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<スター・ウォーズ:ビジョンズ>最新作の水野貴信監督、世界に誇る日本アニメの魅力「“大人も楽しめるもの”として作っているところ」

<スター・ウォーズ:ビジョンズ>最新作の水野貴信監督、世界に誇る日本アニメの魅力「“大人も楽しめるもの”として作っているところ」

水野貴信にインタビューを実施
水野貴信にインタビューを実施 / (C)2025 Lucasfilm Ltd.

「スター・ウォーズ:ビジョンズ」Volume3が、10月29日にディズニープラスで全9作品一挙配信された。「スター・ウォーズ:ビジョンズ」は、アニメーション業界を牽引し、世界的評価を得る9つのアニメーションスタジオが、クリエーター独自の視点と発想で新たな「スター・ウォーズ」を描く、ルーカスフィルム熱望の一大プロジェクト。「スター・ウォーズ」ファン、アニメファンから人気を博しており、今回が第3弾となる。

ラインアップは、神風動画がCGスタジオのANIMAと共同制作した『The Duel: Payback』や、Production I.G制作の『The Ninth Jedi: Child of Hope』、キネマシトラス制作の『彷徨う者たち』と『ユコの宝物』、TRIGGERが制作した『The Smuggler』、WIT STUDIO制作の『The Bounty Hunters』、プロジェクトスタジオQ制作の『四枚羽の詩』、ポリゴン・ピクチュアズ制作の『極楽鳥の花』、デイヴィッドプロダクション制作の『BLACK』の9作品だ。

今回、Volume1の『The Duel』の続編として制作された『The Duel: Payback』を手掛けた神風動画の水野貴信監督にインタビューを行い、前作の反響についてや制作のこだわり、「スター・ウォーズ」シリーズとの出合い、日本アニメの魅力などを語ってもらった。

■“ビジョンズ”は「希望のある企画」

――「スター・ウォーズ:ビジョンズ」というチャレンジングな企画も第3弾になりますが、企画についてどのような印象をお持ちですか?

シリーズが何十年と続いている中で、また別の可能性をいろいろ探っている印象を受けました。そして、そこから新しい未来が見えてくるような、そういう希望のある企画だと感じました。

――その中で日本のアニメーションがどのような役割を担っていると思われますか?

もともとジョージ・ルーカス監督が日本の黒澤明監督の時代劇に影響を受けて「スター・ウォーズ」を作られていて、その中で僕たち日本人がバトンを頂いたので、より日本文化を発信していく場にできたらと思っています。

――今作は、どのようなところを意識されて制作されたのですか?

前作の「The Duel」(2021年)はせっかく頂いたバトンだったので、コンセプトを前面に押し出していこうと思いまして、黒澤明監督の影響を色濃くした絵作りや演出を目指しまして、1作目の役割としては個人的にとても良かったなと思っております。

それを踏まえ、今作では私が子どもの頃に感じた「スター・ウォーズ/帝国の逆襲(エピソード5)」(1980年)、「スター・ウォーズ/ジェダイの帰還(エピソード6)」(1983年)での“世界が広がっていく感じ”を目指して、2作品のオマージュを取り入れながら、「スター・ウォーズ」らしさを盛り込みました。

――映像表現や演出のこだわりは?

映像表現としては、賭場になっている「AK-BK」が崩れていくシーンがあるのですが、巨大感を表現するにはやはり質感が重要になってきますので、“CGで描いたきれいなものに汚しを入れた感じで崩れていく”というのではなく、“背景美術と同じに描いた絵が立体的に崩れていく”というところにこだわりました。

また、グランド・マスターがとても動きの速いキャラクターなのですが、そのスピード表現において、最近よくあるデジタル仕様ではなく、アナログの技法を取り入れました。私が少年時代に見ていた野球アニメで使われていた魔球の表現をヒントに、「この手法を作品の世界に持ってくるとどうなるか」というのを模索しながらこだわって作りました。

■海外から大反響で「本当にやって良かったなと」

――前作は国内外で好評を博し、それを受けての続編ですが、プレッシャーなどはなかったのでしょうか?

前作の反響としましては、配信が始まった頃にたくさんお声を頂いたり、海外のファンも多く集まる「スター・ウォーズ セレブレーション ジャパン2025」や「コミコン」に呼んでいただいたときにファンの方と触れ合って、「海外にこれほど多くファンの方がいるんだな」と気付いて、本当にやって良かったなと思いました。

でも、今作の制作に関してはプレッシャーはあるものの、また作れる喜びの方が大きかったですね。

――「スター・ウォーズ」の“正史”との距離感については、どのようにお考えでしょうか?

「スター・ウォーズ:ビジョンズ」に関しては、やはり“日本人が作る”というところを特に意識していますので、「『スター・ウォーズ』の世界を日本人の側から作ると、こういうのができますよ」というのを海外の方々に紹介するというスタンスですね。
「スター・ウォーズ セレブレーション ジャパン 2025」に登壇したときの水野貴信監督
「スター・ウォーズ セレブレーション ジャパン 2025」に登壇したときの水野貴信監督 / (C)2025 Lucasfilm Ltd. 2025 Getty Images


――クリエーターから見て、日本のアニメーションの魅力は、どんなところにあるとお考えですか?

小学生の頃に、映画「幻魔大戦」(1983年)というアニメを見たんです。今思えば子どもが見て楽しむような(子ども向けの)ものじゃないと思うのですが、それでも当時は「すごく良かった!」って同級生たちと盛り上がったんです。

つまり子どもにとって少々分からないところがあったとしても、“良さ”は伝わるし、楽しめるんですよね。そういう土壌があって、制作側がアニメを“子どものもの”として作るのではなく、“大人も楽しめるもの”として作っているところじゃないでしょうか。子ども向けにちょっと表現を軟らかくすることなく、迎合しないところかなと。

――子ども扱いしないというか、遠慮なく攻めているイメージですかね。

そうですね。海外のアニメとは方向が違うというか。昔のディズニーのアニメーションを見ると作画がすごいなと思って、今でも昔のミッキーマウスの作画とかを見て研究しています。

1枚1枚しっかり描いている感じというか、日本はリミテッドアニメーションで枚数をどれだけ少なくして動きをしっかり見せるかという方向に進んでいったんですけど、当時のディズニーは全部描いていたと言いますか、今見るとあらためてすごいなと思います。手描きのアナログ感の良さ、ちょっとしたムラが気持ちいいんですよ。

■声優陣も豪華キャストが集結

――声の出演では、ローニン役をてらそままさきさんが続投し、グランド・マスター役をSWではアナキン・スカイウォーカーを演じられている浪川大輔さんが担当されるなど、豪華なキャストが話題ですが、キャストはどのように決められたのでしょうか?

私は今までMVや音楽関係の映像など、せりふのある作品をあまり作ってこなかったこともあって声優さんに疎いので、音響監督から頂いた候補の方のサンプル音源を聴いて、デザイン画を見ながら合うかどうかで決めさせていただきました。

ローニンに関しては、サンプルを聞かせていただいたときに、てらそまさんの優しさが少し出ていたような気がして、「ローニンはちょっと安心感のあるキャラクターにしたい」という思いがありまして、てらそまさんにお願いしました。

今回のグランド・マスターに関しては、英国紳士のようなスマートに立っているイメージだったので、そういう印象を大事にしたのと、次第に復讐(ふくしゅう)に狂っていくというキャラクターでもありますので、その狂っていくときの声がいいなというところで浪川さんを選ばせていただきました。

――あらためて「スター・ウォーズ」との出合いについてお聞かせください。

僕が幼稚園の頃に「スター・ウォーズ/新たなる希望(エピソード4)」(1977年)が公開されまして、幼稚園に行っている間に、父と兄が2人で見に行ってしまって、「何で連れて行ってくれなかったんだ」とものすごく泣いたんです。それで、2作目の「帝国の逆襲」(1980年)でやっと見に行けたというのが出合いですね。

当時は、社会現象になっていて町の話題も「スター・ウォーズ」であふれていましたし、自然に耳に入ってくるくらいでしたから、見ても字幕で分からないところが多々あったと思いますけど、見られなかったことがよっぽど悔しかったんでしょうね(笑)。

――満を持して初めて見た「スター・ウォーズ」の印象はいかがでしたか?

宇宙を舞台にした戦いやメカよりも、いろんな宇宙人が登場するのを“怖いもの見たさ”で見ていたような気がします。リアリティーのあるいろんな人種が宇宙にはいっぱいいるという“世界の広がり”を感じたことが強く印象に残っています。

だから、その部分は「The Duel」のシリーズでもどんどん入れていきたいなと思っているところでもあります。

――ということは、さらなる続編も期待してもよろしいでしょうか?

どうですかね(笑)。でも、作らせていただけるのであれば、ずっと続けたいと思っています。そのための構想の種もありますから!

――最後に今作をご覧になる読者の皆さんにメッセージをお願いします。

前作は“時代劇の渋さ”みたいなものを前面に押し出しましたが、今作はもっとユーモアを加えて楽しめるような作品にしたつもりですので、その辺も楽しんでいただければと思います!

◆取材・文=原田健

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