
今田美桜さん(2018年12月、時事通信フォト)
【画像】え…っ? 「めちゃくちゃ美人」「やなせさんもホレるわ」 コチラが「実際の妻・暢さん」の若き日の姿です
1週間もかかったミュージカル編だが
『アンパンマン』の作者、やなせたかしさんとその妻の暢(のぶ)さんをモデルにしたNHK連続テレビ小説『あんぱん』の第25週「怪傑アンパンマン」では、121話で作曲家「いせたくや(演:大森元貴)」が「柳井嵩(演:北村匠海)」に『アンパンマン』のミュージカル化を提案しました。そして、125話までミュージカル『怪傑アンパンマン』の準備、公演の模様がじっくり描かれています。
ミュージカルには子供たちを中心に大勢の観客が訪れ、大盛況で終わりました。崇とパン職人「屋村草吉(演:阿部サダヲ)」の再会や、主人公「柳井のぶ(演:今田美桜)」の妹「辛島メイコ(演;原菜乃華)」が、コーラス隊の欠員を埋める形で、念願叶って人前で歌と踊りを披露したこと、戦時中に中国で命を落とした「田川岩男(演:濱尾ノリタカ)」の息子「和明(演:濱尾ノリタカ)」と柳井夫妻の心温まるやり取りなど、125話では感動的な場面が多数話題になっています。
ただ、史実でこのミュージカル『怪傑アンパンマン』(1976年7月20日初演)が果たした、一番重要な役割はまだ描かれていません。それは、「アンパンマン」の宿敵「ばいきんまん」の誕生です。
やなせさんの自伝『人生なんて夢だけど』(フレーベル館)によると、彼は公演での観客の反応を観ながら「(ミュージカルでは)悪役が普通の人間で、アンパンマンの相手役としてはパンチが不足していた」と感じたそうで、「食品の敵はバイキン」と考えて、いまや誰もが知る敵キャラのばいきんまんを作り出したといいます。
やなせさんは戦前に田辺製薬にデザイナーとして勤めていた際に描いた、小さい悪魔のようなバイキンの絵を参考にし、さらに「黒い蠅(ハエ)をベースにして、歯をむき出して笑っている感じ」のビジュアルにしたそうです。やなせさん曰く、「何も苦しまずにすぐできてしまいました」とのことでした。
ばいきんまんは1979年の絵本『あんぱんまんとばいきんまん』(フレーベル館)で初登場し、ミュージカル2作目『ミュージカル とべ!アンパンマン-アンパンマンとおむすびまん-』(1983年上演)にも、表向きが人間(演者)の顔で、後ろを向くとバイキンの顔になるという斬新な被り物のばいきんまんが出てきます。
さらに、このミュージカルで「ハヒフヘホー」という、ばいきんまんのおなじみの笑い方も生まれていました。「ガギグゲゴ」「ラリルレロ」などいろいろ試したなかで、ハ行だけ観客に大うけしたそうで、1988年のアニメ化よりも前にキャラの声のイメージは固まっていたといいます。
そして、やなせさんはばいきんまん誕生後、敵キャラが彼ひとりでは可哀相ということで、女性のバイキン「ドキンちゃん」を作りました。やなせさんは『アンパンマン伝説』(フレーベル館)という書籍のなかで、「ドキンちゃんはなぜかぼくの母親の面影があり性質は妻に似ている」と語っており、自分にとって大切なふたりの女性が投影されていることをほのめかしています。
また、『何のために生まれてきたの?』(PHP研究所)という本では、最初はばいきんまんを助けるために出てきたドキンちゃんが、勝気な性格ゆえにいつの間にかばいきんまんよりも立場が強くなっていたことに関して、やなせさんは「不思議ですね、夫婦生活と同じなんです」と語っていました。やはり、ドキンちゃんには、妻の暢さんが反映されているようです。
各登場人物に『アンパンマン』のキャラを当てはめているという脚本の中園ミホさんは、ガイドブックや各媒体のインタビューで、のぶのモデルがドキンちゃんであることを明かしています。演じる今田さんの顔立ちも、ドキンちゃんにそっくりです。
25週では、嵩が「アンパンマンに敵が足りない」と気付くような場面はありませんでしたが、さすがに第26週「愛と勇気だけが友達さ」のどこかで、ばいきんまん誕生は描かれるでしょう。119話では「八木信之介(演:妻夫木聡)」が『アンパンマン』に関して、「何かが足りないな」と語っていましたが、それはばいきんまんのことだったのかもしれません。
125話の最後で流れた26週の予告を見ると、入院しているのぶの病室に、アンパンマンと一緒にドキンちゃんのぬいぐるみがたくさん置いてありました。ばいきんまん、ドキンちゃんの誕生の場面は、最終週のなかでも特に盛り上がりそうです。
