日本シリーズはソフトバンクの4勝1敗で幕を閉じた。敗れた阪神タイガースにはいきなり、オフの懸案事項が吹き出している。才木浩人のポスティングシステムによるメジャーリーグ挑戦や、リードオフマン・近本光司とのFA残留交渉など、各メディアは「待ってました!」と言わんばかりに一気にオフの課題を書き立ててきた。
「才木の挑戦は正式発表を待つだけでしょう。代理人事務所と契約したということは、球団が認めたのも同じこと。近本の残留交渉は『5年25億円』からのスタートとなりそうです」(在阪記者)
しかし解決というか、決着まで時間がかかりそうなのが、今季で4年契約が満了する梅野隆太郎の去就だ。国内FA権を取得した4年前は行使せずに残留。今季は僅か52試合の出場に止まり、日本シリーズでも代打での途中出場が1回、マスクを被ったのは1-10のワンサイドとなった2試合目、最終回の1イニングだけだ。
梅野の出場機会が激減したのは坂本誠志郎の活躍によるものだが、ソフトバンクの日本一も去就に影響していた。
「このシリーズで流れを作り、ソフトバンク打線に勢いをつけたのは山川穂高です。第2戦から3戦連続でホームランを記録し、シリーズMVPに選ばれました」(前出・在阪記者)
なぜ山川の3戦連続アーチが、梅野の去就に影響してくるのか。藤川球児監督は自慢の投手陣が打ち込まれ、王手をかけられて臨んだ第5戦も、スタメンマスクを坂本に託したからだ。
ソフトバンク打線に勢いをつけてしまった以上、「流れ」を変える必要がある。捕手を梅野に代える策も考えられたが、阪神首脳陣にその選択肢はなかったようだ。
ソフトバンク関係者が言う。
「通常、スタメン出場する選手は、試合前の打撃練習で先に打ちます。第5戦の試合前、佐藤輝明らに混じって坂本も打撃練習をやっていたので、梅野のスタメンはないと分かりました」
トラの難敵として立ちはだかった山川の第5戦は「三振、遊ゴロ、中飛、敬遠四球、左前打」。4打数1安打で、延長10回にシングルヒットを許しただけだった。3戦連続本塁打の翌日の試合なので、「坂本は山川を抑えてくれた」の評価になるそうだ。
梅野は球団生え抜きでは、初の捕手1000試合出場を果たした功労者である。このまま控えに甘んじる考えはない。梅野との話し合いが最も時間がかかりそうである。
(飯山満/スポーツライター)

