ホンダはMotoGPで長く苦戦してきたが、最近は脱出の兆しを見せ始めている。
新型コロナウイルスの流行、そしてマルク・マルケスの負傷と離脱――その間、HRCはふらつきながらも活動を続け、ドゥカティが4年連続でMotoGPタイトルを独占するのをただ見守るしかなかった。
しかし、2025年シーズンのホンダは体制を立て直し、現代的なモータースポーツ環境に適応するべく方向転換を図った。そしてその上昇傾向の一環として、来季に向けてはMoto2で最も注目を集めるライダーのひとり、ディオゴ・モレイラを獲得し、LCRホンダからMotoGPへ昇格させる。
第20戦マレーシアGPのパドックで、ホンダのチームマネージャーであるアルベルト・プーチがAutosport/Motorsport.comのインタビューに応じ、復活の手応え、モレイラ獲得の理由、そしてすでに動き出している2027年以降のライダー市場について語った。
Q:モレイラにどんな資質を見出したのか?
アルベルト・プーチ(以下AP):
彼のことはMoto3時代から注目していた。今年になって契約のチャンスが巡ってきた。ディオゴは非常に速く、Moto2タイトルを狙える実力を持つ新進気鋭のライダーであり、ホンダの理念にも非常に合致している。
彼と、彼のエージェント、コーチを交えたミーティングの中で、彼もホンダのプロジェクトに興味を示したと思う。彼は若く、有望で、テクニカルなセンスに優れている。そうした理由から、我々は彼に3年契約という長期のオファーを提示した。
Q:2027~2028年のライダー市場が動き始めている。HRCはすでにターゲットを定めているのか?
AP: 2027年の市場はやや特殊なものになるだろう。新しいレギュレーション、そして新しいタイヤサプライヤーが導入されるからだ。そのため、どのマシンが最も優れたパフォーマンスを発揮するかをライダーが判断するのは非常に難しく、ほとんど不可能だろう。
2026年にはいくつかのテストでその”新型”マシンを少し見ることはできるが、本格的に分かるのは2027年2~3月のシーズン開幕時になるはずだ。確かにマーケットは早く動き出すだろうし、不確実性が伴うことも間違いない。
Q:現在、どのライダーも「どのバイクが最良か」を理解しているが、そうした変化によって状況が変わる可能性がある。その“不確実性”は、ホンダに有利に働くと思うか?
AP: そうなる可能性はある。しかし、他メーカーも決して素人ではない。ドゥカティも、アプリリアも、KTMも、ヤマハも、それぞれ素晴らしいマシンを造るだろう。ホンダというブランド名の影響力は確かにあるかもしれないが、限られた時間で競争力あるマシンを作れるかどうかは断言できない。
トップライダーたちは自分が求めるものを正確に理解している。マルク・マルケスがグレシーニに移籍した際も、彼は自分の望む環境を熟知していた。確かに、最も歴史あるメーカーはホンダとヤマハだが、それが必ずしも最高のライダー獲得を保証するわけではない。
Q:最近では「アプリリアがドゥカティに挑めるマシンを持っている」との声もある。あなたはどう見る?
AP: 私の見解では、依然としてドゥカティがベンチマークとなっている。技術力、そして開発手法の両面で非常に先進的だからね。アプリリアがどうかと言えば、確かに彼らは特定のサーキットでは勝てるし、マシンの特性が(サーキットに)合えば無敵だ。それは過去にも証明されている。だがシーズン全体を通して見ると、ドゥカティとの比較にはならない。
Q:グリッド上の多くのライダーが「ホンダは今年、最も大きく進歩した」と語っている。いわば“眠れる獅子”が目覚めたのか?
AP: そう表現するかは別として、まず我々がどこから来たかを思い出すべきだ。我々は何年も後方に沈んでいた。昨シーズンからすでに流れを変える意思を示していたが、実際に多くの改革を行なっている。新しい人材を投入し、日本の基盤を強化しつつ、欧州にも拠点を拡大している。
ホンダは非常に強大な企業であり、改善は「義務」だった。これは起こるべくして起きた変化だ。とはいえ、満足はしていない。だが、勝利を取り戻すための基盤は整いつつある。
Q:日本の経営陣が再びMotoGPプロジェクトに全面的な支援を決断したのは、何がきっかけだったのか?
AP: 忘れてはならないのは、ホンダのDNAは「レース」にあるということだ。創業者・本田宗一郎氏は競技から出発し、それが彼の情熱だった。我々は困難な時期を経験したが、再び動き出し、日本でも変化が起きつつある。
Q: そういった多くの変革が進む中で、ホンダは開発や問題修正に対する「反応速度」を上げることができたのか?
AP: 私の経験から言えば、「日本人に日本人であることをやめさせる」ことは期待するべきではないと思っている。逆に、ヨーロッパ人に日本的な働き方を求めても無理なのと同じことだ。ホンダはホンダのやり方で物事を進めるだろう。だが、それは現代的なやり方に適応してのことだ。1980年代のような進め方では、もはや通用しない。
Q:ミサノでのエンジンアップデートは大きな進歩を示した。さらなる改善の余地はあるか?
AP: まだ少し余地はある。
Q:KTMから招聘されたエンジン技術者、クルト・トリブの影響はあったのか?
AP: エンジンというものは数ヵ月前から開発が始まる。ミサノで導入した仕様もかなり前に開発を開始したものだ。クルトはいま、2027年に向けた850ccエンジンの開発に全力を注いでいる。

