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ゴジラの「最終作」が酷評を浴びてしまった理由 12年を経て「楽しい異色作」になるまで

ゴジラの「最終作」が酷評を浴びてしまった理由 12年を経て「楽しい異色作」になるまで


2004年の映画『ゴジラ FINAL WARS』ポスタービジュアル(C)2004 TOHO PICTURES, INC. TM & (C)2004 TOHO CO., LTD

【動画】「えっ、見たいかも」「アクションしてる」これが『ゴジラ FINAL WARS』のバトルシーンです

長すぎる「人間同士の格闘シーン」が仇に?

 今から21年前の2004年12月、「ゴジラ」生誕50周年の記念すべき年に、シリーズ「最終作」と銘うった公開されたのが、『ゴジラ FINAL WARS』(監督:北村龍平)です。半世紀にわたって日本中を熱狂させたゴジラの歴史に終止符が打たれるとのことで、特撮ファンのみならず、「ゴジラ」に親しんだ多くの人びとの期待と注目を集めていました。

 もしかしたら、その「期待」が大きすぎたのかもしれません。公開当時は、なかなかどうして手厳しい評価にさらされました。興行記録の面でも、観客動員数は100万人にとどまり、これはシリーズ「ワースト3位」を記録してしまいます。どうやら、かつてゴジラに親しんだ大人たちを巻き込むことができなかったようなのです。

 とはいえ本作には、「ガイガン」「ラドン」「カマキラス」「キングシーサー」など、かつて「ゴジラ」と渡り合った数々のスター怪獣もたくさん登場します。キャストも豪華です。なのにどうして、この「最終作」が、まるで「最低作」かのごとき辛い評価を浴びせられてしまったのでしょうか。

 最も多い批判として挙げられるのが、「人間同士の格闘シーンが長い」という声でしょう。筆者は割と『FINAL WARS』が好きな方ですが、この意見には、同意です。結構、長いです。

『FINAL WARS』には、従来の人類よりも優れた身体能力を持った「ミュータント」と呼ばれる新人類が出現しているという、異色のSF設定が導入されていました。過去のスター怪獣たちが出現する一方で、それを迎え撃つのはこの新たに設定された「ミュータント」兵士である、という構図を取っているのです。

「エビラ」戦など、ワイヤーアクションを駆使した、ミュータント特殊部隊による銃撃戦はド迫力でしたが、後半における「ミュータント」である主人公と、「X星人」のボスとの肉弾戦は、見た目からすれば普通に人間同士のバトルです。この格闘が、ゴジラと「モンスターX」の取っ組み合いと重なるような演出が加えられているとはいえ、「主役が置き去り」感が否めません。怪獣を観にきた人からすれば、なおさらでしょう。

その後もシリーズが続いたことで「再評価」に?

 なお本作の「本編」部分を監督した北村龍平さんは、代表作『あずみ』でも知られる気鋭のクリエイターです。当時からすれば、大抜擢だったと言えるでしょう。実際、怪獣映画として観ると物足りない部分があるかもしれませんが、「北村作品」として観れば、その個性は十二分に発揮されていたと言えます。

 しかし、そうは言ってもこれは「ゴジラ」映画であり、当時は「最終作」とされていた作品でした。そこで「人間同士の肉弾戦」に多くの時間を割いたわけですから、批判の声が高まったのはやむを得ないかもしれません。

 さて、この『ゴジラ FINAL WARS』以降も、ゴジラの歴史が続いていることを、私たちは知っています。ただ、2016年に『シン・ゴジラ』が公開されるまで、国産ゴジラは、12年のブランクが空いてしまいました。

 いま、本作の再評価が進んでいるのは、「結局、ゴジラはここで終わらなかった」という事実によって、ファンに心の余裕が生まれたからなのかもしれません。その余裕とともに観れば、『ゴジラ FINAL WARS』は、決して「最低作」ではなく、楽しい「異色作」なのです。

配信元: マグミクス

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