レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーであるヘルムート・マルコ博士は、今季のF1イタリアGPが終わった段階で、マックス・フェルスタッペンが大逆転でチャンピオンに輝く可能性が高まったと信じていたと語った。
フェルスタッペンとレッドブルは今季厳しい戦いを強いられ、一時はポイントリーダーに100ポイント以上引き離されてしまうという局面もあった。しかし夏休み明けからはフェルスタッペンが好結果を積み重ね、一気にその差を削った。
先日行なわれたF1メキシコシティGPでは、それまでのような勢いを見せられなかったフェルスタッペン。特に予選ではうまくいかず、フェルスタッペンは弱気な発言を繰り返した。
「マシンがうまく機能していないんだ。明日(決勝レース)も機能しないだろう」
フェルスタッペンは予選後にそう語っていたが、マルコ博士は「前向きに考えろ」と発言。そして24時間後の決勝レースでは、フェルスタッペンは他とは異なる戦略がハマったこともあり、3位表彰台を獲得した。マルコ博士は予選後の段階で、決勝でフェルスタッペンが表彰台を手にすると予測していた。
「チームの誰も、私との賭けに乗らなかったんだ。だから面白くないね。誰もそんなことを信じてくれなかった」
そうマルコ博士は語った。
「今朝もマックスに言ったんだ。前向きに考えろってね。そして何が可能なのかを目の当たりにしたんだ」
マルコ博士はこの結果について、車高の選択が大きく影響を及ぼしたと語った。
「基本的には予選では車高が低すぎた。でも燃料満タンだと、コーナーをそれほど速く走れない。その結果ダウンフォースも異なるから、あの接触(コーナリング中にフロアが路面を打ってしまう現象)はもう起こらなかったんだ」
この車高の問題に加え、フェルスタッペン自身が違いを引き出した部分もあると、マルコ博士は語った。
「チームの中でポジティブなのは私だけだった。でもマックスはレースに出ると話は別だ。彼は全てのことを忘れて、ただただ走りに集中するんだ」
マルコ博士にとって不安だったのは、スタートの瞬間であった。メキシコシティGPの舞台であるエルマノス・ロドリゲス・サーキットは、グリッドからターン1までの距離が長く、激しいポジション争いになるのが常。今年もその例に漏れず、上位4台がターン1に横並びで突入した。そしてフェルスタッペンにはコース上でのスペースがなく、ランオフエリアに逃れることを強いられた。
「これがメキシコだ。マックスにはスペースがなかったし、(コースオフしたことでの)アドバンテージも得られなかった。スチュワードの判断も正しかったと思う」
そしてフェルスタッペンがライバルとは異なる戦略を採ったことも大きかったと、マルコ博士は語った。多くのマシンはソフトタイヤを履いてスタートする中、フェルスタッペンはミディアムタイヤでスタートし、その後ソフトタイヤに履き替えるという1ストップ戦略だった。
レース終盤のデグラデーション(性能劣化)が心配されたが、フェルスタッペンは誰よりも速いペースで走り、あともう少しで2位も手にできるというところまで追い上げて見せた。
「ペースが落ちるのではないかと心配していた。しかし彼はほぼ毎周、1分21秒2を記録した。常に0.5秒以内の差だったんだ。これがフェルスタッペン、まさにマックスだよ」
メキシコシティGPの結果、ポイントリーダーはオスカー・ピアストリからランド・ノリスに変わった。そしてそのノリスとフェルスタッペンは36ポイント。まだ自力でタイトルを獲得できる差ではないが、マクラーレン勢のふたりがポイントを奪い合うようになれば、一気に状況が転じることにもなりかねない。
大逆転でのチャンピオン獲得も可能だと確信しはじめたのではないか? そう尋ねられたマルコ博士は笑みを浮かべ、こう語り始めた。
「モンツァの後、私はそれを確信し始めたんだよ」
そうマルコ博士は語った。
「全てのポイントが重要だ。ご承知の通り、全てを完璧にこなさなければいけない。残り4戦で獲得できるポイントは116だ。しかし、完璧でなければいけない。セットアップにおける、小さなミスも許されないんだ。つまり、今回のようなミスだね」
フェルスタッペンが悲観的な発言をしていたように、今回のメキシコシティGPが、最も苦しむレースになると考えていたのか? そう尋ねられたマルコ博士は、次のように説明した。
「いや、そうは考えていない。どんなサーキットでも、我々のマシンとドライバーは、上位を走るのに十分な実力を持っていると信じている。それに、第2スティントではノリスとのラップタイムもほぼ互角だった」
次戦サンパウロGPに向けては、雨が降ることになればフェルスタッペンの優位性はさらに高まるだろうとマルコ博士は考えている。
「そうなることを期待している。そうすれば、また”フェルスタッペン・ショー”が見られるかもしれないね」

