2戦を終えて角田と急遽交代させたが、彼も苦戦続きで今のところ解決策になったとは言い難い状況だ。
そこで注目されているのがハジャーだ。今季F1デビューしたこのルーキーは、レッドブル上層部に強い印象を与えており、オランダGPで初表彰台を獲得した後にはアドバイザーのヘルムート・マルコが「アイザックは一味違う」と発言し、レッドブルの2台目のマシンに乗るというプレッシャーに耐えられるはずだと示唆した。
そして9月19日開幕のアゼルバイジャンGPを前に、ドイツの『アウト・モーター・ウント・シュポルト』誌は2026年にハジャーがレッドブルに昇格すると報じた。とはいえ、今のところハジャーはこの話を否定している。
「僕は気にしないよ」とハジャーはアゼルバイジャンGPで語った。
「本当にどうでもいいんだ。5日間のオフがあって家にいたから、インスタグラムをスクロールするよりやるべきことがあったんだ」
■ハジャーが“ポール”、角田にとって次の3戦は正念場
Motorsport.comが得た情報によれば、現状ハジャーが2026年のレッドブル昇格に最も近い位置にいるのは確かである。ただしチームはマルコが示したタイムラインに従っている。彼は10月末のメキシコGPを基準としているのだ。つまり、レッドブルは最終決定を下す前に、あと3レースを待つことになる。
現状の流れを覆す「何か特別な出来事」が起きない限り、ハジャーの昇格は既定路線。つまり角田がシートを維持するには並外れた結果を出す必要がある。現状ではそれは困難に見えるが、角田にとって今後3戦が特に重要となってくるのは間違いない。
「正直、将来のことはあまり考えていないです。でも今は毎戦が重要なのは確かです」と角田はバクーで語った。
「とにかく結果を出し続け、進歩を示すことです。そのうえで彼らがどう判断するかに任せます。自分は周りと戦って、それをやり遂げようとするのが好きなんです」
■レーシングブルズ復帰は角田の選択肢か?
もし角田が流れを変えられなければ、レーシングブルズへの復帰も選択肢のひとつになる。角田自身もその可能性を否定しなかった。
「来年レーシングブルズで何が起きるかはわかりません。今はレッドブルに残ることしか考えていないので、戻るかどうかについて今は考えていません。そのときになったら考えます。長年過ごしたチームでスタッフもよく知っているけど、同時に自分はもう新しい章に進んでいるんです」
そして角田は、レッドブルで過ごしている時間が「単なる苦戦」ではないと主張している。
「一見すると厳しい時期に見えるかもしれませんが、人間としてもドライバーとしても大きな成長を得られる時間になっています」
今後3戦で目立った結果を残せなければ、角田の2026年に向けた選択肢はレーシングブルズ以外にほとんど残されていない。
アルピーヌのセカンドシートはまだ空席だが、可能性は低いと見られている。より現実的なのは、アストンマーティンのリザーブドライバーの役割だろう。アストンマーティンはホンダが2026年からパワーユニットを供給するチームであり、角田にとっては現実味がある。ただし、角田の第一希望はあくまでレッドブルファミリーに残り、たとえ姉妹チームであってもF1グリッドにとどまることだ。
ここで重要なのはホンダの支援だ。ホンダは今シーズン限りでレッドブルと袂を分かつが、角田の個人スポンサーとしての支援を継続する可能性もある。これによってレーシングブルズでのF1残留のチャンスは高まれば、ホンダにとってもメリットがある。将来的にホンダPUを搭載するチームでの可能性を残すことができるからだ。
■2026年はハジャーにとって理想の昇格タイミングか
ハジャーは今シーズン中の昇格を望んでおらず、レッドブルも追加のドライバー交代を考えていない。ハジャーは2026年の新規則導入によってセカンドシートの問題……つまりマシン哲学が特定のドライバーに合わせたものではなくなると考えているため、来シーズンは昇格タイミングとしてはチャンスと見ている。
ただし角田はハジャーとは、少し違う考えを持っている。
「このクルマがマックス用に作られているとは思いません。彼は長く乗ってきたからこそ、セットアップから最大限を引き出す術を知っているんです。もちろん、彼がすごいドライバーだからでもあります」
とはいえハジャーの自信は揺らいでいない。
「2026年は別問題だ。チームにとって全く新しいスタートであり、『セカンドカー問題』といった議論は発生しない。全員が全く新しいマシンを駆るのだから、そんな話は起こりえない」
ハジャーはそう語り、モンツァで昇格の可能性について問われた際も「(2026年なら)ずっと楽になる」と答えていた。

