便秘を脳のエラーとしてみる時代へ

今回の研究により、便秘の原因をこれまでより広く考えられるようになりました。
腸の働きだけでなく、脳の指令系統にも関係がある可能性が浮かび上がったのです。
研究チームは、バリントン核の中にある2種類の神経について「正常な排便には両方の神経がそれぞれ関わっている」と考えています。
どちらか片方だけが動くと、排便が遅れて長引くなど、不自然な状態になるおそれがあると推測しています。
異なる二つの神経が「出だし」と「持続」という排便の二段階を担っていることが示されたのは、著者たちによる初めての機能的な実験結果のひとつです。
脳が排便のタイミングを調整しているという具体的な証拠が得られた点は、とても重要な成果といえます。
今後は、この脳内の回路をより詳しく調べ、異常な反応が起きる条件を見極めていくことが課題です。
将来、脳内の特定の神経の働きを薬や刺激で調整することで、「出したいときに出せる」仕組みを実現できる可能性もあります。
研究チームの田中義将助教は「慢性便秘のしくみをより細かく理解し、患者さん一人ひとりに合った方法を探りたい」と話しています。
今回の成果は、便秘という身近な悩みを「腸だけの問題ではなく、脳と体の協調の問題」として捉え直すきっかけを与えてくれます。
これからの便秘治療は、腸を整えるだけでなく、脳の働きを見つめる時代に入るのかもしれません。
参考文献
慢性便秘症に新たな突破口~排便をつかさどる脳中枢の仕組みを世界で初めて解明~
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1340
元論文
Barrington’s Nucleus: A Pontine Defecation Brain Area Exhibiting Prompt and Delayed Defecation Responses
https://doi.org/10.1016/j.jcmgh.2025.101635
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部

