声の代わりに生まれた「拍手のアンコール」
ライブは終盤。最後の曲はアニメのエンディング曲「キミとルララ」。
ニコニコと踊る子どもたち。大人は拍手とライトで精いっぱいの応援。
歌が終わり、ライブは終了。子どもたちに手を振りながらはけていくプリキュアたち。
ここで通常ならアンコール(プリキュアライブの場合は「プリキュア!」という掛け声が定番となっています)の大合唱が起こる場面ですが、そこでも大人の声はありません。
「プリキュア!」の声の代わりに大人たちは拍手でリズムを刻み始めました。
言葉の代わりに、拍手の波がホール全体を包み込みます。
誰かが合図したわけでもないのに、まばらだった拍手は自然にテンポがそろい、音が一つになっていく。
声は出せなくても、アンコールの思いは演者に伝わる。
声がなくても心はつながる。そんな奇跡のような一体感が生まれていました。
松岡さんの「アンコールありがとうございます~!」の声とともに、キャストたちが再びステージに登場。
子どもたちの歓声がはじけ、会場は再び熱気に包まれます。
大人たちの拍手は、そんな子どもたちの笑顔を後押ししていたようにも見えました。
大人ファンは問題を起こす?
自分は正直、ライブ中に“おイタ”をして連れ出される大人がひとりふたりはいるのじゃないか、と心配していました。しかしそれは全くの杞憂(きゆう)に終わりました(むしろ大人主体の「夜の部」の方がレギュレーション違反している人が見られました)。
今回のプリキュアライブ昼の部では、数千人の大人たちが、子どもたちのライブ体験を邪魔しない様に、ただ拍手とライトの光での応援を貫いたのです。
もちろん「ただルールを守っただけ」といえばその通りなのですが、それでもあの光景はとても美しいものでした。
大人のプリキュアファンはしばしばSNSで賛否を呼びます。実際に大きな問題となったこともありました。けれど、今回の「昼の公演」ではそんな人は一人としていませんでした。
数千人の大人たちが、ルールを守り、子どもたちを「観客の主役」にしたのです。
それは単なるルールとマナー遵守といったレベルの話ではなく、プリキュアという作品が描いてきた理念「やさしさ」や「思いやり」を体現する行動だったと思うのです。
「ファミリーを優先し、大人は後ろから拍手とライトで見守る」
そんな理想的な構図が、このキミプリライブ昼の公演では見事な形になっていました。
歌と踊りと、子どもの歓声、大人の拍手とライトで構成された、子ども向けアニメーションのライブの一つの完成形なのでは、と思わせるほどでした。

