農林水産省が今年9月分として発表した2025年産米の相対取引価格(卸値)は、前年同月に比べて63%も高い3万6895円(60キロあたり、全銘柄平均、税込)へと爆騰。調査が開始された2006年以降、3万円を超えるのは初めて(過去最高値)のことだ。
相対取引価格はJA(農協)などの集荷業者と卸売業者による取引価格。爆騰の原因としては、コメの価格高騰で集荷競争が激化していることに加え、JAが農家に仮払いする概算金が3割から7割も高く設定されたことなどがあるとされる。
銘柄米のうち取引価格が最も高かったのは新潟県産の「コシヒカリ(魚沼)」で、4万2257円(上昇率74%)。さらに山形県産の「つや姫」が3万9754円(上昇率72%)、秋田県産の「あきたこまち」が3万8631円(上昇率73%)と続き、最も安かった福井県産の「あきさかり」でさえ、3万1857円(上昇率65%)という有様なのだ。
このような情勢を受け、コメの店頭小売価格は上昇。農水省が全国1000店舗(スーパー)のPOSデータをもとに公表している集計結果によれば、直近週(10月13~19日)における5キロあたりの平均販売価格(税込)は4251円(銘柄米4501円、ブレンド米などその他3603円)と、軒並み前週の価格から上昇に転じている。
それなのに、高市早苗新政権が石破茂前政権の増産計画をアッサリと覆し、「減産再開」に踏み切るというのだから、もうムチャクチャである。そして農水省出身の生え抜きとして知られる鈴木憲和農水相は、就任記者会見で次のようにブチ上げてみせた。
「国が(コメの)価格にコミット(介入)すべきではない。価格はマーケットの中で決まるべきもので、あくまでも需要に応じた生産が原則だ」
要するに、令和の米騒動を招いた生産体制に戻す、ということだ。
国内有数のコメ産地に本拠を置く地元メディアの報道記者が憤慨する。
「国は2026年産の主食用米の生産を、前年比37万トン減の711万トンに減産する方針を固めています。被害を被るのは、来年もまたバカ高いコメを買わされる消費者だけではありません。新たな農業機器を取り揃えるなど、増産に向けた準備を進めてきたコメ農家は今、突然の方針転換で大混乱に陥っています」
これでは高市総理が掲げる「決断と前進の内閣」どころか「誤断と後退の内閣」ではないか。まさに猫の目のように変わる「大迷走農政」と言うほかはない。
(石森巌/ジャーナリスト)

