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豪華な誕生日パーティーで“権力”を誇示したヤマル、政治的なリーダーとしての姿勢を強調したヴィニシウス――現代フットボールを象徴する2つの事例【現地発コラム】

豪華な誕生日パーティーで“権力”を誇示したヤマル、政治的なリーダーとしての姿勢を強調したヴィニシウス――現代フットボールを象徴する2つの事例【現地発コラム】


 フットボールが変われば、選手も変わる。新世代の選手は有名であることが特権とされるこの時代を生き、グローバル化の波に乗って社会的、商業的、文化的地位を向上させたフットボール界に身を置いている。

 時代の流れの影響を受けるのは当然のことだ。こうしてかつては控えめでミステリアスな存在だったフットボール選手は、スーパーヒーロー、インフルエンサー、時代の寵児へと変貌した。この夏、身近な例が2つあった。

 ラミネ・ヤマルの誕生日パーティーは、新しいフットボール、新しいフットボール選手の純粋な形での表現だった。ヤマルは輝きに包まれ、道化師や派手な女性たちに囲まれ、贅沢と権力を誇示した。貧困から這い上がった若者の富は、その承認欲求の高さすら愛おしさを感じさせた。

 誰もがSNSで注目を集めようとバカげたことをするこの時代に、世界的なスター選手であるヤマルがそのトレンドに乗ったからと言って非難される筋合いはない。誕生日パーティーは彼にとって自らの地位をアピールする機会だった。

 現在の選手たちは、個人ブランドの管理を徹底している。ヘアスタイル、タトゥー、ビデオクリップがフットボール選手をポップアイコンに変えた。彼らは成功を演出する能力に長けている。神業レベルの働き、プレーをするだけではない。それと並行して自分の物語を投影する。
 
 もちろんその行動様式の変化がもたらすリスクはある。それはファンとの繋がりを失うことだ。誰もがプライベートジェットや高級腕時計、限定のパーティーに共感するわけではない。その緊張感の中では、フットボール選手は「私たちの仲間」でなくなるリスクを負っている。おそらく新世代には当てはまらないのだろう。

 2つ目の身近な例はヴィニシウス・ジュニオールだ。彼も派手好きだが、別の野望を抱えている。昨今の有名選手は、繰り返しになるが、偽善的な神格化の対象になっている。この点については注意して見守る必要がある。過剰な成功体験は、権力を増長させるのと同様に、精神衛生上有害だからだ。

 ヴィニシウスはさらに、殉教者のような立ち位置にいる。バロンドールを奪われ、人種差別に取り憑かれ、審判から徹底マークを受けていると感じている。見方によっては三度、英雄になっているようなものだ。被害者は社会からかつてないほど称賛されるのが昨今の傾向であり、それは五つ星のスターであっても同様だ。

 ヴィニシウスのような大物を甘えさせる環境が定着したフットボール界では、なおさらその傾向は強まる。彼らに過保護な扱いをしてきたクラブと一部のメディアもその責任の一端を担っている。もちろんだからと言ってそれが世界的なスター選手としての地位を損なことにはならない。
 
 ヴィニシウスの話を続けると、ここにきて顕著になっているのがもう一つの顔だ、彼はこの夏、様々なメディアで、政治的、文化的、反人種主義のリーダーとしての姿勢を強調した。フットボールの強い発信力を利用して、多様な社会のモデルケースとして、自身を表現し、様々なスタジアムで経験した人種差別被害を通じて、寛容の精神を掲げる旗手的存在となっている。

 私たちは、新しいフットボールが生み出した2人の選手による2つの象徴的なケースに直面している。ヤマルとヴィニシウスは、現代社会はエゴや野心を隠す必要がなくなったことを教えている。自己表現は自分らしく生きるためのツールなのだ。

 彼らはフットボール界を代表するアイドルであると同時に、パブリックな顔を持ち、象徴的なリーダーであり、起業家であり、時折活動家でもある...。我々世代よりもはるかに多くのアドバイスを受けており、グローバル世界における自らの立ち位置を明確に自覚している。
 
 フットボールがこうなるなんて誰が想像しただろう? 一昔前のフットボール選手に何と言えばいいのだろう? もしこのコラムを読んで批判のトーンを感じたなら、それは私の説明不足のせいだ。あるいは、私が確かに抱えている不快感が漏れ伝わってしまったからかもしれない。

 私は急速に忘れ去られつつある時代に属するフットボール人だ。だからと言って過去の規範で新世代の選手を評価することはできない。若者たちは間違ってない。彼らもまた時代の産物なのだ。そして、時代の産物であることは、良いことでも悪いことでもない。それは避けられないことなのだ。

文●ホルヘ・バルダーノ
翻訳●下村正幸

【著者プロフィール】
ホルヘ・バルダーノ/1955年10月4日、アルゼンチンのロス・パレハス生まれ。現役時代はストライカーとして活躍し、73年にニューウェルズでプロデビューを飾ると、75年にアラベスへ移籍。79~84年までプレーしたサラゴサでの活躍が認められ、84年にはレアル・マドリーへ入団。87年に現役を引退するまでプレーし、ラ・リーガ制覇とUEFAカップ優勝を2度ずつ成し遂げた。75年にデビューを飾ったアルゼンチン代表では、2度のW杯(82年と86年)に出場し、86年のメキシコ大会では優勝に貢献。現役引退後は、テネリフェ、マドリー、バレンシアの監督を歴任。その後はマドリーのSDや副会長を務めた。現在は、『エル・パイス』紙でコラムを執筆しているほか、解説者としても人気を博している。

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙に掲載されたバルダーノ氏のコラムを翻訳配信しています。

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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