プロ野球の日本シリーズは第3戦から甲子園球場に舞台を移したが、阪神が地元の利を生かせず、ソフトバンクが2勝目を挙げた。しかし追い詰められたのは、逆にソフトバンクの方ではないだろうか。第3戦が行われた10月28日、日本ハム・新庄剛志監督の影がチラついていたのだ。
「ここにきて山川穂高の打撃が上向いてきました。打ち始めると止まらなくなるというか、ホームランが出ると2本目、3本目を狙って打ってくるバッターなので、阪神の投手陣は要注意です」(スポーツ紙記者)
しかし、先発投手陣は「お疲れモード」に入りつつある。第3戦で6回108球を投げ、勝利投手になったモイネロだが、振り返ってみれば、クライマックスシリーズ・ファイナルステージから「計311球」を投げたことになる。
モイネロは防御率(1.46)、勝率(.800)でリーグトップ。奪三振数172(3位)もチームNo.1であり、小久保裕紀監督が最も頼りにしている先発投手と言っていいだろう。
だが、この短期間で311球を投げてしまったので、次の先発が予想される第7戦でのパワーダウンは必至。いや、先発登板できない可能性すらあるのだ。
「このままもつれて、モイネロが日本シリーズ第7戦に先発するとしたら、中4日になる。日本一を懸けて、両チームとも総力戦になるのは間違いありません。小久保監督は『今季最後の一戦』ということで、モイネロに頼るでしょう」(前出・スポーツ紙記者)
最も頼りになるモイネロが「お疲れ」なのは、CSファイナルステージで想定外のことが起きてしまったからだ。ソフトバンクは先に2連勝した。しかしそこから日本ハムが巻き返し、第6戦まで試合をすることに。その結果、モイネロを2回も先発させてしまった。初戦での先発後、第6戦に中4日で登板しているのだ。
ソフトバンクはCSファイナルステージ終了から中4日で日本シリーズに突入した。3連勝のストレート勝ちを収めた阪神は中7日、休養十分で臨んでいる。
日本シリーズ初戦の先発投手はモイネロではなく、有原航平だった。第2戦でも上沢直之を先発させたのは、CSファイナルステージだけで200球以上を投じたモイネロの体力消耗が懸念されたからだろう。
「3戦目のモイネロを見ると、序盤は変化球がストライクゾーンにいかず、ちょっと苦しんでいましたね」(NPB関係者)
モイネロを消耗させたのは、日本ハム・新庄剛監督の粘りだ。日本シリーズが第7戦までもつれて藤川球児監督が胴上げされることになったら、阪神は新庄監督にお礼を言わなければならない。
(飯山満/スポーツライター)

