プロトタイプ専門の受託会社の事例──成果ベースの台頭
ここで別の人物の話を紹介します。元メガベンチャー出身の起業家Dは、高いプログラミング能力を持った人たちにバイブコーディングさせるプロトタイプ開発に特化した受託会社を立ち上げていました。Dの会社では「安価」「短納期」「明確な成果物」という3つの成果をベースに報酬が決まる契約を顧客と結んでいました。
Dと話題になったのが「月に何件さばくと予定していた売上に繋がるのか?」というものです。
本当にスキルの高いITエンジニアを雇うには高い給与が必要です。その給与を支払うには少なくとも給与の2倍は売り上げが欲しいところです。
ただ、Dのプロダクトは最低金額を数十万円に設定していました。その場合、エンジニアの人数×2〜3倍の案件数は少なくとも受注する必要があります。
Dの会社の報酬設定は、エンジニア業界に根づく“人月の呪縛”に強く縛られていました。安価を設定すると営業地獄になる可能性がありますし、そこまで新規開発の需要も見込めません。これでは、予定していた売上に繋がらない恐れもあります。
AIや自動化が前提となった世界では、D社のように「どれだけ時間を使ったか」より「どんな成果を出したか」で報酬を決める構造が現実味を帯びてきています。ただ、報酬をいくらで設定すれば発注者も受注者も被雇用者も納得ができるのかは、大きな課題です。
“サブスク型開発”という新しい対価モデルの挑戦
最後に、社内ツールを開発するEの話を紹介します。Eの会社はAIとバイブコーディングを活用し、初期費用+月額利用料という“サブスク型開発モデル”を展開しています。開発を「納品」で終わらせず、運用や改善を継続して提供。開発そのものが「一度きりのプロジェクト」ではなく、「継続的なサービス」へ変わっていくと予想してのサービス展開です。
Eは「納期や成果物より、“改善が続くこと”にお金を払ってもらえるようになると考えています」と語ります。
彼の言うとおり、今後、成果ベースに続いて継続ベースの対価モデルが生まれる可能性はあります。しかし、このモデルには課題もあります。発注企業からして簡単なツールに見えてしまうと、内製化しやすいように見えてしまうため、発注に繋がりにくいというものです。
生成AIの台頭によって開発ハードルが下がってしまったがために、発注者が考える「発注しても良いかも」というハードルは上がっているように思います。私も周囲の企業にサブスク型開発モデルの話を持ちかけてみましたが、多くの企業が買い切りでないと決裁ハードルは高いと感じています。

