2025年9月に開催された全国の銘柄豚を対象に“最もとんかつに合う豚肉”を選ぶ「とんかつベス豚グランプリ」で、茨城県産のブランド豚「常陸の輝き」が見事金賞を受賞しました。
これを記念して10月28日(火)、東京・池ノ上の「とんかつ太志」で試食会が開催されました。同店はミシュランガイド2020でビブグルマンを獲得した実力派。会場には香ばしい揚げ油の香りが漂い、期待が一層高まります。

噛むほどに広がる旨味 ロースもヒレも極上の一枚
照明を極力落とした店内に足を踏み入れると、まずその全貌が一望できるほど整然としていることに気づきます。床は磨き上げられ、柔らかな光を静かに反射しているよう。とんかつ店にありがちな油のぬめりや滑りは一切なく、細部まで手の行き届いた清潔感が心地よく感じました。最初の一歩で、この店が料理だけでなく空間づくりにも誇りを持っていることが伝わってくるようでした。

カウンター席からは店主・野溝太志さんが丁寧にとんかつを揚げる姿がよく見えます。
提供されたのは、「常陸の輝き」のロースかつとヒレかつを半分ずつ味わえる定食。衣が立ち、真ん中はほんのりピンク。見た目からして完璧な火入れです。

まずは信州米味噌仕立ての優しい味わいの味噌汁で口を整え、キャベツを少し食べてから、いよいよヒレかつへ。歯を入れた瞬間、肉汁がじゅわっと溢れ、柔らかな旨味が口いっぱいに広がります。特製ソースをかけても、また違った風味が楽しめ、衣がしっかりと肉を包み、最後までサクサクとした食感を保ちます。
続いてロースかつ。噛んだ瞬間、脂の甘みとジューシーな肉の旨味が一気に広がります。これこそが「常陸の輝き」の真骨頂。濃厚な味わいながらも後味はすっきり。ご飯が進む、まさに理想的なとんかつです。
ロースかつに軽く塩をふると、肉の旨味がぐっと引き立ち、味の輪郭がよりくっきりと感じられます。ボリュームたっぷりなのに、食べ終わったあとも驚くほど軽やか。上質な油で丁寧に揚げているからこそ、脂っこさを感じません。思わずおかわりしたくやさしい味わいに、「とんかつってこんなに軽やかだったかな」と思わず声が漏れるほどの一品でした。
「素材の力を生かす」――店主・野溝太志さんの哲学
店主の野溝さんは、「とんかつは、素材をいかに引き出すかがすべて」と語ります。
「豚肉は育った環境や処理の仕方で味がまったく違う。だからこそ、何度も試行錯誤して、どうしたらその肉が一番おいしく感じられるかを考えるのが楽しいんです」
野溝さんは、生産者のもとへ直接足を運び、飼育環境や飼料の内容まで自分の目で確かめているといいます。
「生産者のこだわりを理解した上で、その肉の持つ力を最大限に生かす。いじりすぎず、ありのままを生かしたい――それが私の基本姿勢です」

そんな中で出会ったのが「常陸の輝き」でした。
「北海道のどろぶたから沖縄の金アグーまで仕事柄多くの豚肉を手にしてきましたが、この肉を初めて見たとき、肉のきめの細かさに驚きました。切った瞬間に“これは今までにないとんかつになる”と確信しました」
「とんかつ太志」は全席合わせて12席。ランチタイムには行列ができるほどの人気店です。
「ランチは予約を受けていませんが、夜(17:30〜21:00)なら予約可能です。池ノ上駅や下北沢駅から少し歩きますが、常陸の輝きのとんかつは一度食べる価値がありますよ」(野溝さん)
