甲子園の大歓声を飲み込むように、ソフトバンクが止まらない。
10月29日の日本シリーズ第4戦、ここまで接戦を制してきたホークスが、この夜も地力を見せた。試合は3対2でソフトバンクが勝利。これで第2戦から3連勝とし、日本一に王手をかけた。
試合が動いたのは2回表。打ち出したら止まらないソフトバンクの4番・山川穂高が、阪神の先発・髙橋遥人のストレートを完璧に捉えて、センターバックスクリーンへ叩き込んで3試合連続ホームラン。「打ったのは真っ直ぐ。少し先でしたが、いい見え方でしっかり自分のスウィングができました。大事な先制点になって良かったです」と振り返った。
連日の大爆発に、「新しい感覚ですね。今でも打ってるフォルムとか、フォームみたいなものって(普段と変わらず)似ているとは思うんですけど、なんか今の感覚っていうのは、練習から非常にいいです」と自信をのぞかせる。「シーズンが“すっとこどっこい”だったんで。でもその中で、最後こうやって打てるのが一時でも来たっていうのは嬉しく思います」と。
3試合連続弾は日本シリーズタイ記録。城島健司やランディ・バース、金本知憲などと並んだが「バースさん! なかなかイカついメンバーいますね」と笑いながら語るその表情には、チームを引っ張る4番の余裕があった。
さらに5回表、ソフトバンクの攻撃。1死一、二塁のチャンスで2番・周東佑京の当たりが髙橋の左腕を直撃する内野安打に。満塁となったところで、打球が当たった影響もあり髙橋は無念の緊急降板となった。
場内がざわつく中、代わって登板したのは畠世周。打席には前日決勝打を放った柳町達が入ってその初球、カットボールをレフトへ運ぶ犠牲フライとなった。貴重な追加点に「何とか1点をっていう思いで打席に入りました。しっかり初球から良いスウィングができたので、それは良かったなと思います」と静かに振り返った。ミスを取り返した昨日に続き、この日もクリーンナップの一角として勝負どころで結果を残した。
そして6回、ソフトバンク監督・小久保裕紀の采配が冴え渡る。1死から牧原大成が左腕・桐敷拓馬のグラブを弾く強襲安打で出塁。海野隆司のバントで1死二塁とすると、ここまで59球、被安打3と好投していた先発・大津亮介に代打・近藤健介を告げた。
打席に入った背番号3は、2球目のインロー、145キロのツーシームをライト前へ。鮮やかなタイムリーヒットで3点目をもぎ取った。「チャンスになったら行くって言われていたのでしっかり準備して、良い結果になってよかったです。守りができない中で、代打での一振りで絶対に仕事をしようと思っていました」と胸を張った。
小久保監督は「(大津は)続投させようか迷っていたんですけど、(牧原大が)二塁に行ったらもう1点を取りにいこうと思っていた。打った近藤がすごい」と代打策の成功を称えた。決して派手ではないが、勝負どころを逃さない采配が光った。
先発の大津は5回を投げ被安打3、タイガース打線をしっかりと封じた。「ちょっと真っ直ぐを引っかく時もあったんですけど、全体的に非常にまとまっていたと思います」と冷静に自己分析しつつ、「思ってる以上に寒かったんですけど、なんとか工夫しながら自分のピッチングができたかなと思います」と続けた。第3戦の先発モイネロ同様、ホットクリームを塗って寒さ対策をしていたという。気温が下がる甲子園の夜でも、若手右腕は落ち着いてマウンドを降りた。
8回裏、タイガースも意地を見せる。1番・近本光司のヒットを皮切りに四球でチャンスを広げ、佐藤輝明のタイムリーで1点を返す。続く大山悠輔のセカンドゴロの間に2点目を奪って1点差に迫ると、甲子園は大熱狂となったが、反撃はここまで。最後は前川右京がセカンドゴロに倒れ、一歩届かなかった。
結果的に6回、代打近藤のタイムリーが勝敗を分けた。
ソフトバンクは初戦を落とした後、怒涛の3連勝。第3戦、第4戦と敵地甲子園で勝ち切ったことが、何より大きい。山川の一発、柳町の勝負強さ、近藤の職人芸、そして投手陣の冷静さ。それぞれの役割が噛み合い、選手層の厚さを感じさせた。
第5戦はソフトバンクが中4日で有原航平、阪神は大竹耕太郎が先発予定となっている。ホークスがこのまま甲子園で決めるのか。それともタイガースが意地を見せるのか。秋の夜風が一段と冷たくなる中、王手をかけたホークスが見せる次の一手に、視線が集まる。
取材・文●野口航志
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