10月10日は「目の愛護デー」であった。スマートフォンやタブレットが当たり前となった現代、子どもたちの「目」の健康について改めて考えるべき時期に来ている。現在、子どもの近視は世界的に深刻な社会問題となっているが、その多くは生活習慣の見直しで予防できることもわかってきた。

本稿では、近視の現状と専門家が推奨する予防法、そして食事からできるアプローチについて解説する。
世界で急増する「近視パンデミック」という現実
「子どもが最近目を細めている」と感じる保護者は少なくないだろう。文部科学省の調査(令和5年度学校保健統計調査)によれば、裸眼視力1.0未満の小学生の割合は37.88%であり、約2.5人に1人という高い水準である。
この傾向は世界的にも見られ、専門家の間では「近視パンデミック」と称されている。あるシミュレーションでは、2050年までに世界人口の約半分が近視になると予測されており、特に東アジアでその進行が著しい。
そもそも近視とは、眼球がラグビーボールのように楕円形に変形(眼軸長が伸びる)し、目に入った光のピントが網膜より手前で結ばれる結果、遠方が不鮮明に見える状態を指す。
近視増加の主な要因は「遺伝」と「環境」の2つである。特に近年は、スマートフォンなど近くを長時間見続ける「近作業」の増加と、「外遊び」の時間の減少という環境要因が大きな影響を及ぼしていると考えられる。

専門家で組織される「近視予防フォーラム」は、近視を単なる視力の問題としてではなく、将来の眼疾患リスクを高める要因として捉え、警鐘を鳴らしている。同フォーラムの代表世話人であり、麹町大通り眼科院長の森紀和子先生は次のように語る。 「近視の進行は、眼球そのものが変形する不可逆的な変化です。一度伸びてしまった眼球は元に戻せません。それは、将来のQOL(生活の質)を著しく下げる可能性のある眼疾患の『種』を子どものうちから育てているのと同じこと。だからこそ、進行を抑制する『予防』という観点が何よりも重要なのです。」
未来の目を守るために。家庭でできる近視予防の3つの習慣
一度伸びてしまった眼軸長は元に戻すことが困難であるため、「予防」が最も重要となる。今日からでも始められる3つのポイントは、
1. 太陽の光を浴びる「外遊び」
1日2時間程度の外遊びが近視の進行を抑制するという研究結果がある。太陽の明るさや太陽光に含まれる「バイオレットライト」が、眼軸長が伸びるのを抑える効果を持つと考えられている。木陰でも効果は期待できるため、日中は積極的に屋外で過ごす時間を作ることが望ましい。
2. 目と体を休める「十分な睡眠」
質の良い睡眠を十分にとることは、目の健康維持に不可欠である。規則正しい生活(早寝早起き)をこころがけましょう。
3. 体の中からケアする「食事」
目の健康を支える栄養素を意識的に摂取することもまた重要である。最近注目されているのが「オメガ3脂肪酸」だ。 近年の研究では、オメガ3脂肪酸(特にDHAやEPA)の血中濃度が高い子どもは、近視になりにくい可能性が示唆されている。オメガ3脂肪酸は、サバやイワシなどの青魚に多く含まれるほか、アマニ油やえごま油からも手軽に摂取が可能である。

