あらためて害獣肉について調べると、シカ肉は高タンパクで低脂肪。乱れた食生活の中高年、本誌記者にはピッタリと言える。本命のクマ肉も一般的な牛や豚に比べて脂肪分が少なく、鉄分が豊富で貧血や冷え性の予防にも効果的。また、ビタミンB1が多く、食欲不振や疲労の改善まで期待できるという。夏が終わっても暑い日々が続く今こそ、ぜひ食べたくなるではないか。
都内で害獣を探し、まず訪れたのは「焼ジビエ罠 手止メ 神田鍛冶町店」。シカ、イノシシ、キジのほか、仕入れによってクマの肉も、炭火で焼いて提供してくれる店だ。
まず頂戴したのが、エゾシカ、ニホンジカ、イノシシの合い挽きつくね串。口の中でホロホロとほどけ、旨みが広がってゆく。続いてエゾシカのモモ。セロリ塩をかけていただくと、臭みはなく、家畜肉とまったく遜色ない食べやすさだ。返す刀で、ニホンジカのモモを山ワサビで。奈良では市議会議員のへずまりゅう氏が守るニホンジカだが、こちらも“立派な”害獣だ。エゾシカよりも少しばかり野性味があるが、山ワサビの刺激が上手にそれを消し去ってくれた。美味なり。
さらにはイノシシのロースに手を伸ばし、辛みそを付けてパクリ。より野性味あふれる味わいだろうと勝手に思っていたが、意外にも臭みがない。おいしくいただいておいてナンだが、拍子抜けである。
そして、本日は待望のヒグマも入荷していた。
そのモモ肉は、白い脂身が見当たらないきれいな赤身。“食らう”にふさわしい生き物の肉。いざ口に入れると、決して硬くはないものの“食いちぎる”感覚を思い起こさせる歯ごたえに気分が高揚する。さらに、食いちぎった箇所からジワジワとにじみ出てくる旨み─。
「俺は今、肉を食らっているのだ。人間をも襲うというヒグマを食ってやっているのだ!」
そう叫びたくなるほど、肉の味わいとともに、得も言われぬ充足感を味わったものである。

